「Ray-Ban Meta Blayzer Optics」
5月21日から日本での販売がスタートしたMetaのAIスマートグラス「Ray-Ban Meta」を、およそ1カ月に渡って使ってみた。AI機能には進化の余地を強く感じたものの、“ながら聴き”用の開放型スピーカー、手ぶらで撮影できるカメラ、メガネとしての質感など、ハードウェアの完成度は極めて高く感じられた。
左から「Ray-Ban Meta」と「Oakley Meta」
Ray-Ban Metaは、レイバンやオークリーといったアイウェアブランドを展開するエシロールルックスオティカとMetaが共同開発したAIスマートグラス。日本では「Ray-Ban Meta(Gen 2)」と「Oakley Meta」が販売されている。
Ray-Ban Meta(Gen 2)は、サングラスモデルのWayfarer、Skyler、Headliner、度付きレンズに対応するオプティカルモデルのRay-Ban Meta Blayzer Optics、Ray-Ban Meta Scriber Opticsの全5モデルが用意されており、フレームカラーも複数から選択できる。
価格はRay-Ban Meta(Gen 2)が73,700円~89,100円、Oakley Metaが77,220円~96,580円。
「Ray-Ban Meta Blayzer Optics」
今回はオプティカルモデルのRay-Ban Meta Blayzer Optics、フレーム色はマットブラックのモデルを借りた。なお、筆者は普段メガネやコンタクトは使っておらず、度なしのクリアレンズのまま使用している。この組み合わせのモデルの直販価格は82,500円。
本体左側にカメラを搭載
ハードウェアとしては、レンズ横のフレーム部に1,200万画素、視野角100度の超広角カメラを搭載。取得解像度は3,024×4,032ドットで、最大3K/30fpsでの動画撮影、高解像度の静止画撮影ができる。カメラは単眼で向かって右側のレンズ横に搭載される。左側には撮影していることを示すLEDインジケーターを装備。内蔵ストレージは32GB。
右側面がタッチエリア。上部には撮影ボタンも備える
テンプル部分には開放型スピーカーを搭載し、マイクも備えているため、周囲の音を確認しながら音楽や通話を楽しめる。右側テンプルの側面がタッチ操作に対応し、タップで再生/停止、スワイプでボリュームコントロールができる。
右側テンプルの先端には撮影ボタンがあり、単押しで写真撮影、長押しで動画撮影ができる。
Metaの生成AI「Meta AI」が利用でき、「ヘイ、メタ」と呼びかけて、ユーザーが見ているものについて質問したり、英語で書かれた書籍を見ながら内容を要約してもらうこともできる。写真や動画の撮影も「ヘイ、メタ。写真を撮って」といった音声操作で行なうことができる。
なお、他社製品にはレンズ部に文字などが表示できるディスプレイ機能を備えたものもあるが、このRay-Ban Meta(Gen 2)とOakley Metaにディスプレイ機能はないため、Meta AIからの返答は音声で聴くか、スマートフォンのアプリでチェックする形となる。Meta自身も米国でディスプレイ付きの「Meta Ray-Ban Display」を販売しているが、米国外での販売時期などは明かされていない。
充電器を兼ねる専用ケース
バッテリー駆動時間は本体単体で、通常使用時が最大8時間。連続オーディオ再生が最大6時間。完全ワイヤレスイヤフォンのように、付属ケースが充電器を兼ねており、ケース込みで最大48時間使用できる。充電ケースに入れて20分で50%まで急速充電でき、約75分でフル充電可能。
アプリに届いたメッセージの読み上げなども利用できるが、現時点でリンクできるアプリは「WhatsApp」「メッセンジャー」「Facebook」のみで、日本で主流のLINEやiPhoneの「iMessage」の読み上げには対応していない。
外観をチェック
Metaのロゴはヒンジ内側に
世界的なアイウェアブランドであるレイバンとコラボしていることもあり、本体のマットな質感やデザイン性が高く、ヒンジの動きもスムーズで、レイバンらしい高級感がある。スマートグラスではないレイバンのサングラスと同じく、レンズ部分にもしっかりとロゴがあしらわれているのもポイントだ。
ケース内側はスエード調
充電器を兼ねる付属ケースはレザー調の仕上げで、こちらも質感は高め。内張りもスエード調で手触りが良く、Ray-Ban Metaを傷つけることなく収納できる。
