ChatGPTヘビーユーザーでもあるニコール・ディアス。このプロフィール写真もChatGPTを使って作成した。ChatGPTOpenAIでは、社内弁護士たちも自ら業務用のアプリやツールを作り始めている。OpenAIの法務部門で企業コンプライアンスを担当する上級弁護士、ニコール・ディアスは、同社のChatGPTやCodexを活用して法務業務を効率化している。ディアスが作ったツールのひとつは、法律事務所から届く専門的な法務文書を、従業員向けの分かりやすい社内ルールへと書き換えるものだ。
ニコール・ディアス(Nicole Diaz)は、これまで一度もコードを書いたことがなかった。しかし、彼女がOpenAIの法務チームに加わってから状況は変わった。

OpenAIは、スマホから管理できる「Codex」タブをChatGPTモバイルアプリに追加した | Business Insider Japan
1年後の今、OpenAIの法務部門で企業コンプライアンスを担当する上級弁護士のディアスは、OpenAIのアプリを活用し、法務業務をよりシンプルかつ迅速に進めている。
彼女は自社のChatGPTや、OpenAIのコーディングエージェントであるCodexを使い、業務を効率化するアプリを自ら作った。
そのアプリは、法律事務所から届く専門的な文書を、社員向けの分かりやすい社内ルールにまとめたり、従業員から届くメールを内容ごとに振り分け返信文の下書きを作成したり、その対応状況を管理したりするのに役立っている。
「AIでここまでできるのかという認識が、この半年、いやこの3カ月ほどで大きく変わった」とディアスは語った。
ディアスが担当しているのは企業コンプライアンスだ。これは、OpenAIが世に送り出す製品そのものではなく、会社の事業運営が法律や倫理基準に沿って行われているかを監督する法務分野で、従業員が法令や社内ルールを守っているかを確認する役割を担っている。
また、企業コンプライアンスは、企業が株式公開(IPO)に伴う厳しい監視や審査に備え、組織や人員を拡充することも多い。
この1年間、ディアスはこうした業務をより迅速かつ効率的に進めるために、OpenAIの技術を活用してきた。だが、こうしたツールが彼女に代わって判断を下すわけではないという。「AIが担うのは、その前後にある繰り返し作業だ」とディアスは言う。
彼女の判断力は、伝統的な法曹キャリアの中で培われてきた。ディアスはハーバード・ロー・スクール(Harvard Law School)で法律を学び、その後、法律事務所のスキャデン(Skadden)で弁護士として働きながら、大規模で重要な訴訟案件の実務を身につけた。
その後は、SNS企業のスナップ(Snap)に移り、企業コンプライアンスを担当する弁護士として経験を積んだ。しかし、そうした職場でソフトウェア開発を学ぶ機会はなかった。それを変えたのがOpenAIだった。
コードを書いた経験のなかったディアスは、まさにOpenAIが描く利用者像そのものだ。OpenAIは、これまで「作る側」ではないと思っていた人たちが、AIエージェンを使うことで自分で業務用のアプリやツールを作れるようになると考えている。
ディアスの仕事の進め方は、法務業界で現在続いている議論を考えるうえでも興味深い事例である。法律事務所や企業の法務部門では、ハーベイ(Harvey)のような法律業務向けの専用AIソフトを導入すべきかどうかを検討する動きが広がっている。
一方でディアスは、そうした専用ソフトを使わなくても、最先端のAIモデルを直接活用することで弁護士が何を実現できるのかを示している。
面倒なルール作りをAIが効率化
ディアスが最初にChatGPTを活用したのは、企業コンプライアンス業務の中でも地味な仕事のひとつである社内ルールの作成だった。
法律事務所から送られてくる文書には、法律用語や難解な表現が数多く盛り込まれていることが多い。ディアスによると、そうした文書は、規則や手続きが多い大企業では通用するかもしれないが、OpenAIには向いていないという。
そのため彼女は以前、そうした文書を一から書き直し、従業員が実際の業務で活用できる分かりやすい社内向けガイドラインへと作り変えたことがある。
そこで彼女は、法律文書を社員向けの分かりやすいガイドラインへ書き換えるためのChatGPTの機能、スキルを使った。
スキルは、繰り返し行う作業の手順をあらかじめ登録して何度でも再利用できる機能である。そのため、毎回長いプロンプトを書き直す必要がない。ディアスは「シンプリファイ(Simplify)」と名付けたスキルを作成した。
このスキルは、法律やコンプライアンスに関する文書を、社員が理解しやすい文章へと書き換えてくれるものだ。文章を簡潔にし、法律文書特有の堅苦しい表現を減らし、OpenAIの社内ルール文書の形式に整えてくれる。
ディアスは今も出力された文書を自分で確認し、外部の顧問弁護士にも送り返して承認を得ている。その手間があるにもかかわらず、このスキルを使えば、実用に耐える下書きにたどり着くまでの時間を大幅に短縮できるという。