Donald Trump米大統領は米国時間6月2日、新たな大統領令に署名した。OpenAIやAnthropicなどのAI開発企業に対し、高度なAIモデルを提供する前に、サイバーセキュリティ、機密保持、「内部者リスク」、知的財産保護の観点から政府に提出し、審査を受けるよう求めるものだ。
しかし、この大統領令が明確に示しているように、AI企業には実質的に何かを行う義務はない。
新モデル公開の30日前にAI企業からモデルを受け取り審査するプロセスの創設を命じる項目の末尾には、こう記されている。「本項のいかなる内容も、フロンティアモデルを含む新たなAIモデルの開発、公開、リリース、配布について、政府による義務的なライセンス、事前承認、許可要件を創設する権限を与えるものと解釈してはならない」
ホワイトハウスの担当者は、コメント要請にすぐには応じなかった。
フロンティアモデルとは、Anthropicの「Mythos」のように、重大なセキュリティリスクをもたらす可能性がある最先端のAIモデルを指す。同社はサイバーセキュリティ上の懸念から、Mythosの一般公開を見送っている。米国のAI企業は、AIモデルの訓練と公開をめぐる競争のただ中にあり、とりわけ中国企業との競争が激しさを増している。
一方、新モデルの公開サイクルが加速する中、一般公開前に十分なテストや規制が行われていないのではないかとの懸念が高まっている。特に、人間社会への影響や、ハッキングツールとして使われる可能性が問題視されている。
この大統領令には、国防総省や米財務省などの政府機関に対し、今後30日間でサイバーセキュリティ防御を強化するよう求める規定も含まれている。
今後60日間で、国土安全保障省や国家安全保障局(NSA)などの機関は、AIモデルを評価するための枠組みを策定することになっている。ただし、企業にモデル提出の義務はない。
監督している「体裁」なのか
6月2日の大統領令署名の2週間前から、これに近い大統領による措置が予想されていた。ただし、最終版には注目すべき変更がいくつか盛り込まれた。米CNNによると、当初の草案では審査期間を30日ではなく90日とする案が示されていた。しかし、Anthropicなど同大統領令の策定に関与したAI企業が、これに反発したと報じられている。
CNNはまた、AI企業が自社のAIモデルを政府に提供することに関連して、米商務省の国立標準技術研究所(NIST)が5月に出した発表がウェブサイトから消えているとも報じている。
AI企業に対する執行規定や義務的要件がないことから、この大統領令への反応は控えめなものにとどまった。
AI安全性を専門とする非営利団体Future of Life InstituteのCEO兼プレジデントであるAnthony Aguirre氏は、米CNETへの電子メールで、「任意の枠組みだけでは不十分だ」と述べた。「最も強力なAIシステムについては、政府による義務的な公開前審査プロセスが必要だ。許容できない国家安全保障上のリスクをもたらすシステムについて、政府が公開を阻止できるようにする必要がある」
この大統領令では、政府がAIモデルへの早期アクセスを得て重大な問題を見つけた場合にどうなるのかが明確にされていない。
コーネル大学でコンピューターサイエンスの助教授を務めるJohn Thickstun氏は米CNETに対し、この点が明確でないため、大統領令によって何が実現するのかを理解しにくいと語った。
Thickstun氏は、「これらの疑問に対してより明確な回答がない限り、私の見解では、監視しているような体裁を作りつつも、AIガバナンスに対する現政権の静観姿勢を大筋で継続するものと受け止めている」と述べた。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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