イーロン・マスクは、OpenAIとその経営陣であるサム・アルトマン、グレッグ・ブロックマンを相手取った訴訟で大きな敗北を喫した。連邦陪審と裁判官が、マスクはOpenAIに対する訴えを起こすまでに時間をかけすぎたと判断したためだ。
陪審員が示したのは、米連邦地裁判事イヴォンヌ・ゴンザレス・ロジャースに送られた拘束力のない勧告だった。それでも判事は即座にこれを自身の判断として受け入れ、正式な判断とした。
マスク側の主任訴訟弁護士スティーブン・モロは裁判官に対し、「わたしたちは控訴する意向です」と述べた。
マスクの別の弁護士であるマーク・トベロフは、法廷を出ながら報道陣にひと言だけコメントした。「控訴だ」。その後、彼は今回の評決を米国独立戦争におけるチャールストン包囲戦やバンカーヒルの戦いになぞらえた。「これらは米国側が大敗した戦いの例です。しかし、最終的に戦争に勝ったのは誰でしょうか?」とトベロフは語る。「戦いはまだ終わっていません」
評決が読み上げられたあと、OpenAI側の弁護士たちは法廷内で抱き合って喜んだ。同社の主任訴訟代理人ウィリアム・サヴィットは報道陣に対し、裁判で提示された「圧倒的」な証拠によって陪審は迅速に判断できたと語った。「マスク氏の訴訟が、競合相手による“事後的なつくり話”だったことを示した証拠は圧倒的でした」
「明確さ」をもたらすための裁判
裁判を通じてゴンザレス・ロジャース判事は、マスクがOpenAIと争う動機について疑問を呈していた。しかし彼女は18日、この3週間にわたる“世界的な公開劇”には意味があったとの見解を示した。
「裁判で争われるべき問題で、重要なものだと思いました。……明確さをもたらすために裁判を開く必要があったのです」と彼女は双方の弁護士に語った。「陪審の判断を裏づける証拠は十分にありました。だからこそ、わたしは陪審の判断を受け入れ、その場で却下する用意ができていたのです」
9人の陪審員団は18日、カリフォルニア州オークランドの法廷で、2時間足らずの評議を経て全会一致の評決を下した。陪審員たちは、マスクが2024年に訴訟を起こすよりはるか以前に時効が成立していたと認定した。
マスクは、アルトマンとブロックマンがマイクロソフトからの資金援助を受け、3人とそのほかの創業メンバーが約11年前に非営利組織として設立した際に想定されていた範囲を超えて、OpenAIを巨大企業へと変貌させたと陪審に納得させようとしていた。
陪審は提訴が遅すぎたと判断した。そのため、慈善信託違反、不当利得、さらにマイクロソフトに対する幇助など、マスク側の3つの主張については実質的な判断を下さなかった。いわば“手続き上の問題”で敗れたことで、マスクには、慈善団体が乗っ取られたという自身の核心的な主張について、“陪審側が否定していない”と訴え続ける余地が残されたとも言える。
しかし、OpenAI側の弁護士のサヴィットは18日、この見方に異議を唱えた。
「これは単なる技術的判断ではなく、実質的な判断です」と彼は語った。「訴えを起こすのが遅すぎたのです。そして、それを市場で競争できない競合相手への武器にするため、あえて温存していたということです。わたしたちはこの結果を非常に喜んでいます」
マイクロソフトの広報担当アレックス・ハウレクは声明で、「本件に関する事実と時系列は以前から明確でした」と述べ、同社は「人工知能(AI)を前進・拡大させるためのOpenAIとの協力に引き続き取り組んでいきます」とした。
OpenAIにも残った“傷跡”
マスクはXへの投稿で、ゴンザレス・ロジャース判事を「陪審を“隠れみの”として利用した活動家判事」と呼び、「カレンダー上の技術的問題」で判断を下したと非難した。今回の判決は正式な法的先例を生むものではないが、マスクは「数年間“略奪”を隠し通せば慈善団体を自由に食い物にしていいという“免許”を彼女は与えた」と主張した。