財務自動化プラットフォームを開発・提供するランプ(Ramp)の最新データによれば、4月時点でアンスロピックの企業採用率は34.4%に達し、オープンAIの32.3%を逆転しました。オープンAIが圧倒的優位を誇ってきた市場で、劇的な勢力図の塗り替えが起きたわけです。
ランプはコーポレート(事業者向けクレジット)カードと経費管理、請求書支払い、会計の自動化を一つのシステムに統合し、コスト削減および支出統制の強化を実現するサービスを提供。米国(の顧客)企業5万社以上のカードあるいは請求書による毎月の決済状況を分析し、AI製品・サービスへの支出動向を追跡しています。
ランプの追跡データはすべての米国企業のあらゆるAI支出を網羅しているわけではありませんが、AI市場の大きなトレンドを把握するのに役立つ指標として広く参照されています。
昨年の月次データでは、ソフトウェア開発や調査研究、財務、カスタマーサポートなど幅広い分野でオープンAIの採用率が急伸し、競合他社を大きく引き離す状況が続いていました。

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しかし、同時期にアンスロピックは企業顧客の間で着実に存在感を高め、2025年10月にコーディングツール「Claude Code」を正式リリースすると、ソフトウェア開発現場での導入事例が急増。
昨年末から年初にかけて企業採用率の伸びは加速し、ちょうどその1年前にオープンAIが経験したのと同様もしくはそれを上回る勢いが、少なくとも昨月まで続いている模様です。
ランプ(Ramp)が追跡する米国企業のAI支出動向。採用率には各社のAIモデルやプラットフォーム、ツールの有料サブスクリプション契約が含まれる。全体(Overall)は何らかのAI製品・ツールを採用している企業の割合を示す。Ramp
アンスロピックは目下、Claude Codeのプラグイン展開や機能拡充(エージェント機能「Claude Cowork」がその代表例)を進め、法務や財務、調査研究など生産性向上を実現可能なワークフローの対象範囲を広げようとしています。
AIブームの起爆剤となったチャットボット「ChatGPT」の開発元が最有力競合に追い抜かれたことは、生成AI時代における最も重要な業界構図の変化と位置づけることができるでしょう。

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しかし、逆転勝利がこの一瞬だけの事象にとどまる可能性は否定できず、優位性が今後も持続する保証はどこにもありません。
採用率データ提供元のランプでチーフエコノミストを務めるアラ・カラジアン氏によれば、企業はコストや性能、信頼性などそれぞれの必要に応じて採用するモデルやツールを臨機応変に切り替えて利用しており、AI開発競争はまだまだ流動的な状況が続くとのこと。
トークン利用単価の上昇、計算資源の不足、モデル提供コストの上昇を背景とするオープンソースへの関心の高まりなどが影響して、数カ月後に再び市場の勢力図が塗り替えられる可能性も十分にあります。
「5月について、私は二つの指標に注目しています。一つはオープンAIの企業採用率で、同社のコーディングツール『Codex』を利用する開発者が(アンスロピックからの乗り換えで)増えていれば、サブスクリプション契約数にも動きが見られるはず。そしてもう一つは、より安価なモデルを提供する推論プラットフォームの成長です」(カラジアン氏)
続いて、上値が重いと言われくすぶっていたエヌビディア(Nvidia)の株価がついに史上最高値を更新した話を。
エヌビディア株価が史上最高値をようやく更新
エヌビディア(Nvidia)の直近6カ月間の株価推移。Markets Insider
好決算が株価を押し上げることもあれば、経営者が大統領に帯同して中国に向かうことで株価が上がることもある。それが今日の市場の現実です。
エヌビディア(Nvidia)は後者のケースを経験しました。上のチャートに示したように、ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)がトランプ大統領の訪中に(一時は選外と見られたものの)同行すると報じられたあと、エヌビディアの株価は上昇して2%高で引け、史上最高値を更新しています。
フアン氏はその後、中国の習近平国家主席と北京の人民大会堂で会談。その動きと並行して、米政府がエヌビディアにGPU(画像処理装置)「H200」の中国企業への販売を許可したことが報じられました。
エヌビディア(Nvidia)のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)の姿が中央に。テスラ(Tesla)のイーロン・マスクCEO、アップル(Apple)のティム・クックCEOもその左手に。フアン氏の手前はマルコ・ルビオ米国務長官。REUTERS/Evan Vucci
5月14日付のロイター報道によれば、アリババ・グループ(Alibaba Group)やテンセント・ホールディングス(Tencent Holdings)、動画共有サイト「TikTok」運営元のバイトダンス(ByteDance)などが含まれている模様です。
フアン氏訪中の直接的な影響はともかく、投資家が期待していた中国での製品販売がついに許可されたことでエヌビディアの株価はさらに上昇。同日は4%高で引け、連日の最高値更新。年初来上昇率は25%、時価総額は5兆7100億ドル、背後から迫っていたアルファベット(Alphabet)を引き離しました。6兆ドルの大台も……。
※本記事はBusiness Insiderが毎日お届けする有料会員向けニュースレター「Cutting Edge(カッティングエッジ)」からの一部転載です。