Googleは、対話型AI検索機能「Ask Gemini」をAndroidおよびiOS版の「Google ドライブ」モバイルアプリに拡張した。これにより、有料のGoogle Workspaceサブスクリプション契約者は、スマートフォンやタブレットから直接、保存されたドキュメントについて自然言語で質問できるようになる。この機能は2026年6月26日から順次ロールアウトが開始されており、4月からウェブ版で提供されていた機能がモバイル環境でも利用可能になった。
■モバイル版「Ask Gemini」:その具体的な機能と特徴
モバイルアプリにおける実装は、機能的にウェブ版と同等である。ドライブの検索バーの右側にあるアイコンをタップすると、全画面の専用対話インターフェースが開く。ユーザーはアプリを離れることなく、最初の質問に続いて質問を重ねたり、範囲を特定のフォルダに絞り込んだり、新しいトピックに切り替えたりといった、複数ターンの会話を行うことができる。
この体験を特徴づける4つの機能がある。1つ目は「専用の会話(Dedicated conversations)」で、セッションの対象を特定のファイルやフォルダ群に限定できるため、AIはドライブ全体をスキャンするのではなく、関連するコンテンツに絞って回答を生成する。2つ目は「永続的な会話履歴(Persistent conversation history)」で、アプリを閉じてもセッションが保存されるため、電話対応などで一時的に離脱しても、中断したところから正確に再開できる。3つ目は「アプリをまたぐ連携(Cross-app reach)」で、ユーザーが有効にすれば、Gmail、Google チャット、Google カレンダー、さらには公開ウェブへと検索対象を拡張できる。4つ目は「DLP(データ損失防止)およびIRM(情報権利管理)の準拠レイヤー」であり、Geminiはユーザーが明示的な閲覧権限を持つコンテンツのみを表示し、ファイルを複製またはコピーすることはない。
■検索バーに表示される軽量な相棒「AI Overviews」
Googleは「Ask Gemini」と並行して、ドライブのモバイル検索に「AI Overviews(AIによる概要)」を導入している。この別の軽量な機能は、通常のドライブ検索結果の上部にGeminiが生成した要約を表示するもので、ユーザーは複数の関連文書を開く前に、それらに何が書かれているかの要点(ギスト)を把握できる。さらに詳しく調べたい場合は、AI Overviewsを1回タップするだけで、フル機能の「Ask Gemini」インターフェースに移行できる。
AI Overviewsは英語で提供が開始され、今後数週間かけてさらに28言語に拡大される予定である。
■技術的な仕組みと制約
ドライブの「Ask Gemini」は、Googleが「Workspace Intelligence」と呼ぶ推論レイヤーを使用している。これは、ユーザーがアクセス権を持つファイル、メール、カレンダーの予定から関連するコンテンツを抽出し、それらをランク付けしてグラウンディング(根拠付け)した上で、Geminiを用いて統合された回答を生成する仕組みである。重要なのは、このシステムが外部のインデックスにドキュメントをコピーするのではなく、Googleの安全なインフラ内でクエリ実行時にこの推論を行う点である。ユーザーが質問すると、Workspace Intelligenceはファイル全体をモデルに渡すのではなく、関連する一節を特定し、その内容に基づいて回答を生成する。
モデルが一度に処理できる実質的な限界は「コンテキストウィンドウ」に依存する。Google AI ProおよびUltraのサブスクリプション契約者の場合、これは100万トークン(テキスト約1,500ページ分に相当)となっている。非常に大量のドキュメント群を保有するユーザーはこの上限に達する可能性があり、システムは要約やスライディングウィンドウ方式を用いてオーバーフローに対処する。ただし、この処理によって、多くの巨大なドキュメントに分散した情報を結びつける必要がある回答の精度が低下する場合がある。この上限は、製品発表では明示的に言及されていない技術的な制約であり、非常に多くの長いPDFにまたがる統合的な質問を行うユーザーにとって最も重要となる。
既存のDLP(データ損失防止)ポリシーは、この機能にもそのまま適用される。ダウンロード、印刷、コピーを禁止するDLPルールが適用されているファイルは、Geminiによる検索対象からもブロックされる。また、クライアント側暗号化(CSE)を使用している組織では、さらに厳格な境界が適用され、CSEで保護されたコンテンツはGeminiから完全に解読不能となる。
■有効化する前の注意点:共有権限の考慮事項
「Ask Gemini」は、Google ドライブの既存の共有権限の設定をそのまま引き継ぐ。AI機能が有効化される前に、例えば「組織内の全員がアクセス可能」といった形で広く共有されていたファイルは、そのファイル名で検索したことがないユーザーであっても、関連する自然言語の質問を投げかけることでAIを介して検索可能になってしまう。逆に、特定のチームのみに共有されているファイルは、そのチーム以外のユーザーからは見えないままである。
多くのユーザーにとって、これは自分がすでに閲覧可能な範囲がAIに反映されるだけであることを意味する。しかし、共有設定が緩い、あるいは古い設定のまま放置されている組織の管理者にとっては、スマート機能を広く有効化する前に、既存の権限を監査する価値がある。対話型インターフェースは、従来のキーワード検索とは異なり、受動的なドキュメントの露出を能動的なものに変えてしまうためである。管理コンソールのドライブインベントリレポートやGemini監査ログを使用することで、AIが誰のためにどのコンテンツにアクセスしたかを可視化できる。
