
パリの音楽博物館内の修復研究所で、美しい音色で有名な名器「ストラディバリウス」をフランスの化学者が調べている。新たな研究により、表板に使われた木材の産地が判明した。(PATRICK KOVARIK/AFP, GETTY IMAGES)
「ストラディバリウス」と呼ばれるバイオリンは、卓越した職人技と音色で有名だ。17~18世紀にイタリアの弦楽器製作者アントニオ・ストラディバリが作った一連のバイオリンは、その名声ゆえに高額で取引される(「ストラディバリウス」とは、ストラディバリが製作したバイオリンなどの楽器を指す総称)。ストラディバリが黄金期(1700~1725年頃)に作った「バロン・ヌープ」は、2025年に2300万ドル(約37億円)で落札された。
素晴らしい音色を生み出す要素の一つが、表板だ。弦をこすると、表板が振動して音が増幅される。表板に使う木材の密度、堅さ、均一性がすべて音質に影響を与え、音の豊かさ、輝き、表現の幅を生み出す。
しかし、ストラディバリが表板に用いた響きの良い木材の産地は、長らく謎に包まれていた。(参考記事:「『四季』のビバルディ、20世紀半ばまで200年も忘れ去られていた」)
ある有名な伝説によると、一人のバイオリン職人が、イタリアの山奥の森で小屋を建てている男に取引を持ちかけた。職人は楽器作りにうってつけの木を見つけたという。その木は他で使うことが決まっていたが、交渉の末、小屋を建てていた男はその木材を高額で職人に売り渡した。それが音楽史の一部となったというのだ。しかし、このやり取りが行われたとされる場所は定かではなく、スロベニアやスイスの森でも、そっくりな話が伝わっている。
このほど、ストラディバリが製作した数百丁のバイオリンを対象に、使われている木材の年輪が新たに分析された。その結果、イタリアの伝説には一定の真実が含まれている可能性が示された。
「これは包括的な研究です。特に年代測定と木材の産地に関しては、疑う余地がありません」と、本研究には参加していない、米アリゾナ大学の年輪年代学者バレリー・トロエ氏は話す。「これで、ストラディバリを巡る論争の一章に決着がついたと思います」(参考記事:「「バベルの塔」は実在したのか、最有力候補の建物とは」)
次ページ:明らかになった産地の変遷、そして黄金期はほぼ例外なく……(有料記事)
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