AIと共に成長する台湾エコシステムの明と暗 ── COMPUTEX 2026から見えた次の一歩 | WIRED.jp

毎年6月上旬頃に台北市で開催されるCOMPUTEX(コンピュテックス)は、この数年で大きく変化している。

1981年のIBM PC発売をきっかけにスタートし、ハードウェアを中心とするコンピューターの展示会(Computer+Exhibition)として続いてきた業界ビジネスの集まりは、空前といえるAIブームの到来で急拡大し、来場者は3年前から2.5倍以上に増え、MWCやハノーファメッセといった欧州の著名なビジネスイベントに並ぶまでになった。

世界152の国と地域から集まる1,500社、6,000ブースは南港の展示ホールだけでは受け入れきれず、台北101に近い台北世界貿易センターが7年ぶりに加わった。その会場すべてがテーマに掲げる「AI Together(AIと共に)」そのままに、AI一色といえる状況になっていた。

COMPUTEX 2026の会場である台北南港展覧館 (TaiNEX 1 amp 2)は歩くのが難しいほどの人で埋め尽くされた。

COMPUTEX 2026の会場である台北南港展覧館 (TaiNEX 1 & 2)は歩くのが難しいほどの人で埋め尽くされた。

PHOTOGRAPH: YUKO NONOSHITA

そのメインを占めるのが、世界のITC産業を支える台湾エコシステムを形成するメーカーたちである。EMS(電子機器受託製造)企業では世界トップのFoxconnをはじめ、Pegatron、COMPAL、コンピューターメーカーのAcer、ASUS、GIGABYTE、MSIらの巨大なブースが並び、どこも近づくのに苦労するほど大勢の人たちが集まる盛況ぶりを見せていた。

そこにあるのは“おしゃれ”なノートパソコンでも最新のスマホでもなく、2mを越えるデータサーバーやネットワークを繋ぐケーブル類、電源から冷却機といった武骨なハードウェア群であることに驚かされる。

以前は、周辺機器やパーツを扱う小さなブースが集まるアキバの電気街にいるようだった会場は、明るく洗練されたデザインのブースが増えたことで雰囲気はガラリと変わり、イベントコンパニオンやコスプレイヤーも減ってビジネス色を強めている。来場者のなかには女性の姿が多く見られるようになり、AIというキーワードに幅広い層が引き寄せられていることがうかがえる。

実際に台湾市場はAIによって大きく成長している。2年連続でCOMPUTEXに参加する台湾証券取引所(TWSE)のメディアブリーフィングによると、2026年5月時点で台湾株式市場の価値は5兆米ドルに達し、世界第5位(日本は3位)にある。牽引しているのは半導体関連企業で、AI業界に関する割合も高まっているという。

また、Qualcommの最高経営責任者(CEO)クリスティアーノ・アモンやIntelのリップブー・タンCEO、ArmのCEOであるレネ・ハースといった世界の半導体企業トップが基調講演に登壇するため台北を訪れており、情報発信の場としてもCOMPUTEXは存在感を強めている。

スティーブ・ジョブズを超えるカリスマの存在

COMPUTEXに世界が引き寄せられるもう一つの要因は、NVIDIAのCEOジェンスン・フアンの存在だ。台湾生まれで創業者の一人でもあるフアンが率いる半導体メーカーは、生成AIの突然ともいえるヒットにより急激に成長し、いまや企業時価総額でアップルを追い抜いてトップに君臨する。

工場をもたないファブレス企業は製造の多くをパートナー関係にある台湾メーカーに委託しており、巨大な台湾エコシステムを構築している。フアンは今年はCOMPUTEXの会期1週間前から専用機で台湾入りし、政府関係者や業界人らと精力的にビジネスミーティングを行ない、5月27日には2030年の稼働を目指す台湾キャンパス(NVIDIA Constellation)の着工式を行った。米国本社と同じデザインの社屋は約4,000人の従業員が働く環境が整う予定で、今後数千人規模が新規採用されると見込まれている。