このアカデミーが提供する対面およびオンラインのセミナーは、教育者たちが「避けられない流れをただ受け入れるのではなく、どう乗りこなすか」を学ぶためのものだ、と全米教員連盟会長のランディ・ワインガーテンは言った。
「もっと紙と鉛筆が必要です」
第一印象では、このアカデミーはテック大手の結託による資金提供を受けてつくられた「合意の形成(manufactured consent)」を目的としたウェビナーのようにも感じられる。だが実際にワインガーテンと話すと、彼女がAI推進派であるとか、すべての教室にChromebookを導入すべきだと考えている人物だとは思えなかった。
「人はAIに頼れば頼るほど、自分で考えなくなります」と彼女は言った。「もっと紙と鉛筆が必要です。自分の手を動かす学習が必要で、画面の使用は減らすべきです」
さらに、連盟の教員たちが自分の学区のAI推進政策に反対したり、Geminiが生徒の作業空間に入り込んだりするのを望まない場合はどうするか、と尋ねると彼女はこう答えた。
「教員たちを守ります。いまはすべてがあまりにも急速に進んでいるので、わたしの目標のひとつは、異議を唱える自由を教師たちに与えることです」
連盟はグーグルとの提携を見送ったが、その理由はグーグルが「生徒および教職員の安全とプライバシー保護について、連盟側が求める保証を示さなかった」からだ、とワインガーテンは言った(これに対し、シンハは反論した。Geminiは連邦規制に準拠しており、生徒のデータが利益目的で利用されることはなく、生徒とのチャットを人間が閲覧することもAIモデルの学習に使うこともない、と彼は述べた。さらにグーグルの広報担当者も、「社内で確認した限り、全米教員連盟がAIアカデミー設立前に当社へプライバシー懸念を伝えた記録はありません」とメールで説明した)。
教師や保護者が主導するほかの団体も、学校でのAI利用を制限するための異議申し立ての枠組みをつくろうとしている。
ブルックリンの公立学校に子どもを通わせているクレイグ・ギャレットは、当時幼稚園に通っていた自分の子どもが、一年間ずっと授業でAmiraボットに向かって音読していたことを知り、懸念を抱く保護者たちのWhatsAppグループを25年6月に立ち上げた。
このグループは現在、District 14 Families for Human Learning(人間の学びを守る第14区家族会)と名付けられている(活動家らは、Amiraが授業で児童の声を録音することがニューヨーク州教育法の「個人を特定可能な情報の無許可開示」を禁じる規定に違反するのではないかと問題提起している)。
ギャレットはCoalition for an A.I. Moratorium(AI一時停止連合)の一員でもある。この連合は教育関係者、保護者、学生によるニューヨーク全市規模の団体であり、市長のゾーラン・マムダニと同市教育局長のカマー・サミュエルズに対し、小中学校におけるAI利用の2年間停止を求めている。
同じく連合のメンバーであるナヴィード・ハサンは、マンハッタンの公立学校に子どもを通わせる保護者であり、市の教育諮問委員会の委員も務め、仕事ではコンピューター科学者として20年以上AI分野で働いてきた。
「民間企業が知能を公共サービスのようなものに変えようとしていることには、哲学的な問題を感じています」とハサンは言った。
「知能について心配はいりませんよ、とAI企業は言っています。知能はわれわれがサブスクとして提供するので、みなさんは自由にほかのことをしていればいいんです、と。わたしたちは市長の考えに影響を与えなければなりません。彼の下で働くあらゆる人たちにも影響を与え、市長の命令でこの流れを止めさせなければなりません」
AI企業と自治体の独走を止める
AI一時停止連合は、ニューヨーク市の暫定AIガイドライン策定にあたって教師や保護者の意見がほぼ反映されていないようだと主張する。また、プライバシーの問題やAI利用が、生徒の脳の発達や精神衛生に与えうる悪影響についてもほとんど対処していないという。