中国製の身体と米国製の頭脳──NVIDIAが描く次世代ヒューマノイド | WIRED.jp

NVIDIAの最高経営責任者(CEO)であるジェンスン・フアンは6月初め、未来のヒューマノイド(人型ロボット)の青写真を発表した。それは中国製の「身体」と米国製の「頭脳」を備えた大柄なヒューマノイドだ。

この構想では、中国のロボットスタートアップUnitree(ユニツリー、宇樹科技)が開発した身長約183cm、体重約68kgのロボット「H2 Plus」、NVIDIAの「Thor T5000」チップ、高度なロボットハンド、そしてプログラミングや学習を容易にする新たなソフトウェア群が組み合わされる。

「頭脳」と「身体」が接続されるとき

NVIDIAのThorチップは、ロボットが周囲の環境を理解し、自身の動きを制御するために必要な高性能AIモデルを実行できるほどの演算能力を備えている。一方、ロボットの身体にはUnitree製のモーターやアクチュエーター、各種センサーが搭載されている。さらに、シンガポール企業Sharpaが開発したロボットハンドは、人間のような器用さを実現しており、カードマジックやリンゴの皮むきまでこなせるという。こうした「器用さ」はこれまでロボティクス分野における重要な未解決課題のひとつとされてきた。

NVIDIAでロボティクス部門のプロダクトディレクターを務めるスペンサー・フアンは、『WIRED』に対し、同社はできるだけ多くのヒューマノイドメーカーへ自社のAI半導体技術を提供したい考えだと語る。

「NVIDIAにとってUnitreeはまだ最初のパートナーにすぎません。今後、同様の提携先はさらに増えていくでしょう」とフアンは語る(彼はジェンスン・フアンCEOの息子でもある)。また、H2 Plusに搭載された技術は、従来型の産業用ロボットアームを含むほかのロボットの性能向上にも応用できる可能性があるという。

ある意味で、この提携は意外なものでもある。ロボティクスは米中の技術覇権争いにおける新たな戦略分野として注目を集めており、米国では中国製ヒューマノイドの全面禁止を提案する政治家まで現れている。さらに昨年には、Unitree製ロボットがデータを取得・送信できる能力をもち、安全保障上のリスクとなる可能性があると、一部のセキュリティ研究者が指摘していた。

一方で、この提携は極めて合理的だという見方もある。AIガバナンスと中国を研究するカーネギー国際平和財団のフェロー、スコット・シンガーによると、米国は世界最高水準のAIチップを保有している一方、中国はサプライチェーンの優位性を背景に、ロボティクスのハードウェア分野で強みをもっている。

Image may contain Robot Adult and Person

Courtesy of NVIDIA

「両国はそれぞれ、サプライチェーンの重要な部分を握っており、それを互いへの対抗手段として利用することもできるでしょう。しかし、いまその両者が協力しているのです」

NVIDIA自身も、安全保障上の懸念を認識しているようだ。H2 Plusのリファレンスデザインには、新たな「頭脳」や高性能なロボットハンドだけでなく、ユーザーデータやAIモデルの安全性に対する懸念を和らげるためのセキュリティ機能も組み込まれている。

ヒューマノイドを巡る米中の駆け引き

現在、NVIDIAのチップは大規模AIモデルの学習における事実上の業界標準となっており、同社は専用のハードウェアやソフトウェアツールを通じて、高度なロボティクス分野への展開も積極的に進めている。一方で、米国政府は最先端半導体の中国向け販売を原則として禁止している。しかし、昨年後半には規制が一部緩和され、従来より高性能なチップの販売が認められるようになった。