トランプ政権がAnthropicの最先端AIモデルへの輸出規制を決断した背景には、韓国通信大手SKテレコムへの「Claude Mythos」提供を巡る論争があったと、事情に詳しい関係者らが『WIRED』に語った。米政府当局者はSKテレコムと中国とのつながりを問題視していたという。
こうした懸念は、その後アマゾンが「Claude Fable 5」で見つけた脆弱性をホワイトハウスに報告したことで、さらに強まったようだ。Fable 5は、Anthropicが6月9日(米国時間)に一般公開したモデルで、Mythosに高度な安全対策を施したバージョンだ。
アマゾン側の研究者らは、Fable 5に実装された安全対策の一部を回避することで、本来は制限されているMythosの高度なサイバーセキュリティ機能を利用できる可能性があると指摘した。ただしAnthropicや外部のサイバーセキュリティ専門家らは、こうしたリスクはClaudeに限ったものではないと反論している。
政権に近い関係者によると、こうした一連の出来事が重なった結果、ホワイトハウスはAnthropicに最先端AI技術を適切に管理させることはできないとの判断に至ったという。
そして12日、トランプ政権はAnthropicに対し、MythosとFable 5へのアクセスをすべての外国籍利用者について停止するよう命じた。その対象には、米国内に居住する移民も含まれていた。
Anthropicは、国籍に基づいて技術へのアクセスを制限するのではなく、モデルへのアクセスそのものを停止する方針を選んだ。国籍に応じた利用制限は、プライバシーを損なうことなく実施するのが難しいと判断したためだ。
ホワイトハウスとAnthropicは、Claude MythosとFable 5の提供再開を巡って数日間にわたり交渉を続けているが、依然として対立が続いている。
Anthropicはコメントを控えた。ホワイトハウスとSKテレコムも、取材に対してすぐには回答しなかった。
SKテレコムを巡る認識の隔たり
『Washington Post』は先に、トランプ政権当局者が、中国とのつながりがあるとみなしていた「韓国の通信会社」がMythosの提供先に含まれていることを知り、警戒を強めていたと報じている。ただし、同紙は企業名を明らかにしていなかった。
この報道を受けて、SKテレコムは韓国紙『朝鮮日報』に対し、「海外メディアに掲載された匿名関係者の発言には確認された事実が含まれておらず、当社は中国との関係を有していません」とコメントした。
Anthropicに近い関係者によると、同社はSKテレコムによるMythosへのアクセスと、アマゾンが発見した脆弱性を別個の問題とみなしている。また、米政府がAnthropicに送った書簡は、Claude MythosとFable 5へのアクセスを米国籍保有者に限定するよう求める内容だが、SKテレコムや中国への言及はないという。
Claude Mythosはソフトウェアの脆弱性発見に極めて優れていることから、Anthropicは当初、「Project Glasswing」と呼ばれる(業界横断の)プログラムを通じて、信頼できる少数の組織にのみアクセスを認めていた。
今月初めには、外部の専門家や米政府などとの「数週間にわたる緊密な連携を経て」、Anthropicは同プログラムへの参加組織の拡大を発表した。韓国最大の通信事業者であるSKテレコムも、サムスン電子や韓国インターネット振興院(KISA)とともに、Mythosへのアクセス権を与えられた約150社のうちの1社となった。