7つのポイントで読み解くNVIDIAジェンスン・フアンの最新AI戦略 | WIRED.jp

エージェント型AIは、いわば自ら考えて動くデジタルの従業員だ。問いかけに答えるだけの受け身なロボットだった従来のAIと違い、エージェント型AIはユーザーの意図さえつかめば、自分で考え、計画を立て、さまざまなソフトウェアやツールを能動的に操作して、複雑なタスクをやり遂げるまで動き続ける。

これは、コンピューターの使い方そのものも変えていく。これまでユーザーは、プログラムを起動し、クリックし、コマンドを打ち込む必要があった。だがこれからは、AIに意図を伝えるだけで、AIが自動でコードを生成したり、ツールを使ったりして、任された仕事をこなしてくれる。

その結果、エージェント型AIの後押しを受けて、ソフトウェア開発のスピードはますます加速している。フアンはこんな例を挙げた。ソフトウェア開発プラットフォームのGitHubでは、コードのコミット数が2023年に約3億回、翌年には4億回、そして25年には5億回に達した。さらに26年は、まだ数カ月が過ぎたばかりだというのに、コミット数はすでに3倍近くにまで跳ね上がっている。

フアンは、エージェント型AIの後押しによって、ソフトウェア開発のスピードがますます速まっていると指摘した。

フアンは、エージェント型AIの後押しによって、ソフトウェア開発のスピードがますます速まっていると指摘した。

Photograph: Lam Yik Fei/Bloomberg via Getty Images

だが、それによってエンジニアが職を失うわけではない。フアンは、「AIは雇用を減らす」という言い分など、まったくのたわごとにすぎないと強調した。AIはむしろ、エンジニアの生み出す価値を何倍にも膨らませるのだと。

世界中のソフトウェアエンジニアの年間給与総額はおよそ3兆ドル(約480兆円)で、これまではおよそ100兆ドル(約1京6,000兆円)の経済効果を生んできた。だがAIの支えがあれば、同じ給与で3倍の生産性を生み出せる。エンジニア1人あたりの投資対効果がこれほど大きくなれば、企業は人員を削るどころか、より多くのエンジニアを雇って生産規模を拡げようとするはずだ。

ソフトウェア企業にとっては、自社のソフトをエージェント型AIが使いやすいかたちに整えることさえできれば、この黄金時代の波に乗っていける。そのためにNVIDIAは、1,000を超えるCUDA-Xライブラリーをエージェント型AIに開放し、AIがより効率的に、自律的にそれらを呼び出せるようにすることで、科学や工学の分野でのブレイクスルーを後押しする、とフアンは語った。

2)次世代の統合システムプラットフォーム「Vera Rubin」が、NVIDIAを「AIインフラ企業」へと変える

とはいえ、エージェント型AIの動作を支えるハードウェアの構成は、きわめて複雑だ。思考や推論、ツールの呼び出しはGPUとCPU上で実行され、セキュリティの枠組みはCPUとデータプロセッサーが担い、全体の制御はCPUが取り仕切る。

こうした極端に分散し、種類もばらばらな演算上の難題を解くために、NVIDIAが投入したのが次世代プラットフォームのVera Rubinだ。フアンが強調するのは、Vera Rubinが単一のチップでも、単なるGPUでもなく、ひとつの完結したシステムプラットフォームだという点である。革命的なストレージシステムを備えるだけでなく、セキュリティプロセッサーも内蔵し、データが保存時も、転送中も、演算中も、つねに暗号化されて守られるようにしている。

「これは、NVIDIAの歴史のなかでもっとも壮大な、領域を越えた挑戦です」とフアンは語る。NVIDIA全社の40,000人のエンジニアと、台湾のエコシステムを支えるパートナーたちが、この奇跡の誕生にともに加わったのだ、と。