OpenAIは現在、ChatGPTを全面的に刷新しようとしている。シンプルなチャットボットのインターフェイスを、日常生活から仕事まで、人生のあらゆる側面で発生する用事をこなせるパーソナライズされたAIエージェントへと進化させようとしているのだ。同社はこの新しいプロダクトを、社内外で「スーパーアプリ」と呼んでいる。
このオールインワンのプラットフォームの開発はOpenAIがこれまで進めてきたなかでも、とりわけ重要な取り組みである。そして、このツールの成否を左右する大きな権限を、ひとりの開発責任者が握っている。それが、ティボー・ソティオだ。ソティオは先月、OpenAIのコアプロダクト責任者に任命され、ChatGPTとCodexの両方を統括しつつ、スーパーアプリの実現に向けて両者を統合する役割を担うことになった。
スーパーアプリを実現するため、OpenAIは最近動画アプリ「Sora」や科学者向けのAIプラットフォームなど、複数の独立した製品の提供を終了した。これらのチームを率いていた幹部の多くはすでに同社を去っている。こうしたなか、ソティオはOpenAI内での影響力を拡大し続けてきた。現在ソティオの直属の上司は、グレッグ・ブロックマンである。AGI導入担当の最高経営責任者(CEO)を務めるフィジー・シモが病気療養中のため、ブロックマンは現在、OpenAIの全プロダクトチームの責任者となっている。
ソティオは、OpenAIで最も急成長している収益源のひとつとなったCodexの構築において重要な役割を果たした。Codexでの彼の役割は、開発者向けの製品をつくり、AI研究者と連携することだった。だが、いま任されているのは、それとはまったく性質の異なる仕事である。週間アクティブユーザーが10億人近くに上る消費者向けプロダクトであるChatGPTを刷新することが今回の任務なのだ。
「ものすごくわくわくすると同時に、少し恐ろしくなるときもあります」と、ソティオは6月上旬に実施したインタビューで語っている。
OpenAIは、スーパーアプリを構築する計画について公の場で頻繁に語っている。しかし、最終的なプロダクトが具体的にどのような機能をもつものになるのかは、まだ明らかになっていない。「スーパーアプリ」という言葉は通常、アジアで普及しているWeChatのようなプラットフォームを指すときに使われる。メッセージのやりとりから決済、ショッピングまで、ひとつのインターフェイスで済ませられるようにしたものだ。だがOpenAIが計画しているのは、それよりはるかに野心的なもののようである。
ソティオは、「人間が大切にしているものを深く理解できる、世界最高のパーソナルエージェント」の構築を目指していると説明する。これから1年でChatGPTは、必要なときに必要な情報を届け、「心地よく気の利いた」対応ができる存在に進化するという。
OpenAIは、IPOに向けて準備を進めながら、グーグルやAnthropicとの激しい競争にも対抗しなければならない。そこで同社は、ChatGPTをスーパーアプリへと変え、成長の勢いを取り戻したい考えだ。あらゆる用途に使えるひとつのパーソナライズされたアシスタントをつくることで、消費者向けでも企業向けでも、AI競争全体でも、再び市場で優位に立てると見込んでいるのである。
開発者としての原点
ソティオはベルギーで育ち、応用数学を学んだ後、2015年にグーグルのロンドンオフィスに入社した。そこでGoogle マップの開発に携わった後、Google DeepMindに移った。そこでは、研究者たちがAlphaGoのようなAIシステムの構築に使うインフラやツールの開発に従事した。AlphaGoは2016年、人間の囲碁チャンピオンを破った初のAIとして歴史に名を刻んでいる。