Google DeepMindのデミス・ハサビス氏、「AIは特異点の入口」と発言

デミス・ハサビス氏。GoogleはAIを生産性向上にとどまらず、科学研究を支える基盤技術として打ち出した。写真=Google

Google DeepMindのデミス・ハサビス氏は19日(現地時間)、Google I/O 2026の基調講演で、現在をAI時代の「特異点の入口」と表現した。Googleは同イベントで、AGI(汎用人工知能)の長期構想とあわせて、科学研究向けAI「Gemini for Science」も紹介しており、AIを生産性向上の道具にとどまらない基盤技術として位置付ける姿勢を鮮明にした。

The Vergeによると、ハサビス氏は基調講演の終盤で「後から振り返れば、今は特異点の入口に立っていた時期だと見えるかもしれない」と発言した。あわせて、現在を「人類にとって重要な瞬間」とも述べた。

今回の発言が注目を集めたのは、Googleが直近で発表した研究や製品を、AGIの長期ビジョンと結び付けて語ったためだ。ハサビス氏は講演で、最新の研究と製品が「世界にとってのAGIの可能性を広げる」と強調した。

同氏は基調講演に先立ち、科学研究支援向けAIツール群「Gemini for Science」も披露した。これはGoogle LabsとGoogle Antigravityを通じて提供する実験・研究向け機能で構成されるという。Googleはこれを通じ、AIの活用領域を検索や生産性向上から、科学研究へと広げる考えを示した。

ハサビス氏は、AIが科学研究の進め方を根本から変え得ると主張した。長期的には「あらゆる病気の克服を目標に、新薬開発のあり方を再構想してほしい」と述べ、AIを単なる業務効率化のツールではなく、科学的発見と課題解決を支える中核基盤として位置付けた。

もっとも、ハサビス氏が使う「特異点」の意味合いは、一般に知られるシンギュラリティーの概念とはやや異なる。数カ月前のBloombergのインタビューでは、同氏は特異点について「完全なAGIの到達を意味する別の言い方だ」と説明していた。そのうえで、レイ・カーツワイル氏やバーナー・ヴィンジ氏らが用いてきた従来のシンギュラリティー概念とは異なるとの認識も示していた。

同インタビューでハサビス氏は、現在の技術水準はまだその段階には達していないとの見方も示している。AGIの実現時期については、2030年までに到達する可能性を50%程度とする従来の見通しを維持しつつ、「まだそこからは程遠い」と語っていた。

このため、今回の発言は、GoogleがAGIの到来を公式に宣言したというより、足元の研究成果や製品をより大きな長期ビジョンの中で位置付ける狙いがあるとみられる。実際、ハサビス氏は講演でAIを、人間の創造性や問題解決能力を高める「amplifier(増幅器)」とも表現した。

さらに同氏は、AIが科学的発見と技術進歩の新たな黄金期を切り開き、最終的には世界中の人々の生活改善につながる可能性があると強調した。

Googleは今回のイベントで、科学研究向けAIを前面に押し出した。AI競争の主戦場を、検索や生産性向上、消費者向けサービスだけでなく、研究や発見の領域へも広げる構えを示した格好だ。

こうした流れを踏まえると、ハサビス氏の「特異点の入口」という発言は、GoogleがAGIを巡る議論を製品発表と結び付け始めたことを示すサインとも受け取れる。一方で、同氏自身は最近までAGIの到達はなお先だと繰り返しており、今後どの研究成果や製品でその構想を裏付けていくのかが焦点となりそうだ。