ASCII.jp:JavaはAIでまだまだ進化する ―― 「Microsoft Java Day」にみる“Agentic Dev” (1/2)

ULS漆原茂氏が“AI駆動開発時代のチーム開発”を語ったパネルディスカッションも

2026年06月24日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

 日本マイクロソフトは、2026年5月28日、Java開発者向けのイベント「Microsoft Java Day 2026」をオンライン開催した。

 同社は2021年から毎年、Javaに特化したイベントを開催しており、今回で6年目。今年のテーマは「AI Driven DevからAgentic Devへ」。AIエージェントが“チームメイト”になる時代に向けた、Java開発の最前線が凝縮された内容になった。

 本記事では、Java開発におけるAI活用の“3つのステージ”について語られた基調講演と、ULSコンサルティングの漆原茂氏がゲスト登壇したパネルディスカッションの様子をレポートする。

基調講演に登壇したのは、MicrosoftのCoreAI Developer Relations Sr. Cloud Advocateである寺田佳央氏だ

AI駆動開発によりたった“2週間”で構築されたモダンECサイト

 基調講演の冒頭、Microsoftの寺田佳央氏より紹介されたのが、Javaで構築された「スキー用品のECサイト」だ。

 現代のECサイトで必要となる機能を網羅しつつ、AI機能も充実する。管理者向けには、売上予測や在庫の滞留、ビジネス機会を提示するAI分析機能を提供。顧客向けには、自然言語で相談すると、スキー場の場所やスキルレベル、予算、在庫などを考慮して最適な商品を提案し、カートへの自動追加まで行う「AIアドバイザー機能」をマルチエージェントで実装している。

「AIアドバイザー機能」は待ち時間に関連情報を先出して離脱を防ぐ工夫も

 このECサイトは、寺田氏自らがAzure Kubernetes Service(AKS)上でマイクロサービスとして構築したもので、そのまま納品できるほどの完成度を誇る。従来であれば複数人で半年以上構築に要する規模のアプリケーションだが、AI駆動開発によって「たった一人で、2週間前後」で実装された。

 こうした実例を示しつつ、寺田氏は参加者に向け、「GitHub Copilotを使いこなせてますか?」と問いかける。「今は、コード補完にとどまらず、エージェントを自走させて開発できるレベル。ただAIを『チームメイト』として融合するには、事前準備も必要」と強調した。

AIと一緒に作る「ステージ1」 GitHub Copilotの進化

 寺田氏は、冒頭披露したエージェンティックなアプリケーションの開発や、もしくはAI駆動開発を実践していく上で、Java開発者には“3つのステージ”が存在すると言う。

 最初のステージは、「AIと一緒に作る」だ。前述のよう、AIが開発のあらゆる面で“チームメイト”になってくれる世界であり、GitHub Copilotでいえば、コード生成や補完はもちろん、テスト自動作成や、自然言語による複数ファイルの一括編集まで任せられるまでに進化を遂げている。

 古いJavaアプリケーションを近代化するためには、「App Modernization」の拡張機能も用意されている。「例えば、20年前に主流だったJava 5やStrutsのアプリケーションも、Java 21やSpring Bootへ自動マイグレーションできる。古いままでは、パフォーマンスの向上も望めず、モダンなUIやAI機能などを実装し、運用管理を効率化することも新たなユーザー体験を届けることも難しい」(寺田氏)

 他にも、Javaアプリケーションにエージェントを組み込むための開発キット「GitHub Copilot SDK for Java」やAIが自動的にブレークポイントを設定してデバッグまでこなすEclipse版の「Debug Agent」もパブリックプレビューで展開中だ。

GitHub Copilotのコード生成を超えた進化

 しかし、単にLLMを活用するだけでは、複数人が関わるプロジェクトで品質を担保するのは難しい。「それぞれ違うAIを使って、バラバラの回答を得ている状況では、ひとつのアプリケーションとして統合できない」と寺田氏。

 寺田氏は、こうした壁を乗り越えるために、カスタムエージェントやAGENTS.md、custom_instruction.md、SKILLSなどをチームで共有して、コードの品質を均一化することが重要だと訴えた。

AIを組み込む「ステージ2」とAIが自律的に働く「ステージ3」

 2つ目のステージが「AIをアプリに組み込む」だ。Spring Boot環境に生成AIを組み込むフレームワーク 「Spring AI」やベクトル検索や会話メモリ、トランザクション管理にも対応できる「Azure OpenAI Service+Cosmos DB」などを活用して、実際にJavaアプリケーションにAI機能を実装していく世界だ。

 1800以上のAIモデルをデプロイできるのが、AIアプリケーション開発のための統合開発基盤「Microsoft Foundry」だ。モデル選びから運用までをひとつのポータルで完結。冒頭のECサイトも、同基盤で、AI機能のタスクに応じた最適なモデルを利用している。

Microsoft Foundry

 そして、3つ目のステージが「エージェントの“頭の中”」だ。AIが自律的に動くよう設計する最終段階である。

 AIは、「Planner(タスク分割・実行計画)」や「Tools(外部API・DB呼び出し)」、「Memory(会話や状態保持)」、「Retriever(関連情報の取得)」、「Loop(結果の評価と次の実行計画)」、さらには外部ツールと接続するための「MCP統合」といった機能を持たせることで、自ら判断して行動できるようになる。

 今回のECサイトでは、前述のSpring AIによって、エージェントの協調を制御する“Orchestrator”をはじめ、ユーザーの意図を汲みとって商品を検索する“Search Agent”、購入フローを管理しておすすめを提案する“Cart Agent”、リアルタイムで在庫状況を判断する“Inventory Agent”といったマルチエージェントを編成している。

エージェンティックAIに必要となる機能

 こうしたエージェントの実行基盤として、ECサイトにはAzure Kubernetes Service(AKS)が利用されているが、Azureには他にも「Azure Container Apps」や「App Service」といったデプロイの選択肢もある。「直近では、『AKS Agent Skills for GitHub Copilot』も登場しており、Azureに熟知をしていなくても、AIの対話を通じて簡単に環境構築ができる」と寺田氏。

AKS Agent Skills for GitHub CopilotはVS CodeとGitHub Copilot CLIで使える

 さらに、デプロイ後の運用フェーズもAIが支える。例えば「Azure DevOps MCP Server」によって、エージェントがワークアイテムやPR、パイプラインに直接アクセスできるようになり、障害対応まで自動化することが可能だ。「開発からデプロイ、運用までのライフサイクル全体でAIを活用することで、今回、2週間で本番環境に近いクオリティのアプリケーションを届けられた」(寺田氏)

 基調講演の最後に寺田氏は、「Javaは30年経っても、まだまだ進化している」と語る。「色々な領域からAI活用をスタートできるので、ぜひ充実したAIツールを活用して、アプリケーション開発もしくはアプリケーションそのものをより良くしていって欲しい」とJava開発者にエールを送った。

今回紹介されたJava開発のAIスタック