AGIを道具として人体科学や創薬の根本的な解明と目指す

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Google DeepMind共同創業者のデミス・ハサビス氏は、AIを用いたタンパク質構造予測「AlphaFold」に続き、次なる科学的ブレークスルーとして「仮想細胞」の構築を進めている。2030年頃と予測される汎用人工知能(AGI)の到達を見据え、AIを究極の道具として人体科学や創薬の根本的な解明を目指す同氏の構想と、次世代AIがもたらす科学的発見の未来について解説する。

(画像:World Economic Forum 2026)
AlphaFoldがタンパク質構造予測の次に目指す仮想細胞とは?
Google DeepMind共同創業者であるデミス・ハサビス氏が指揮するAIによる科学的探究は、タンパク質構造予測AI「AlphaFold」の成功を経て、次なる目標である「仮想細胞(バーチャルセル)」の構築へと移行している。AlphaFoldは、生物学における50年来の未解決問題であったアミノ酸配列からのタンパク質立体構造の予測を達成し、ハサビス氏の2024年ノーベル化学賞受賞に貢献した。同システムは世界中の300万人以上の研究者に利用されている。製薬業界においても、今後発見される新薬の探求プロセスにおいてAlphaFoldが活用される段階に入っている。

【図版付き記事はこちら】Google DeepMind デミス・ハサビスがAlfaFoldの次に目指す「仮想細胞」とは?(図版:ビジネス+IT)
ディープマインドからスピンオフした新薬開発企業Isomorphic Labsが次の10年をかけて挑むのが、細胞全体をコンピューター上でシミュレーションする仮想細胞の実現である。仮想細胞が完成すれば、特定の化合物を投与した際の細胞の動的な反応を、物理的な実験を行うことなく計算のみで高精度に予測できる。これにより、従来の実験手法に依存していた創薬や医学研究におけるプロセスが根本から変わる。膨大な探索手順を省略し、大量の合成データを生成することで、実際の細胞挙動を予測する他の生化学モデルの訓練も容易になる。
実現に向けた最初のアプローチとして、同社は細胞核という比較的独立したサブシステムのシミュレーションから着手している。これは入力と出力を合理的に近似できる適度な複雑さを持つためである。生きた動的な細胞を損傷なくナノメートル解像度で画像化する技術のデータ不足という課題が存在するが、ハードウェア主導の画像化技術の進化と、優れた学習可能なシミュレーターの構築という二つの道筋を統合し、細胞生物学を計算主体の分野へと転換させる。完全な仮想細胞の実現には、今後約10年を見込んでいる。
デミズ・ハサビスが目指すAGIによる「ルートノード問題」解明
ハサビス氏が掲げるディープマインドのミッションは、第一段階として知能そのものを解明して汎用人工知能(AGI)を構築し、第二段階としてそれを用いて科学分野の「ルートノード問題」を解決することである。ルートノード問題とは、その謎を解明することで無数の科学的発見が枝分かれして広がる根本的な難問を指す。タンパク質の立体構造予測はこのルートノード問題の典型例であり、同氏は次に医学や人体科学における課題をAGIによって解決することを目指している。

【図版付き記事はこちら】デミス・ハサビスがAGIで挑む、科学の「ルードノード問題」とは?(図版:ビジネス+IT)
AIが真の科学者となるための指標として、同氏は「アインシュタイン・テスト」を提唱する。これは、1901年までの知識を与えられたAIシステムが、1905年にアインシュタインが発表した特殊相対性理論を自力で導き出せるかを問うものである。現在のAIは既知の問題を解くことには優れているが、既存のパターン認識を超えて、誰も考えたことのない新しい問いを自ら作り出す能力には欠けている。このテストをクリアし、自律的な類推的推論が可能になった時、AIは全く新しい科学的発明を行う段階に到達する。
また、将来のAGI時代におけるシステムアーキテクチャ設計について、言語能力に長けた「Gemini」のような巨大な汎用AIモデルにすべての専門知識を統合することは非効率であると言及している。汎用モデルに専門データを過剰に学習させると、本来の言語処理能力を阻害する。そのため、汎用AIがAlphaFoldのような専門特化型AIを外部の独立したツールとして必要に応じて呼び出すシステム設計を採用する。同氏はAGIが2030年頃に実現するというタイムラインを計画に組み込んでおり、医学や物質科学といった専門分野とAIを掛け合わせた技術が、今後の人体科学の解明と人類の課題解決において最大の価値を生み出すと断言している。
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