NECと米Anthropic、ならびに国内の主要金融機関8社は、AIを活用した新たな価値創出に向けた共創プロジェクトを開始した。参画するのは、MS&インシュアランスグループホールディングスや住友生命、大和証券グループ本社、三井住友トラストグループ、三井住友信託銀行、三井住友フィナンシャルグループ、明治安田生命などで、銀行・証券・保険を横断した包括的な取り組みとなる。
今回のプロジェクトは、NECとAnthropicが4月に開始した戦略的協業の一環として位置付けられる。両社の技術基盤と、各金融機関が持つ業務ノウハウを融合し、金融業界におけるAI活用の高度化と実装を目指す。特にAIモデル「Claude」を軸に、安全性と信頼性を重視した業務特化型ソリューションの開発が進められている。
背景には、生成AIの急速な進化と、金融インフラの重要性がある。金融分野は社会基盤として高い精度と信頼性が求められる一方で、データ量の増大や規制対応の複雑化などにより業務負荷が増大している。こうした中で、単一企業や個別の取り組みではなく、業界横断で知見を共有し、AIを活用した新たな基盤を構築する必要性が高まっていた。
今回の取り組みでは、大きく3つの方向性が掲げられている。第一は、金融サービスの品質と付加価値の向上だ。AIを活用した高度なデータ分析や意思決定支援により、顧客体験の向上や新サービスの創出を目指す。例えば、顧客ニーズに応じた提案の高度化や、より迅速かつ正確な対応の実現が期待される。
第二は、業務プロセスの変革と生産性向上である。AIによるオフィス業務の自動化や効率化を推進し、従来の業務負担を軽減するとともに、より付加価値の高い業務へのシフトを促す。金融機関におけるバックオフィス業務や審査業務は多くの時間と人手を要するため、AI導入による効率化効果は大きいと見られる。
第三は、サイバーセキュリティ対策とIT基盤の強化だ。クラウド化やシステムモダナイゼーションを進めることで、サイバー攻撃への耐性を高めるとともに、将来的なビジネス変化にも対応可能な柔軟なIT環境の構築を目指す。AIの活用とセキュリティ強化を同時に進める点は、本プロジェクトの重要な特徴といえる。
AnthropicのChris Ciauri氏は、「金融業界の深い理解を持つパートナーと連携することで、安全性と信頼性を確保したAI活用を推進できる」と述べ、今回の取り組みの意義を強調。一方、NEC 執行役 副社長 兼 最高執行責任者(COO)の吉崎敏文氏は、各金融機関の知見と最先端AI技術を融合することで、日本市場におけるAIの可能性を最大限引き出すと語る。
NECは自社の価値創造モデル「BluStellar」を軸に、業種横断のデジタルトランスフォーメーション(DX)から、AIを基盤としたAIトランスフォーメーション(AX)への進化を掲げており、今回の取り組みはその戦略を体現するものになる。
今後、各社は実証や検討を通じて具体的なユースケースを創出し、段階的な実装を進める方針だ。
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