MetaのAIグラス日本発売はなぜ“いま”なのか 「視力補正」と「続ける意思」 – Impress Watch

AIグラスでトップシェアを持つMetaが、ついに日本参入を果たした。

価格は7万円台からで、日本では「Ray-Ban Meta(Gen 2)」、度付きレンズ対応の「Ray-Ban Meta Optics(Gen 2)」、「Oakley Meta HSTN(ハウストン)」、「Oakley Meta Vanguard(ヴァンガード)」の4製品がラインナップされる。発売は5月21日からで、価格は73,700円~96,580円。

価格やスペックなどの詳細はすでに記事掲載されているので、そちらをご覧いただきたい。

日本参入に際し、米・MetaでVP of Wearablesを担当するAlex Himmel氏にメールインタビューを行なった。その内容をお伝えしよう。

視力補正重視の「Ray-Ban Meta Optics」を待って日本参入

――このタイミングで日本市場に参入した理由は?

Himmel氏(以下敬称略):日本では、視力矯正用のメガネをかける人は多いですが、サングラスをかける人はあまりいません。

私たちが(日本への参入を)待っていた理由の一つは、処方箋(度付き)レンズを優先するメガネ市場に向けて素晴らしい製品を用意できるよう、Ray-Ban Meta Opticsの発売を待っていたからです。

Ray-Ban Meta Skyler(Gen 2)Ray-Ban Meta Wayfarer(Gen 2)

日本はAIグラスにとって最もエキサイティングな市場の一つです。大人の大半が日常的にメガネを着用しており、アイウェアは日常生活に深く浸透しています。私たちは、人々がすでに知っていて愛用している形状(フォームファクター)にAI機能を統合できることが、非常に大きな市場を持っていると考えています。

――「Ray-Ban Meta Optics」は、グローバルでは3月末に発表されたばかりの製品です。開発した理由を教えてください。

サングラスではなく、日常的にかけるメガネに近いRay-Ban Meta Optics。日本市場ではこの製品が重要と判断されたようだ

Himmel:何十億人もの人々が視力矯正のためにメガネやコンタクトレンズを着用しており、多くのRay-BanおよびOakley MetaユーザーがAIグラスに度付きレンズを追加しています。実際に、MetaのAIグラス全体で、度付きレンズや調光レンズ(トランジションズ)を使用している人々のエンゲージメントが最も高くなっています。

視力矯正や一日中着用するアイウェアを必要とする大規模なグループにより良いサービスを提供するため、Metaがこれまで設計した中で最も快適なAIグラスを展開しています。

Ray-Ban Meta Opticsは、より幅広い処方箋(度数)に対応しています。交換可能なノーズパッド、過伸展(オーバーエクステンション)ヒンジ、調整可能なテンプルチップにより、快適性を実現しています。

カメラ搭載での「社会受容性」問題

――MetaのAIグラスはカメラを搭載しており、主観視点での撮影ができることが魅力です。一方、撮影することに対する懸念もあります。プライバシーを含めた社会受容性の問題をどう考えていますか?

Himmel:MetaのメガネにはキャプチャLEDライト(撮影時に点灯するLED)があり、ユーザーがギャラリーやストリーミング用に写真や動画を撮影するたびに点灯するため、デバイスが録画中であることが明確にわかります。

カメラ撮影時にはLEDライトが点灯

また、撮影を開始するには、周囲から見える形でグラスのボタンを押すか、「Hey Meta、写真/動画を撮って」と発声する必要があり、これはスマートフォンよりも明白なジェスチャーです。

Metaの利用規約には、ユーザーが適用されるすべての法律を遵守し、Ray-Ban Metaスマートグラスを安全で、周囲に配慮した方法で使用する責任があることが明確に記載されています。

他のいかなる録画デバイスと同様に、ハラスメント、プライバシー権の侵害、機密情報の撮影など、有害な行為にこれらを使用すべきではありません。

カメラ、スマートフォン、AIグラスなど、いかなるテクノロジーであっても、人々が責任ある行動をとるべきだという基本的な期待は同じです。私たちは、周囲の人々に配慮し、プライベートな空間で写真や動画を撮影しないよう助言するなど、スマートグラスの適切な使用方法をまとめたガイドラインを作成しています。

この点については事実関係と筆者の考えを補足しておきたい。

MetaのAIグラスでは、撮影時に点灯するLEDをオフにする機能がない。LED自体をテープなどで塞いだり隠したりしても照度センサーが働き、撮影ができなくなる仕組みになっている。

しかし「LEDが点灯したら撮影中である」ということはまだ周知されておらず、LEDでわかるとは言っても「メガネのように一般的な機器で撮影できる」ことの認知が進んでいない。試験の場など、撮影禁止の場所に持ち込むことはもちろん許されない。

撮影自体の持つリスクは、スマートフォンや他のカメラより大きいわけではないが、社会的受容性の観点で、課題は存在する。

次の質問で述べる「AI連携」では、カメラ=センサーの存在が大きいのだが、社会の中で「カメラがついた機器をどう扱うか」は、さらなる議論と認識のアップデートが必要になるだろう。

AI連携で本領発揮、翻訳機能も後日提供

――Metaの製品はAI連携が重要です。その強化と価値について、どのように考えていますか?

