サブスクリプションサービスとAI利用の拡大が交錯するなか、Googleが個人向け最上位プラン「Google AI Pro」の価値を大幅に引き上げた。5月19日、月額2900円の同プランに、動画配信の「YouTube Premium Lite」(月額780円相当)が追加で提供されることが発表された。単なる値下げではなく、AI、ストレージ、スマートホーム、そして動画広告の除去という複数領域を一つの料金でカバーする構成は、利用者にとって「最適解」となり得る水準だ。
同プランの内訳を精査すると、その割安感はさらに際立つ。YouTube Premium Liteに加え、家庭向け監視カメラサービス「Google Home Premium」のStandardプラン(月額1000円相当)も利用可能。さらに、5TBのクラウドストレージが付与される点も見逃せない。Googleの通常料金では100GBで月額290円であり、単純換算すれば5TB分の価値は月額1万円を超える。加えて、情報整理AIとして高い評価を得る「NotebookLM」の有料プランにもアクセスできる。これらを全て含んで月額2900円という設計は、Google系サービスを日常的に使うユーザーにとって、他のAIサブスクリプションやストレージ契約を個別に結ぶよりも大幅なコスト削減につながる。
支払い方法は月額制に加え、年額制も選択可能だ。年額で支払った場合の総額は2万9000円となり、月額払いを12カ月続けた場合と比較して5800円(2カ月分)安くなる。まずは月額で試用し、本格的に使い込むと判断した段階で年額へ切り替える戦略が現実的だ。
一方で、Googleは個人向けサービスの強化と並行して、広告事業におけるAIの実装も加速させている。5月25日に開催された年次イベント「Google Marketing Live」では、Geminiを中核に据えた6つの新たな広告フォーマットが発表された。ユーザーの検索意図に応じて商品説明を自動生成する「Conversational Discovery ads」、AI検索結果内にネイティブ決済を埋め込む「Universal Commerce Protocol」対応のチェックアウト機能、さらにはユーザーの検索履歴に基づいてGeminiが取引条件を構築する「Promotional Bundling」など、検索と広告の境界を溶かすような機能が並ぶ。
これらの動きは、ChatGPTが約9億人、Meta AIが約10億人のユーザーを抱えるなか、AIによる検索行動の変化がGoogleの広告収益を脅かすという「AIディスインターメディエーション(中抜き)リスク」への対抗策と位置づけられる。Google検索のユーザー数は30億人超と依然として巨大だが、投資家の懸念は根強い。UBSのアナリストがイベント後に伝えたところによると、Googleの幹部は「AI OverviewsまたはAI Modeを利用したユーザーの75%が、通常の検索より迅速に意思決定できた」というデータを示したという。UBSはこの数字を「AI経由のクリックは商業的意図が強く、広告費用対効果(ROAS)が高い」との見方を裏付ける材料と評価した。
UBSはこの見通しに基づき、検索とYouTubeを合わせた広告収入が2027年に3410億ドル、2028年に3790億ドルに達すると予測。いずれも市場コンセンサス(3390億ドル、3750億ドル)を上回る水準だ。検索セグメント単体の総収入についても、2026年2600億ドル、2027年2930億ドル、2028年3270億ドルと強気の見方を示している。
広告効果の測定領域でも、Googleは攻勢を強めている。「Google Analytics 360」上で、自社プラットフォームに加えてMeta、TikTok、Pinterestといった競合ソーシャルメディア上の広告パフォーマンスを横断分析できる機能を追加した。UBSはこの一手を「ソーシャルメディア予算を奪取するための攻撃的な一手」と表現し、「Metaにもリスクをもたらすが、より小規模なプラットフォームへの影響が大きい」と指摘する。
広告主向けには、Geminiを活用した「Ask Advisor」エージェントも導入された。自然言語での質問を通じて、Google広告、Google Analytics、Merchant Center、Google Marketing Platformにまたがるキャンペーン最適化や地域インサイトの取得が可能になる。YouTubeにおいても、生成AIを活用した動画内広告のターゲティング精度向上、クリエイターコンテンツへの広告機会拡大、2クリック購入機能など、収益化の選択肢が拡充された。
個人利用の観点では「Google AI Pro」、広告主の観点では「Gemini搭載広告」という二正面作戦により、GoogleはAI時代の収益基盤を再定義しようとしている。iPhoneユーザーを含む一般消費者にとっては、複数のサブスクリプションを一本化できる「Google AI Pro」が、コストと利便性の両面で突出した選択肢となる可能性が高い。