AIを活用したゲーム制作コミュニティ「Aippy」はこのほど、初めての資金調達を実施し、歌未資本(Glowill Capital)から数千万ドル(数十億~百億円規模)を調達した。調達後の評価額は2億5000万ドル(約400億円)となった。資金は主に人材確保および欧米市場開拓に使われる。
Aippyは2025年、香港の大手IT企業「赤子城科技(Newborn Town)」が立ち上げを支援し、同社から独立した「NADA AI」が運営している。AippyのEvan(葉椿建)CEOはNewborn Townの共同創業者兼CTOで、海外事業やゲーム分野などで10年以上のキャリアを積んできた。現在スタッフは約30人、コアメンバーは清華大学や米ノースウェスタン大学、ドイツのミュンヘン大学など国内外の著名大学出身だ。
「Aippy」の画面
AippyはAIを活用したゲーム制作・交流の場を提供し、デジタルネイティブの若い世代に向けた「誰もがゲーム開発できる」UGC(ユーザー生成コンテンツ)プラットフォームを目指している。ユーザーが自然言語でアイデアを説明するだけで、AIが数分でゲームを生成できる。プラットフォーム上では他のユーザーもゲームをプレイできるうえ、既存のゲームをアレンジし、自分のアイデアを加えて二次創作したものを新たに公開することも可能だ。
Aippyは当初、AIツールとしての方向性を模索したが、この分野は大手企業との競争が厳しいだけでなく、ユーザーの定着とビジネス化も難しいと判断。AIによってコンテンツ創作のハードルが下がるなか、一般ユーザーに広く開放されたAIゲーム制作コミュニティがあれば、大きな市場になると考えた。そこで単なるツールではなく、若者になじみ深いゲームを切り口に、消費者向けAIゲーム制作コミュニティへと戦略を転換し、わずか数カ月で製品の検証を終えた。
これまでにAippyは世界で累計300万回以上ダウンロードされ、月間アクティブユーザー(MAU)は200万人近くに達している。プラットフォーム内のゲーム作品数は累計200万本を超え、1日当たりの新規ゲーム数は年初の10倍に増えた。また、ユーザーの1日平均利用時間は年初から25%増加し、デイリーアクティブユーザー(DAU)のうち「いいね」などの反応を示した割合(エンゲージメント率)は50%に迫る。

「Aippy」でユーザーが制作したゲーム
一般ユーザーも参加しやすいよう、Aippyには多くの工夫が凝らされている。プラットフォームであらかじめアイデアのテンプレートを用意し、AIがさらにアイデアを膨らませる提案をしてくれる。また、音声入力やAIによる素材生成、ワンタップでのバグ修正、プレビュー調整など、ゲーム制作に必要なツールが揃っているのでプラットフォーム内ですべての作業が完結する。市場戦略の面では、やみくもに世界拡大を狙うのではなく、欧米など先進国地域にターゲットを絞り、コミュニティの安定を図っている。
その理由として以下の3点が挙げられる。第一に、欧米ユーザーはAIが生み出す新しいコンテンツに抵抗がなく、クリエイター文化も成熟しているため、Aippyのビジネスモデルと相性がいいこと。第二に、欧米ユーザーはコンテンツへの課金習慣が定着しているので、ビジネスモデルを検証しやすいこと。第三に、現在主流の大規模言語モデル(LLM)は英語のプロンプトに対する理解力と生成のクオリティが最も高いことである。
こうした戦略はデータでも実証されている。Aippyは現在、自然流入の割合が30%を超えている。これは、資金を投じてユーザーを獲得する方法に頼らなくても、自発的にプロダクトを拡散する流れができていることを証明している。
「Aippy」の対話型制作エージェント
資金調達後は二つの点に注力する。ひとつは引き続きコンテンツのレコメンド機能と配信メカニズムを最適化し、ユーザー体験の向上を図ること。もうひとつはクリエイターの育成・激励システムを改善し、より多くのクリエイターとともに、健全で質の高いコミュニティを作ることだ。
Aippyの運営チームが考えるAIの価値は、プロのゲーム開発者に取って代わることではなく、一般ユーザーの創造性を開花させることにある。デジタルカメラの普及でプロカメラマンが不要になったわけではなく、写真がより身近になったように、AIもゲーム会社に取って代わる存在ではないという。むしろ、まったく新しいエンタメ市場を切り開き、誰もがアイデアをゲームという形にできるようにすることで、創作本来の楽しさを取り戻すことを目指している。
*1ドル=約161円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)