Himmel:私たちは、すべての人に向けたパーソナル・スーパーインテリジェンスの構築を目指しています。つまり、あなたの目標を知り、あなたの状況を理解し、あなたが注力していることを成し遂げるのを助けてくれるAIです。

AIグラスは、あなたが見ているものを見て、あなたが聞いているものを聞くことができ、ポケットやバッグから取り出す必要なくすぐに利用できる、理想的なフォームファクターです。

「見ているもの」をMeta AIが知らせる

これは、AIが単に質問に答えるだけの「受動的」なものから、会話のフォローアップを支援し、栄養状態を記録し、言語をリアルタイムで翻訳し、最終的にはあなたが尋ねる前に役立つ情報を提示するような「自発的」なものになることを意味します。

たとえば、「Hey Meta、お昼にサーモンポキボウルを食べたよ」と言うか、メガネを食事に向けるだけで、Meta AIはそれを記録し、カロリーや栄養素を分析します。

さらに、情報が蓄積され時間が経つにつれて、食習慣に関するフィードバックを提供してくれます。スマートフォンを取り出したり、アプリを開いたりする必要はありません。

これこそ私たちが構築している「常にそこにあるアシスタンス」であり、完全にハンズフリーで生活に自然に溶け込み、目標に向けて順調に進むのを助けてくれるAIなのです。

――翻訳機能についてはどうでしょうか。非常に重要な存在だと考えています。

Himmel:日本におけるAIグラスへの関心に関するMetaの調査によると、カメラ機能やAIに対する関心も当然ありますが、ライブ翻訳やテキスト翻訳などの翻訳機能に特に注目が集まっています。翻訳機能は、すでに発売されている市場において最も高く評価されている機能の一つです。

日本でのライブ翻訳機能は発売時には利用できませんが、20言語の翻訳サポートが間もなく利用可能になる予定です。

見ているものを問いかけての翻訳に対応する「続ける意思」が市場を構築

――複数の企業で、AIグラスを開発・製品化する動きが加速しています。競合状況をどう考えていますか?

Himmel:AIグラスへの関心が高まっていることを嬉しく思います。これは、私たちが長年構築してきたカテゴリーが正しかったことを証明するものです。競争は健全なものであり、最終的には消費者に利益をもたらします。

AIグラス市場に参入する企業の成功は、新しいものを発明しようとする彼らのコミットメントにかかっています。

OakleyブランドのMeta AIグラス

私たちはこれまで多くの企業がこの分野への投資を始め、そして止めるのを見てきました。

私たちがこれまで成功を収めてきた背後にある決定的な要因は「やり続ける」という私たちの意志です。それは、マーク(・ザッカーバーグCEO)がこの取り組みに注ぐ信念とコミットメントから来ています。Ray-Ban Metaスマートグラスの成功でそれが実証されているのをご覧いただけたと思いますし、私たちは他社がそれに続くことができるよう、スマートグラスにおける長年の普及障壁を打ち破る製品を作り上げたことを誇りに思っています。

私たちは、人々が実際にMetaの製品をどのように使用しているかから機能するものを学び、継続的に改善しながら、複数世代の製品を通じてこのカテゴリーを繰り返し進化させてきました。その先行者利益は重要です。

また、EssilorLuxotticaやRay-Ban、Oakleyブランドとのパートナーシップにより、私たちは人々にスタイルを妥協しなくても済むようにしています。人々が毎日、一日中かけるメガネであり、引き出しの中にしまわれたままになるガジェットではないのです。

Oakley Meta Vanguard

Instagram、Messenger、そして人々がすでに毎日使っているサービスとのシームレスな接続もあります。日本のユーザーにも広く利用されているプラットフォームであるInstagramに、写真や動画をシームレスに投稿することができます。

――スマートフォン・プラットフォーマーとの関係を教えてください。今後は彼らも競合となる可能性があります。

Himmel:私たちは、現在スマートフォンで行なわれているタスクの多くが、ウェアラブルデバイスが担うようになると信じています。 これは、かつて人々がノートパソコンを使っていたタスクの多くをスマートフォンが担うようになったのと同じです。人々は今でもノートパソコンを購入しますが、より便利なときには別のタスクでスマートフォンを使用しています。

同様に、ポケットからスマートフォンを取り出し、ロックを解除し、必要なアプリを開くよりも、ウェアラブルの方が便利な場合があると考えています。そして、ノートパソコンにはできない新しいユースケースをスマートフォンがもたらしたように、ウェアラブルやARグラスはスマートフォンにはできない新しいユースケースをもたらすでしょう。

充電はケース経由で行なう。ケースはUSBで給電

さらに、私たちはMeta Wearables Device Access Toolkitをリリースしました。これにより、iOSやAndroidの開発者は、私たちが拡大しているAIグラスポートフォリオのカメラとオーディオ機能にアクセスし始め、モバイルアプリの可能性を広げることができます。

――アメリカでは、ディスプレイ搭載の「Meta Ray-Ban Display」を発売しています。こちらの、日本を含む国際展開についてはどうなっていますか?

Himmel:Meta Ray-Ban Displayは、私たちが目指すAIグラスの未来に向けた重要な一歩です。しかし現時点では、日本を含む国際的な展開の時期に関して共有できる情報はありません。

ディスプレイ搭載のMeta Ray-Ban Display。先日、アプリ開発用の基盤も公開された。ただし、アメリカ以外への展開時期については、今回も新情報はない