2026年06月15日 19時00分
AI

2026年5月にAIエージェントが実験用ネットワーク「Decentralized Network 42(DN42)」へ参加を申請し、ネットワーク全体をスキャンするためAmazon Web Services(AWS)上へ大量の計算資源を用意しました。AIエージェントは約24時間後に停止されましたが、AIエージェントを運用していた人物は6531.30ドル(約105万円)の請求が発生したとして寄付を求めています。
AI Agent Bankrupted Their Operator While Trying to Scan DN42 – Lan Tian @ Blog
https://lantian.pub/en/article/fun/ai-agent-bankrupted-their-operator-scan-dn42lantian.lantian/
DN42は自宅のサーバーをVPNでほかの参加者のサーバーにつなぎ、通信経路を交換したりDNSを構築したりしてインターネット運用を練習できる実験用ネットワークです。実際のインターネットでも使われるBorder Gateway Protocol(BGP)などを小規模な環境で試せるため、DN42はネットワーク技術者や愛好家の実験場として運営されています。
サーバーで使われている通信ポートを順番に調べれば、ウェブサーバーやファイル共有サービスが動いているかを外部から確認できます。ポートスキャンと呼ばれる調査方法は設定ミスの発見にも役立ちますが、短時間に大量の通信を送ると相手側の回線やサーバーへ負荷をかける可能性があります。DN42の公式ポリシーではスキャン前にメーリングリストで告知し、対象者がスキャンを拒否できる手段を用意することが礼儀として求められています。
騒動の発端は「JertLinc3522」を名乗るAIエージェントがDN42の登録システムに申請を出したことでした。AIエージェントは「ネットワークの索引を作成する」と説明し、全ポートを対象とする包括的なスキャンを1時間ごとに実行する計画を明らかにしました。

スキャンのためにAIエージェントが選んだのは、小型の仮想サーバーではなくAWSの「m8g.12xlarge」インスタンス5台でした。申請内容によると各インスタンスは48基の仮想CPUと192GiBのメモリを備え、合計で最大100Gbps規模の通信を想定していたとのこと。
DN42の参加者には通信速度が100Mbpsや1Gbps程度の安価な仮想サーバーを利用している人もいます。最大100Gbpsでスキャンを始めれば調査ではなく事実上のサービス妨害になる可能性があるため、コミュニティは申請を承認しませんでした。
一方でAIエージェントはコミュニティからの指示に応じ、スキャン拒否を受け付けるウェブサイトを作成してIRCにも参加しました。しかし、存在しないメールアドレスやTelegramボットを案内したほか、IRC参加者の発言を分析して「協力的」「懐疑的」などと分類。ネットワーク機器ではなく人間の行動まで記録し始めたため、参加者から不気味だという声も上がりました。
AIエージェントはAWSのインフラを稼働させたまま申請の修正やウェブサイトの作成を続けました。約24時間後、AIエージェントを運用していたJertLincと名乗る人物がクレジットカードへの複数の請求に気付いてAIエージェントを停止したとのこと。

JertLinc氏は後にDN42のメーリングリストで6531.30ドル(約105万円)のAWS請求が発生したと主張し、暗号資産による寄付を呼びかけました。AWSとの交渉によって請求額は1894ドル(約30万円)まで減額されたとも説明しています。費用の原因については、AIエージェントがAWS CloudFormationの構成を繰り返し展開し、多数のインスタンスやロードバランサー、AWS Lambdaを作成したためだと述べています。
DN42の参加者の1人であるラン・ティエン氏は、DN42のスキャンなら小型の仮想サーバーで十分だったにもかかわらず、JertLinc氏がAIエージェントの計画やAWS上の操作を確認せず実行を許可したことが損失につながったと感想を述べています。JertLinc氏は停止時に「次回は制限付きのAWSキーを渡してスキャン速度を100Mbps以下にする」と説明しましたが、後の投稿では「次回はもっと優れたAIエージェントが必要」とも述べていたとのことです。
なお、今回の経緯はエンジニアが集うニュース共有サイト「Hacker News」にも投稿されており、「AIエージェントを送り込んだ相手にAWSの利用料を支払うための寄付を求めるとは」と皮肉る声が上がっています。また、「高額な失敗から学ぶべきなのに、責任を引き受けず別のAIエージェントを使おうとして寄付まで求めており、あまり教訓を得ていないように見える」との指摘も寄せられました。
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