初期設定にはスマートフォン用アプリ「Meta AI」を使用する。アプリ右上のメガネアイコンをタップすることでセットアップでき、手順もスムーズ。途中には操作方法のチュートリアルも表示される。
セットアップ自体はスムーズだったが、筆者の環境ではMeta AIを日本語対応にする言語アップデートのダウンロードが30分経っても進まない事象が発生。本体の初期化、アプリのアンインストール&再インストール、組み合わせているiPhoneの再起動など、いろいろと試してみたがなかなか解決しなかった。
この言語アップデートが完了していなくても、カメラやオーディオ機能は利用できるので、2~3時間ほど放置したあとに再トライしてみたところ、今度は30秒もかからずにダウンロードが完了した。Meta側のサーバー混雑なども影響したかもしれない。
ちなみにSNSなどを調べたところ、この言語パックのダウンロードが止まる問題は“Ray-Ban Metaあるある”のトラブルな様子。ChatGPTに聞いてみるとさまざまな解決策が提示されたが、筆者のように「数時間、放っておく」のもひとつの解決策かもしれない。
ノーズパッドは交換可能。ブリッジ部分には充電用の接点がある
また今回試したRay-Ban Meta Blayzer Opticsは、ノーズパッドを交換できるほか、テンプル先端を曲げてフィット感の調整も可能。ヒンジも90度以上開くオーバーエクステンションヒンジになっているなど、より自分にあったフィット感で装着できる。

製品には合計3サイズのノーズパッドが付属。ピックのような器具を使って取り外す
ノーズパッドのサイズは3種類で、付属のギターピックのような器具を使って交換できる。ただ、どのノーズパッドもクッションなどはついていないため、メガネを外すと鼻にくっきりと跡が残るほか、長時間だと少し痛く感じることもあった。痛みが気になる人はサードパーティ製の貼るノーズパッドなどをつけたほうが良いかも知れない。
音を聴いてみた
「Ray-Ban Meta Blayzer Optics」を装着したところ
まずは開放型スピーカーの実力を確かめてみた。筆者はふだん、同じメガネ型でスピーカー内蔵のオーディオグラス「Huawei Eyewear」初代モデルを愛用しているが、それと比べると音の解像感や低域の迫力はRay-Ban Meta Blayzer Opticsのほうが1~2段は高く、より音楽の持ち味を堪能できるサウンドになっている。
特にボーカルや人の話し声などがくっきりと聴きやすい印象で、歌モノやラジオ・ポッドキャストといった音声コンテンツとの相性は抜群。ただボーカルの押し出しが強い反面、女性ボーカルの高音域などでは時おりキリキリとしたピーキーさも感じられた。
開放型という構造上、低域はどうしても弱まりがちで、Ray-Ban Meta Blayzer Opticsもズシンと体の芯に響くようなパワフルさはないが、ながら聴きしつつ音楽を楽しむには十分な量感といった印象だった。
テンプル部分にスピーカーを装備
またRay-Ban Metaには周囲の騒音レベルに合わせて音量を自動で上げ下げしてくれる機能もついているため、静かな路地から交通量の多い大通りに出たときでも、別途操作することなく自動で音量が上がってくれるので、コンテンツに集中できる。
ケースはUSB-C経由で充電できる
充電についてもRay-Ban Metaのほうが使いやすい。先に紹介したとおり、Ray-Ban Metaは付属のケースが充電器を兼ねており、ケースにしまえばメガネ本体を充電できる。ケース自体の充電もUSB-Cケーブルで行なえる。
下が「Ray-Ban Meta Blayzer Optics」。上が「Huawei Eyewear」初代モデル
これに対しHuawei Eyewearは、専用のマグネット式充電アダプタをテンプル先端に装着して充電する形。現行の第2世代では磁力がアップしているのだが、筆者が使っている第1世代は磁力があまり強くないので、なにかの拍子にアダプタが外れてしまい、充電できていなかったということが、たまに起こる。またこのアダプタを持ち歩かないと出先で充電できないのもウィークポイントと言える。
ただ、Ray-Ban Meta Blayzer Opticsはカメラを内蔵していることもあり、メガネとしてはやや重め。今回借りたスタンダードフレームで重さは49.2gで、普段使っているHuawei Eyewearはウェリントン型フルリムで約36.8gと10g以上の違いがある。慣れてくれば問題ないが、使い始めは少し重さをストレスに感じることがあった。