■対象ユーザーと提供スケジュール
モバイル版ドライブにおける「Ask Gemini」と「AI Overviews」は、以下の種類のアカウントで利用可能である。
・有料Workspace:Business Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plus
・個人向けAIサブスクリプション:Google AI Pro、Google AI Ultra
・Education向けアドオン:Google AI Pro for Education
なお、無料の個人用Googleアカウントは、今回のロールアウトの対象には含まれていない。
いずれの機能を使用する場合も、エンドユーザー側で「Workspaceのスマート機能」を有効にする必要がある。この設定はデフォルトでオフになっており、ユーザーが設定から有効化する必要がある。管理者側では、組織レベルで「Gemini for Workspace in Drive」がすでに有効化されている場合、Ask Geminiはデフォルトでアクティブになる。
Android版のロールアウトは2026年7月8日頃までに完了する見込みである。iOS版のロールアウトは2026年7月29日頃までに完了する見込みとなっている。いずれも段階的なロールアウト(extended rollouts)であるため、対象となるすべてのアカウントで機能が完全に表示されるまでに15日以上かかる場合がある。
■ウェブからポケットへ
「Ask Gemini」は2026年3月にベータ版として開始され、4月にウェブ版で一般提供(GA)が開始された。当時Googleは、この機能の背後にある野望について、ドライブを単なる「保管庫」から「蓄積された業務を理解する場所」へと変革することだと説明していた。手動の検索では決して見つからないような、隠れたトレンドの発見、長年にわたる顧客向け提案書の統合、複数ドキュメントにまたがる全体像の構築などを実現するためである。
モバイルへの拡張により、その価値がデスクの外へと持ち出される。移動中、会議の合間、クライアント先など、一日の大半をスマートフォンで過ごすプロフェッショナルにとって、ウェブ版とモバイルアプリの間の実用的なギャップは、機能の価値を損なう要因となっていた。対象プランの契約者において、そのギャップは解消された。
Googleはこれとは別に、AndroidおよびiOS向けにGeminiを搭載したGmailの委任アカウントサポートを順次展開している。また最近では、ドライブのコンテンツを根拠として、1つのプロンプトからGoogle スライドで複数スライドのプレゼンテーション全体を生成できる機能も発表した。これらは、モバイル版Workspace全体でGeminiの統合を深化させるための、6月の一連の取り組みの一環である。
■注目ポイントQ&A ●モバイル版Google ドライブの通常の検索バーと「Ask Gemini」の違いは何ですか?
通常のドライブ検索は、ファイル名や一部の文書コンテンツに対してキーワードの一致を行います。一方、「Ask Gemini」は対話型のインターフェースであり、複数のファイル(および有効にしている場合はGmail、チャット、カレンダー、ウェブ)から情報を抽出して統合した回答を生成します。ユーザーは文書を1つも開く必要がありません。また、軽量な機能である「AI Overviews」は、通常の検索結果の上部にGeminiが生成した短い要約を表示し、両者の中間的な役割を果たします。
●「Ask Gemini」を使用することで、通常はアクセス権のないファイルまで閲覧できるようになりますか?
いいえ、そのようなことはありません。「Ask Gemini」はGoogle ドライブの既存のアクセス権限を厳密に遵守します。ユーザーが閲覧権限を持たないファイルは、AIもそのユーザー向けに取得することはできません。また、データ損失防止(DLP)ポリシーやクライアント側暗号化(CSE)で保護されたファイルも、AIによる検索対象からブロックされます。ただし、閲覧権限はあるものの、ユーザー自身が検索しようと思わなかったような古い文書などが対話を通じて表面化しやすくなるため、管理者は機能を有効化する前に共有設定を確認することが推奨されます。
●「Ask Gemini」が実際に読み取れるドライブの容量に、実質的な制限はありますか?
Google AI ProおよびUltraのサブスクリプション契約者は、1回につき約1,500ページのテキストに相当する100万トークンのコンテキストウィンドウを利用できます。数百もの長いPDFなど、非常に膨大なドキュメントを保有している場合、AIは制限内に収めるためにランキングや要約処理を行います。そのため、多くの大きなファイルに分散した情報を結びつける必要がある回答では、網羅性や精度が低下する可能性があります。この機能は、ドライブ全体を無制限に検索するよりも、特定の適切な規模のドキュメント群を対象に質問を投げることで最も効果的に機能します。
●無料の個人用Googleアカウントでも「Ask Gemini」は利用できますか?
現時点では利用できません。今回のロールアウトでは、有料のGoogle Workspaceプラン(Business Standard以上)および個人向けサブスクリプションである「Google AI Pro」「Google AI Ultra」の契約者に限定されています。無料の個人用Googleアカウントは今回の対象に含まれていません。
元記事: Google Drive Brings AI Document Search to Mobile for Workspace Subscribers