ChatGPT広告 が日本上陸。グローバル展開を急ぐ王者OpenAIの狙い | DIGIDAY[日本版]

記事のポイント

OpenAIがChatGPT広告のテスト地域を日本や英国などへ拡大し、広告事業のグローバル展開を加速させている。

広告マネージャー公開や計測基盤整備など、この数週間で広告関連機能を急速に拡充している。

会話データ活用による高い広告価値が期待される一方、プライバシーや規制対応とのバランスが大きな課題となっている。

OpenAIの広告事業がグローバル展開へ踏み出した。

今後数週間のうちに、同社はAIチャットボットChatGPTにおける広告テストを、英国、ブラジル、日本、韓国、メキシコで開始する。これらの国々は、広告主がChatGPT内で広告を購入できる市場として、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに加わることになる。ただし、すべての市場が同等というわけではない。

たとえば米国では、機能面がより高度化しており、広告主はログイン済みユーザーだけでなく、ログアウト状態のユーザーにもリーチできる。さらに5月の初めに、OpenAIがセルフサーブ型広告マネージャーへのアクセスを米国内のあらゆる規模の広告主へ開放したことで、広告主自身が運用できるようになった。なお、一部制限カテゴリは除外されている。

OpenAIのグローバル広告ソリューション責任者であるデイブ・デュガン氏は、次のように述べている。

「より会話的で意図に基づいた環境でユーザーにリーチしたいと考えている企業からの強い関心を受け、ChatGPT広告パイロットを追加地域へ拡大できることをうれしく思う。我々は慎重に拡大を進めながら、各地域においてユーザーと広告主双方にとって何がもっとも機能するのかを学んでいく。同時に、回答の独立性、プライバシー、ユーザーコントロールといった、我々にとってもっとも重要な原則に基づき続ける」。

慎重なテストから本格展開へ

今回の地域拡大は、OpenAIが矢継ぎ早に進めている施策の最新動向である。過去6週間だけでも、同社は広告責任者を採用し、アドテク提携を発表し、計測インフラを立ち上げ、価格を引き下げ、広告マネージャーを公開した。2月にテストを開始してから現在に至るまでのどこかの時点で、慎重だった試験運用は、より明確な戦略的展開へ変わったようだ。

ジェリーフィッシュ(Jellyfish)のメディアアクティベーション部門チーフソリューションオフィサーであるジャイ・アミン氏は、「彼らはいま、とにかくできるだけ多くのデータを集めたいのだと思う。エンゲージメント、何が機能し何が機能しないのか、実際にクリックされるものは何か、されないものは何か、そしてどのようなコンテンツを優先的に配信できるのかを把握したいのだろう」と語った。

その兆候は以前から見えていた。Digidayは4月、OpenAIが英国と日本で広告展開を計画している可能性が高いと報じていた。ロンドンと東京の両方で、リージョナルクライアントパートナーおよびカスタマーサクセスマネジャーの求人が出ていたためである。

さらに5月、Digidayは同社のコンバージョンピクセルのコード更新についても報じた。そこには、欧州のプライバシー規制対応で一般的に利用される同意管理システムが追加されていた。

エンダース・アナリシス(Enders Analysis)のシニアリサーチアナリストであるクレア・ホルボウスキー氏は、「特に英国、日本、ブラジルはオンライン広告市場の活性度が高く、OpenAIにとってより収益性の高い機会となる。加えて、ChatGPTの利用者規模も大きい」と指摘する。

英国市場で高まる「ChatGPT広告」への期待

これはメディア企業にとって実績ある定石だ。まずはオーディエンスが強く、広告費を呼び込みやすい市場へ集中するのである。英国のような市場では、そのロジックに異論を唱えるのは難しい。

アドセナ(Adthena)のCMOであるアシュリー・フレッチャー氏によると、4月末に開催されたブライトンSEO(BrightonSEO)イベントで約150人の経営幹部に向け基調講演を行った際、「ChatGPT広告への準備を進めたい人はいるか」と尋ねたところ、全員が手を挙げたという。「つまり、英国市場には確実に需要が存在している」と同氏は語った。

もっとも、需要は不安定なものでもある。市場の気分や物語性によって左右されやすい。重要なのは、広告がChatGPTという体験を定義してしまう前に、ユーザー側に利用習慣が根付くかどうかだ。もしそれが実現すれば、ChatGPTは将来的に広告業界を支配する次の巨大勢力のひとつになる可能性がある。

現時点では、その兆候は好調だ。アドクラリティ(AdClarity)のデータによると、2月9日にChatGPT広告パイロットが開始されて以降、月間平均広告支出は約1億900万ドル(約159億円)に達している。さらに、アドクラリティを保有するビーアイ・サイエンス(BIScience)の共同創業者兼GMであるアサフ・トヴァル氏は、「今後は5億ドル(約730億円)以上に達する可能性が高い」と述べた。

「収益拡大」と「信頼維持」の危うい綱渡り

開始からまだ3カ月足らずの広告事業としては好調な数字だが、それでもOpenAIが2026年末までに到達すると予測している25億ドル(約3650億円)の目標には大きく届かない。だからこそ同社は、より多くの市場で、より多くの広告主を、できるだけ早く獲得する必要があるというわけだ。

とはいえ、それは言うほど簡単ではない。もっとも速くスケールできる方法は、同時にもっともリスクが高い方法でもある。

ChatGPT上の会話は、Googleやメタ(Meta)が広告事業を築いてきた環境より、はるかに親密だ。人々は医療上の意思決定、人間関係の悩み、経済的不安についてまでChatGPTに相談している。そして、その会話を商業的価値のあるものにするデータこそが、同時に、活用を誤れば企業の評判や規制面で大きなリスクとなるデータでもある。

ターゲティングやパーソナライズを急ぎすぎれば、サービス全体を支える信頼は崩壊する。一方で慎重になりすぎれば、収益ギャップは拡大していく。その両者のあいだに、明確な正解は存在しない。OpenAIは今後も、規制当局の監視と広告主からの期待というプレッシャーのなかで、そのバランス調整を公の場で続けていかなければならない。

エントロピー・コンサルティング(Entropy Consulting)創業者のアレックス・テイト氏は、「ChatGPTのような会話型環境では、広告主が成果を実証できなければ、広告予算はついてこない」と指摘する。さらに「最終的には、OpenAIが規制当局に受け入れられ、かつ広告主が効果を信頼できる広告プロダクトを構築できるかどうかにかかっている」と述べた。

[原文:‘Expand thoughtfully’: OpenAI offers ChatGPT ads to new markets including the U.K., Brazil and Japan]

Krystal Scanlon(翻訳・編集:的野裕子)