ロンドンを拠点とするグーグルの人工知能(AI)研究開発部門Google DeepMindの従業員による労働組合結成を巡る会社側との交渉が、開始早々に難航していることが『WIRED』の取材でわかった。最初の協議を終えた組合側の代表は、時間を無駄にしただけだったと振り返った。
今年5月、DeepMindの従業員は、Communication Workers Union(CWU)とUnite the Unionを共同の労働組合代表として承認するよう、グーグルに書面で要請した。その後、会社側はこの要請を退けたものの、第三者機関の仲裁のもとで交渉に応じることには同意した。
最初の交渉は7月1日(英国時間)に開かれ、組合幹部、組合結成を推進するDeepMindの従業員、第三者の仲裁担当者、DeepMindの人事担当者が出席した。しかし、組合結成を求める側は、DeepMindの経営陣が出席しなかったことに強い不満を抱いた。
「労働組合との承認交渉の初回協議に経営幹部が出席しないのは、会社側が誠実に交渉する意思をもっていないことを示す典型的な兆候です。単なる時間稼ぎにすぎません」と、協議に出席したCWUの組合役員ジョン・チャドフィールドは語った。「交渉は早くも行き詰まっています」
これに対し、DeepMindは交渉が停滞しているとの見方を否定している。
「手続きの最初の段階では、組合側が誰を代表しようとしているのかを明確にする必要があります。そのために必要な次のステップについて、双方は合意しています」と、DeepMindの広報担当者アル・バーニーは話す。「今回の初回協議には、適切な担当者が出席しました」
協議では、組合結成を支持する同僚を代表して、DeepMindの従業員が事前に用意した書簡を読み上げた。『WIRED』はその内容を確認している。
「わたしたちが抱く懸念について従業員と建設的な対話を行なう代わりに、Google DeepMindは従業員を人事部門に任せて対処すべき『問題』として扱っています」
組合側とDeepMindの主張は平行線
協議に詳しい複数の関係者によると、この声明を読み上げていた従業員は、DeepMindの人事担当者から2度にわたり発言を遮られたという。
書簡ではさらに、グーグルがDeepMindの従業員の率直な対話を封じ、異論を抑え込もうとしてきたと主張している。その具体例として、社内チャットのチャンネルを閉鎖したり再編したりしたほか、労働組合結成を巡る全社向けの社内通知に対し、従業員が返信できないようにしたことを挙げている。また、こうした制限をかいくぐろうとした従業員は、人事担当者から「注意」を受けたとも記されている。
「狙いは威圧することでした」と、書簡の作成に携わったDeepMindの従業員は話す。この人物はメディアへの発言権限がないため、匿名を条件に取材に応じた。「こうしたやり方は、労働組合つぶしの常套手段です」
一方、広報担当のバーニーは、「今後も、この手続きに建設的に関与するとともに、従業員との率直な対話を続けていきます」と語る。「これ以外のテーマについても、従業員が自らの考えを話し合えるさまざまな機会や手段を引き続き提供しています」
広がるAI軍事利用への反発
『WIRED』が以前報じたように、DeepMindで労働組合結成の動きは、2025年2月に親会社アルファベットが、人工知能(AI)を兵器開発や監視などの目的に利用しないとする誓約を自社のAI倫理指針から削除したことをきっかけに始まった。
「こうした原則は、わたしがDeepMindに入社した大きな理由のひとつでした」と、メディアへの発言権限がないため、匿名を条件に取材に応じた別のDeepMindの従業員は話す。「いまでは、そのほとんどが取り払われてしまいました」