グーグルはGoogle I/Oにおける大型リリースを前に、静かにAI顧客を増やしている | Business Insider Japan

Vercel CEO Guillermo RauchVercelのギレルモ・ラウチCEOVercel

5月に開催されたアンソロピック(Anthropic)の開発者カンファレンスで、私はAIスタートアップ「Vercel」のCEOであるギレルモ・ラウチ氏に遭遇した。私たちが会話を始めると、同氏が最初に名前を挙げた企業はアンソロピックではなく、グーグルだった。

ラウチ氏によれば、AI需要全体は現在、桁外れに高まっているという。その中でも特に、グーグルのモデルがVercelの顧客の間で強い需要を集めているそうだ。同氏は、AI利用量の基本単位であるトークンを追加で確保するため、グーグルの最高幹部に直接電話をかけなければならなかったエピソードまで明かしてくれた。

最近はアンソロピックやOpenAIばかりが話題を独占しているが、グーグルの「Gemini」が静かにシェアを伸ばしていると同氏は語る。その躍進の動きは、企業が単一のシステムを経由してさまざまなAIモデルに自社アプリを接続できる「Vercel AI Gateway」のデータからも見て取れる。このサービスは主に、AIスタートアップやソフトウェア企業、そしてチャットボット、コーディング支援、検索ツール、コパイロット機能などのAI機能を運用する大企業の製品開発チームによって利用されている。

VercelのAI Gatewayが処理したトークン数(トラフィック量)ベースで見ると、3月時点ではアンソロピックのモデルが首位に立っていた。しかし4月初旬、グーグルの「Gemini 3 Flash」モデルが急浮上して首位を奪い、現在もその座を維持している。しかもこれは、19日から開幕するグーグルの大規模な年次開発者会議「Google I/O」を控えた前段階での出来事だ。同カンファレンスで、グーグルはさらに高性能なAIモデルやツール、新機能群を多数発表すると見られている。

Data from Vercel's AI GatewayVercelの「AI Gateway」によるデータVercel

Gemini Flashは、フルバージョンの「Gemini 3」モデルほどの処理能力はないものの、より高速で、利用コストを低く抑えられるのが特徴だ。その特性が、Vercelの法人顧客の間で特に人気を集める理由となっている。

ラウチ氏は私に、「大企業の開発チームは、各AIラボが提供しているモデルの中で最も小さく、速く、そして安価なモデルであるGemini FlashやClaude Haiku(ハイク)を選ぶ傾向にあります」と語った。「特にGemini Flashは、ハルシネーション(AIの嘘)が少なく、ツールの実用性に優れ、高速かつ手頃な料金であるため、B2C分野で強力に採用が進んでいます」と述べた。

もちろん、AI業界における勝敗の答えは決して単純なものではない。

成功を測る指標は他にも存在し、その最たるものが「ユーザーがそのモデルにどれだけ資金を費やしたか(支出額)」という点だ。

ラウチ氏は、「どのAIラボが『勝っている』のかとよく聞かれますが、実際のビジネスの本番環境で見えている光景は、性能比較のベンチマーク順位表とはまったく異なります」と指摘する。

「AI Gatewayのデータを見れば、ユースケース(用途)ごとに異なる多様なモデルがそれぞれの領域で勝者になっていることが分かります」

トークンの利用量ベースでは、4月はグーグルが明確な勝者だった。しかし、実際の支出額(売上シェア)ベースで見ると、アンソロピックが61%のシェアを獲得して首位に立っていたという。ラウチ氏は、「安価で大量のトラフィックを処理することで勝つモデルもあれば、高価であっても品質が極めて重要な業務で選ばれるモデルもあります。それぞれが解決している問題が違うのです」と説明してくれた。

一方、OpenAIの支出シェアは、新しい「GPT-5.4」および「GPT-5.5」シリーズの投入によって、3月の4%から4月には12%へと3倍に急増した。グーグルもまた、Gemini Flashの利用拡大に伴い、支出額ベースのシェアを8%から21%へと大きく伸ばしている。

ただしラウチ氏は、「ある1カ月の局所的なデータを見ただけで、次の展開を予測することはできません」と釘を刺す。

グーグルの「Google I/O」が目と鼻の先に迫っている現時点においては、なおさらその予測は困難と言えるだろう。