AI規制の主導権は誰が握るのか?中国を含めるOpenAI、引き離すAnthropic、AI覇権の次の戦場は規制 【生成AI事件簿】米中首脳会談の裏側で浮かんだAIガバナンスの現実、2大ベンダーが24時間差で投じた対極のAI規制論(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)

【生成AI事件簿】米中首脳会談の裏側で浮かんだAIガバナンスの現実、2大ベンダーが24時間差で投じた対極のAI規制論

小林 啓倫

小林 啓倫
経営コンサルタント

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2026.5.17(日)

AI規制と中国をめぐる議論に異なる主張を出したアルトマンとアモデイ(筆者がChatGPTで生成)

 2026年5月13日、ワシントン。OpenAIのグローバル・アフェアーズ担当のバイスプレジデント、クリス・レヘインは記者団に対し、米国主導で中国も参加する国際的なAIガバナンス機関の構想を支持すると表明した。

 翌14日、AnthropicはCEOのダリオ・アモデイが主導する論文「2028: Two scenarios for global AI leadership(2028年:グローバルAIリーダーシップの2つのシナリオ)」を公開し、輸出管理の抜け穴閉鎖と「蒸留攻撃(敵対者がAPI経由で高性能AIに大量の質問を投げ、その回答を訓練データとして自前のモデルを訓練することで、元モデルの能力を不正に複製・抽出する手法)」対策を通じて「(中国に対する)12〜24カ月の優位を維持せよ」と主張した。

 両者の発信の時間差はわずか24時間。場所はいずれもワシントン。背景にあるのは、北京で同時刻に始まったドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談である。米国を代表する2社のAIベンダーが、ほぼ同じ瞬間に全く異なるAIガバナンス論を投げ込んだ事実は、いったい何を物語るのだろうか。

OpenAIが描く「IAEA型」の青写真

 まず、レヘインの発言である。Bloombergが5月13日に報じたところによれば、レヘインは記者団に対し、米英・シンガポールなど主要国のAI研究機関と米国国立標準技術研究所(NIST)傘下のCAISI(Center for AI Standards and Innovation、AI標準・革新センター)を連結する「IAEA(国際原子力機関)型」のグローバル機関の創設を支持し、「中国もメンバーに含めるべきだ」と述べた。発言は「AIはある水準では、従来型の貿易問題を超越する」という表現で締めくくられている。

 レヘインの発言は、突如降って湧いたものではない。OpenAIのCEO・サム・アルトマンが2023年5月、グレッグ・ブロックマン、イリヤ・サツケヴァーと連名で発表した政策エッセイ「Governance of superintelligence(超知能のガバナンス)」が、その源流である。

 同エッセイは「超知能AI」の登場を見据え、IAEAに類似した国際的監視機関の設立を提案した。アルトマンは同月の米上院司法委員会公聴会でも同様の構想を披露し、以後一貫してこの「IAEA型グローバル機関」というレトリックを政策発信の核に据えてきた。2025年5月の上院商業委員会公聴会、同年3月にOpenAIが提出した「米国AI Action Plan」への提案書にも、この構想は形を変えて埋め込まれている。

 ではなぜ、いまサミットの直前にこの構想を再投入したのか。