Claude Codeの「Plan mode」を捨てる選択──grill-meとADRで設計のブレを抑える新潮流 — BigGo ファイナンス

AIによるコーディング支援が急速に普及するなか、Anthropic(Anthropic)の「Claude Code」の利用者から、標準機能である「Plan mode」への違和感を訴える声が出始めている。2026年6月4日、クラウドインテグレーターのFIXER(FIXER)に所属するエンジニア竹内一真氏が、同社の技術ブログ「cloud.config Tech Blog」で公開した記事が注目を集めている。竹内氏は「Plan mode×Opus 4.7 の組み合わせは、止まることもエラーを出すこともなく、プランから実装まで一気に走り切ってくれる」と評価しつつも、「使い続けるうちに『思うように実装ができない』と感じる場面が増えてきた」と指摘する。

竹内氏が問題視するのは、Opus 4.7の実装力の高さが、逆に設計の「ブレ」を増幅させる構造だ。同氏によれば、Plan modeが生成するプランは「それっぽい」ものの、明確な設計基準に沿っていないため、実装のたびに方針が変わりやすい。結果として、既存の関数が別の場所で再実装されたり、状態管理の方式が同一コードベース内で混在したりする事態が生じる。「一度ブレた実装はコードベースに残り、次の実装はそれを土台にしてさらにブレていく。プラン自体は毎回それっぽいので、止める動機が生まれない」と竹内氏は警鐘を鳴らす。

こうした課題に対し、竹内氏が提案するのが「grill-meスキル」と「ADR(Architecture Decision Records)」を組み合わせた設計手法だ。grill-meは、開発者が設計上の意思決定を一つずつ積み上げていくための対話型スキルで、Claude Codeのスキルディレクトリに配置するだけで利用できる。特徴は「一度に一つずつ質問を投げかける」点にある。Plan modeのように最初に全体プランが提示されるのではなく、理由付きの推奨案と対抗案がセットで示され、開発者が自分のペースで選択を重ねていく。

実際に竹内氏が個人向けサブスクリプション管理アプリの開発で試したところ、設計フェーズでは約20問の質問に約40分を要した。一見すると時間がかかる手法だが、竹内氏は「コードが発散して直す時間より短い」と捉える。grill-meで決定した内容はすべてADRとして文書化され、以後の実装やデザイン変更の際に参照される。この運用により、過去の決定との整合性を都度確認しながら開発を進められるようになったという。

注目すべきは、ADRが単なる「文書」ではなく、デザイン面にも直接影響を及ぼす「基準」として機能した点だ。認証方式にSupabase AuthのMagic Link方式を採用する決定をADRに記録したところ、ログイン画面のデザインではパスワード入力欄が省略され、ボタンのラベルも「ログイン」ではなく「ログインリンクを送信」に変更された。さらに新規登録と既存ログインのタブ分けも不要となり、デザインツール「Claude Design」に渡す段階では「要件を考えるフェーズをスキップして、デザインの判断に集中できた」という。

一方で、竹内氏はADRの運用にも工夫を加えている。「ドキュメントは書いた瞬間から腐り始める」との格言通り、意思決定の記録を放置すれば陳腐化は避けられない。そこで同氏が自作したのが、最新の決定のみを「latest/」ディレクトリに置き、過去の決定は「archive/」に退避させる「adr-managerスキル」だ。このスキルは、修正依頼を受けた際に「意思決定の変更」か「単なる表現の修正」かをAIが判断補助テーブルを用いて分類し、不要なアーカイブの増加を防ぐ仕組みを持つ。

竹内氏の提案は、Claude CodeのPlan modeを全否定するものではない。あくまで「自分にとって有用性を感じたのがこちらだった」という立場であり、「なんとなく承認してしまう」「コードベースがブレてきた」と感じる開発者に向けた選択肢の提示だ。同氏は「基準があれば、実装力の高いモデルはそれに沿って走り切ってくれる。基準がなければ、同じ実装力が逆方向に働いてコードベースを発散させる」と総括している。

なお、Anthropicが提供するClaudeの無料プランでは、2026年6月時点で利用可能なモデルは「Sonnet 4.6」と「Haiku 4.5」の2種類に限られ、最上位の「Opus 4.8」は有料プラン専用となっている。Claude Code自体も無料アカウントでは利用できないが、チャットボット上でコーディング関連の質問を行うことは可能だ。