
チョ・ウォヌ韓国マイクロソフト代表 写真=韓国マイクロソフト
Microsoftは、企業ユーザーによるAI活用の実態をまとめた年次報告書「2026 Work Trend Index」を発表した。個人と組織の両面でAI活用の準備が整った「フロンティア層」は19%にとどまった一方、先行ユーザーではAIと人の役割を事前に切り分け、あえてAIを使わない時間も確保する傾向がみられた。
報告書によると、個人と組織の双方で準備が整っているフロンティア層は19%だった。半数の50%は移行段階にあり、個人・組織ともに準備が整っていない停滞段階は16%だった。
フロンティア層には大きく2つの特徴があった。1つは、業務に着手する前にAIと人の役割分担を意図的に決めていること。もう1つは、AIを日常的に活用しながらも、AIを使わずに作業する時間を一定程度確保していることだ。
フロンティア層の53%は、AIと人の役割を事前に切り分けていると回答した。意図的にAIを使わない時間を設けているとの回答も43%に上った。一般回答者では、それぞれ33%、30%にとどまった。
韓国でも同様の傾向が確認された。業務の一部をAIなしで進めると答えた割合は、フロンティア層が31%、一般回答者が22%だった。AIと人の役割を区分しているとの回答は、フロンティア層が48%、一般回答者が34%だった。
報告書は、AIに何をどこまで任せるのか、人が担う業務とのバランスをどう取るのかを見極めるうえで、こうした意図的な設計が重要だと指摘した。
AIは単なる補助ツールにとどまらず、業務フローそのものに関与し始めている。これに伴い、働き方は人、エージェント、システムが連携する形へ移りつつあり、経営層に求められる課題も技術導入から業務プロセスの再設計へと移っているという。
従業員はAIを活用して、より付加価値の高い業務へシフトする必要がある一方、リーダーには導入そのものより業務の再設計に注力することが求められると分析した。組織についても、現場で得た学びを運用へ継続的に反映する「Learning System」への転換が必要だとしている。
また、AIやエージェントの導入を広げるだけでは、必ずしも成果には結び付かない可能性も示した。組織の競争力を左右するのは導入スピードではなく、現場の学びを共有可能な定着した業務習慣へ落とし込み、AIを組織運営に組み込む力だと説明している。
AI活用の成熟度が高まるほど、認知的な業務に利用が集中する傾向も明らかになった。Microsoft 365 Copilotの活用データと10万件超の利用パターンを分析した結果、対話全体の49%は情報分析、問題解決、代替案の評価、創造的思考の支援に使われていた。これに協業・コミュニケーションの19%、情報探索の15%、文書作成や成果物作成の17%が続いた。
AI活用が広がるほど、人の判断力の重要性は増している。グローバル回答者の50%はAI成果物の品質管理が重要だと答え、46%は批判的思考を中核能力に挙げた。86%はAIの出力を最終回答ではなく出発点と捉え、成果物への最終的な責任は人が負うべきだと考えていた。
報告書では、個人よりも組織環境の影響の方が2倍大きい点も確認された。従業員個人の意識や行動も重要だが、それ以上に組織文化、マネジャーの姿勢、人材政策がAI活用の成果を左右するという。組織文化では、AIを戦略的優位の源泉と位置付け、実験を後押しする雰囲気が中核になるとした。
韓国マイクロソフトのオ・ソンミAIワークフォースGTMディレクターは、「リーダー層はAIを自ら使い、成果物の品質基準をチームと議論し、失敗を許容する心理的安全性を確保すべきだ」と述べた。一方で、経営層の意思と実行方針がチームレベルまで明確に伝わっていると答えた従業員は26%にとどまったという。
同氏は、「AIエージェントの開発では、最初の成果物がそのまま本番環境に投入されるケースはほとんどない。3回程度の修正と配布を経て実運用に至るケースが最も多い」と説明し、「失敗をプロセスの一部として受け止める組織文化が必要な理由でもある」と語った。
報告書は、AI活用を実際の成果につなげるには、単なる技術導入にとどまらず、リーダーが運用モデルとプロセスを根本から見直す必要があると強調した。従来の業務フローや評価方式、報酬体系全般を新たな働き方に合わせて再整備する必要があるとしている。
実行段階では、中間管理職の役割が重要になるという。別途実施したグローバル調査(1800人)では、管理職がAI活用を自ら実演した場合、主要指標が一斉に上昇した。
チョ・ウォヌ韓国マイクロソフト代表は、「今回の報告書は、AIを巡る変化が従業員、リーダー、組織の3つの軸で同時に進んでいることを示している」と述べた。そのうえで、「AIがより多くの実行を担うほど、人の判断力とリーダーシップの重要性は高まる。韓国企業でも、AI導入の段階を超え、働き方や協業の仕組みを見直し、実業務と成果につなげるための取り組みが本格化している」と話した。