カメラは気軽さが魅力
「Ray-Ban Meta Blayzer Optics」の撮影例
カメラは、思い立ったときに右側のボタンを押す、または音声で指示するだけで撮影できるため、気軽に撮影できる。両手を空けた状態で撮影できるので、ペットや家族とコミュニケーションを取りつつ、自然な雰囲気で写真/動画が撮影できるのも大きな魅力だ。
AV WatchのYouTubeチャンネルで公開しているこの動画も、Ray-Ban Metaで撮影したもの
また動画の場合、FPSゲームのような一人称視点の映像が撮れるため、スマホとは一味違った画角で撮影可能。アクションカメラでも撮影できる画角だが、別途マウントを用意したりする必要もないので、気軽に撮影できる。
散歩中に見つけた紫陽花もハンズフリーで撮影できる
散歩中に見つけた紫陽花や、愛犬のふとした瞬間も思いついた瞬間に記録できるのはとても便利だった。撮影できるの縦3Kの動画なので、YouTube ShortやTikTok、Instagramのリールなど縦動画との相性も良い。
ただ、画角が100度とかなり広角なので、想像以上に広く撮影できてしまう点には慣れが必要。また髪型によってはレンズ部分に髪がかかってしまうこともあるので、撮影前にレンズ部分に髪がかかっていないかをチェックしたほうが良いかも知れない。
なお、アプリにはカメラが帽子のつばや髪の毛などで部分的に隠れている場合、画角を自動でトリミングするオプションも用意されている。
一方でやはり気になるのはプライバシーの問題。Ray-Ban Metaのようなカメラ付きメガネを掛けている状態は、いつでも撮影できるようにカメラをむき出しでぶら下げている状態と変わらない感覚で、電車内や職場など通常であればカメラをむき出しのまま立ち入らないような場所では、たとえ撮影する意思・意図がなくても、妙な緊張感やストレスを感じることが多かった。
撮影中には右側正面のLEDインジケーターが点灯する
Ray-Ban Metaの場合、撮影中は本体左側正面にあるLEDインジケーターが白く光ることで撮影していることを知らせる仕組みだが、そもそも「白く光っている=撮影中」「光っていない=撮影していない」ということが広く知られているわけではないことも、緊張を感じさせる要因かもしれない。
スマートグラスという製品ジャンルの裾野が広がっていけば、こうしたLEDインジケーターに対する認知も広がっていくはずで、それに伴って緊張感もほぐれていくと良いのだが。
「録画開始して」と頼んだところ「6学開始して」と認識された
ある場所からオフィスのある神保町までのルートを尋ねたところ。ルートはApple Mapで表示された
また、Meta AIとのコミュニケーションについては、「ヘイ、メタ。録画開始して」と言ったら「6月が始まりましたね」と回答されたり、「ここからオフィスのある神保町まで行きたいんだけどルートを教えて」と尋ねると「渋谷の神南」までのルートが提示されたりと、筆者の発音・声量の問題もあるかも知れないが、試した限りではまだ成長途中といった印象。
日本でのユーザーが増えれば、学習データも増え、より賢くなると思われるので、このあたりは今後の進化に期待したい。
少し意地悪めな質問で、出先で見つけたナチュラルローソンの看板を見ながら「これは何?」と尋ねたときの回答。ローソンは正解だが……レイバンらしいデザインが光る。カメラ・スピーカーも性能良し
約1カ月、Ray-Ban Meta Blayzer Opticsを使い続けて、レイバンらしいフレームデザインの高さ、ながら聴きに最適なスピーカーのサウンド、両手を自由に撮影できるカメラの便利さなど、全体的な完成度の高さを実感できた。
テンプル部分には「レイバン」ロゴもあしらわれる
特にメガネは顔周りを彩るアイテムでファッション性も求められるだけに、高級感のあるデザインは競合製品にはない大きな魅力に感じられた。
今回試した限り、AI機能はまだ発展途上だが、新しい大規模言語モデル(LLM)の「Muse Spark」による機能向上も予定されており、今後さらに便利に使えるようになるはず。
ChatGPTやGoogle GeminiといったMeta AI以外の生成AIと連携できないこと、通知を読み上げてくれるアプリが少ないこと、そしてもっとも安いモデルでも73,700円という価格の高さはネックだが、「普段使いやすく、日常を手軽に記録できるカメラ、ながら聴き用スピーカー」としては、十分なパフォーマンスをもつデバイスと言える。