自前AIチップの開発でサムスンと協議を始めたアンソロピックの思惑、TSMCの一極集中に生じた新たな揺らぎ 【生成AI事件簿】OpenAIに続く自前半導体戦略、推論コスト低下と日本の半導体勢に広がる数年後の商機(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)

【生成AI事件簿】OpenAIに続く自前半導体戦略、推論コスト低下と日本の半導体勢に広がる数年後の商機

小林 啓倫

小林 啓倫
経営コンサルタント

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2026.7.4(土)

経営 IT・デジタル

主要AIベンダーが自社独自のAIチップを持つ時代に?(筆者がChatGPTで生成)

 2026年7月2日、米メディアThe Informationが注目すべきニュースを報じた。大手AIベンダーの一角を占めるAnthropicが、自社設計のAIチップ開発に向けた初期段階の作業を始め、その製造委託先の候補として韓国Samsung Electronicsと協議しているというものだ。

 計画はまだ白紙に近く、実現しない可能性すらある。それでもこの一報に、AI業界と半導体業界の双方が色めき立った。焦点は「Anthropicが自前チップを作るか」だけではない。交渉相手が台湾TSMCではなく、Samsungだという点にもある。この組み合わせが何を意味するのか、考えてみたい。

 現時点で報じられている内容を整理すると、次のようになる。

 Anthropicは自社AIチップの初期検討に着手し、Samsungの「2ナノメートル世代」半導体チップの製造プロセスと、同社の先端パッケージング(複数のチップを高密度に組み合わせて1つの部品に仕上げる後工程技術)の利用を視野に同社と協議した。

 一方で、詳細な設計作業や製造準備はまだ始まっておらず、計画自体が見送られる可能性も残る。

 米テクノロジー系メディアのTechCrunchによれば、このチップをAIの学習(AIモデルの開発)と推論(学習済みAIモデルを実際に動かす処理)のどちらに使うのか、サーバーにどう組み込むのか、そしてどの程度の性能を狙うのかすら、現時点では決まっていないという。

 それでも、この話が「観測気球」で終わらないと見られる理由が2つ存在している。

 第1に人材だ。The Informationは、OpenAIのカスタムチップ開発チームに初期から参加していたクライブ・チャンをAnthropicが迎え入れたと報じている。構想段階の企業が、競合の実務経験者をわざわざ引き抜く必要はない。

 第2は過去の報道だ。Reutersはすでに2026年4月9日の時点で、Anthropicがチップ不足への対応策として自社チップの製造を検討していると報じていた。今回の一報は、その検討が「相手のいる交渉」へ一歩進んだことを示している。

 Anthropic自身はThe Informationに対し、Amazon Web Services(AWS)のTrainiumチップ、GoogleのTPU、そしてNvidiaのGPUが、今後も当社のコンピュート戦略の拡大の中心であり続けると説明し、それ以上の言及を避けた。

 同記事はさらに、AnthropicがMicrosoft製チップや、推論向けチップを開発する英新興企業Fractileのチップの利用も協議中だと伝えている。自前チップはあくまで、複数ベンダーを組み合わせる調達戦略の「追加の1枚」という位置付けだ。

 この動きには、明確な先行者がいる。OpenAIだ。