記事のポイント
OpenAIは広告マネージャーを全米の広告主へ開放し、最低出稿額5万ドルも撤廃した。
CPA入札やサードパーティ測定、コンバージョンAPI導入により、広告基盤を本格拡張している。
広告配信の制御を自社で握ることで、ChatGPTのユーザー体験と信頼維持を最優先している。
OpenAIでは現在、サードパーティ測定とコンバージョン単価(CPA)入札の導入が進められている。同社はセルフサービス型広告マネージャーを米国のあらゆる規模の広告主向けに開放し、さらに中小広告主を呼び込むため、最低出稿額5万ドル(約725万円)の条件も撤廃した。
同社の広告・収益化責任者であるアサド・アワン氏は記者説明会で、今後の展開について概略を示した。そのなかにはサードパーティ測定も含まれているが、現時点では提携先や具体的な導入時期は未定だという。もっとも、外部測定パートナーの導入は本格的な広告事業をめざすすべてのプラットフォームにとって通過儀礼のようなものだ。なぜなら、それは「自社で自社を採点している」という疑念を払拭する役割を持つからである。
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CPA入札についても同様に開発が進行中だが、アワン氏は開始時期については明かさなかった。
一方で同氏がより詳しく説明したのは広告マネージャーそのものについてである。この広告マネージャーは現在、米国内でベータ版として公開されており、中小企業、スタートアップ、グローバルブランド、さらに電通(Dentsu)、オムニコム、ピュブリシス、WPPといった広告持株会社も利用対象に含まれている。
これは、OpenAIがChatGPTで広告提供を開始してから3カ月で実現したもっとも大きな拡張となる。これまで一部の大手テストパートナーのみに限定されていた広告プラットフォームが、カテゴリー制限はあるものの、利用を希望するあらゆる企業へ開放された形だ。
低リスクカテゴリーから慎重に拡大
これまで同社は、「限定されたカテゴリー」の広告主に注力してきた。具体的には、家庭用品や消費財、地域サービス、旅行・エンターテイメント、デジタル製品、教育分野などである。これらはいずれも、規制やユーザー被害の観点から比較的リスクが低いカテゴリーと見なされている。同社のポリシーページには、「安全対策、審査システム、コンプライアンス基盤が成熟するにつれ、対象カテゴリーを段階的に拡大していく予定である」と記載されている。
これは、OpenAIが年初から広告事業構築において採用してきた、慎重な管理型アプローチと同じ流れにある。3カ月前の段階では、広告主は1000インプレッション単位でしか広告を購入できなかった。クリック単価(CPC)入札も、アクションベース購入も、それを実行するセルフサービスプラットフォームも存在していなかった。
現在では、そのすべてが広告戦略の一部となっており、OpenAIはそれを厳格にコントロールしようとしている。
年初にアドテク企業との提携を始めた当初、その方針は必ずしも明確ではなかった。しかし現在では役割分担がはっきりしている。アドビ(Adobe)、クリテオ(Criteo)、カルゴ(Kargo)、パックビュー(Pacvue)、スタックアダプト(StackAdapt)といった企業は、キャンペーン予算管理、入札、クリエイティブ制作を担う一方で、広告配信そのものの判断はOpenAIの広告システムが握っている。
「間違った広告」が信頼を壊す
こうしたコントロールは、OpenAIにとって最低条件とも言えるものだ。もし不適切な会話に不適切な広告が表示されれば、あるいは唐突で不快な広告が出れば、ChatGPTのインテントシグナルの価値を支える「信頼」が損なわれかねない。
そのため、広告配信は社内管理のままとされている。広告をどこに表示するか、そもそも表示に値する関連性があるのかといった判断は、すべてOpenAI独自のシステムを通じて行われる。また、それは会話データがOpenAI内部に留まることも意味する。広告主に提供されるのは集計済みのパフォーマンス指標のみであり、実際の会話データそのものは共有されない。
しかし、プラットフォームがパフォーマンス広告へさらに踏み込むにつれて、このバランス調整はますます難しくなるだろう。現時点では、広告主もどの予算を振り向けるべきか模索中であり、OpenAI側もどの広告主を優先的に取り込むべきかを探っている段階だ。いわば「テスト&ラーニング」のフェーズである。
それでも方向性は明確だ。CPC入札の導入、今後追加されるCPA、すでに実装済みのコンバージョントラッキング用ピクセル、さらに開発中のコンバージョンAPIは、すべて同じ方向を指している。
ソナタ・インサイツ(Sonata Insights)の創業者兼チーフアナリストであるデブラ・アホ・ウィリアムソン氏は、「広告マネージャー、CPC入札、ピクセル測定、CAPIといった機能を追加することで、OpenAIは広告主がChatGPT上で安心してテストを行うために必要な基本構成要素を理解していることを示している」と語った。
コンバージョンAPIが示す広告効果の兆し
とりわけコンバージョンAPIは、広告主に対し、広告接触後に何が起きたのかを可視化する手段を提供する。たとえば、ランディングページ閲覧、商品カタログ閲覧、ページビュー、カート追加イベントなどである。広告主が従来慣れ親しんできた完全なポストクリック測定にはまだ及ばない。しかし、OpenAIが「広告に一定の効果がある」ことを示せる、初めての実質的な証拠のひとつだといえる。
ジェリーフィッシュ(Jellyfish)のメディアアクティベーション担当チーフソリューションズオフィサーであるジャイ・アミン氏は、「彼ら(OpenAI)は、そのピクセル生成そのものを自社管理している。広告主側で独自に作成することはできない」と説明する。さらに「何をトラッキングしたいのかに基づいて、OpenAI側がピクセルを送ってくる仕組みだ」と続けた。
より堅固な測定システムが整うまで、広告主がパフォーマンス改善のために使える最大のレバーは、現状ではクリエイティブそのものである。ただし、そのフォーマットは現時点で、テキスト付きの小さなファビコン広告1種類に限定されている。
この制約は意図的なものだ。記者説明会でも営業ピッチでも、OpenAIの広告幹部は同じメッセージを繰り返している。広告はユーザー体験を犠牲にしてはならないという考え方である。広告主のROIは、その次に来るものだ。
[原文:OpenAI opens up ChatGPT ads manager to the U.S. while promising third-party measurement, CPA bidding]
Krystal Scanlon(翻訳・編集:的野裕子)