AIの進化により、私たちの生活は便利になった。しかし、自分自身に関する情報、プライバシーが、AIによって、どこでどう使われているか把握することは困難になっている。個人のプライバシーをめぐり、どんな問題が起きているのか、それらに対する有効な対処法は何か。慶應義塾大学総合政策学部の新保史生教授による論考。
■いつの間にかAIに囲まれている
朝、スマートフォンの音声アシスタントに今日の天気を尋ねる。通勤中、SNSのタイムラインには絶妙に自分の好みに合った投稿が並ぶ。仕事では生成AIに資料の要約やプレゼン資料の作成を頼む。夜は動画配信サービスがお薦め動画を再生してくれる。
いつの間にか、私たちの暮らしはAIに支えられている。AIの進化によって便利になったことは間違いない。一方で、自分に関する情報が、いつ、どこで、誰によって集められ、誰に提供され、何のために使われているのか、その全体像を把握することは、技術の進歩に比例して難しくなっている。
「個人情報を適正に取り扱う」とともに「個人のプライバシーを保護する」ことが、なぜAI時代にはこれほど難しくなっているのか。私たちの身の回りで起きている問題を整理しながら、世界と日本がどのようにルールづくりに取り組んでいるのか、そして一人ひとりに何ができるのかを考えるうえで押さえておきたい事柄を、以下に挙げてみたい。
■AIは「データを集めて学ぶ」仕組みである
現在広く使われているAIは、大量のデータを読み込み、その中からパターンや規則性を見つけ出して、新しい入力に対する答えを導き出す仕組みである。写真を見分けるAIには何百万枚もの画像、文章を生成するAIにはウェブ上の膨大な文章、話しかければ答えてくれるAIの背景には、誰かが書いた質問とその答えの蓄積がある。
AIは様々なデータを学習しているが、それらのデータには個人に関する情報が含まれていることがある。顔写真、声、文章、購買履歴、位置情報、検索履歴。このような情報は私たちが自らSNSにアップロードしたものに限らない。「無料」で使えるサービスの多くは、私たち自身のデータが対価となって成り立っていることを日頃意識することはあるだろうか。