OpenAIのサム・アルトマンCEO(右)とグレッグ・ブロックマン社長(右から2人目)。「イーロン・マスク対OpenAIアルトマン裁判」で、アルトマンCEOの経営手法が厳しい追及を受けている。Bloomberg/Getty ImagesOpenAI対イーロン・マスクの裁判で、同社CEOサム・アルトマン氏の経営手法が厳しい追及を受けた。OpenAI元幹部のミラ・ムラティ氏、シヴォン・ジリス氏、その他元取締役らが証言した。「カオス」な職場環境からコミュニケーションの欠如に至るまで、さまざまな不満が噴出した生々しい証言を紹介する。
イーロン・マスク(Elon Musk)氏とサム・アルトマン氏が争うこの裁判では、多くの人物が「元上司」への不満を口にしている。
5月6日と7日に行われた証人尋問で、マスク氏の弁護団は証人たちからある共通のメッセージを引き出した。それは、サム・アルトマン(Sam Altman)氏の経営スタイルは「あまり優れていなかった」というものだ。

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マスク氏はOpenAIの創業者たちが非営利組織を「乗っ取った」として、同社に対し1000億ドル(約15兆7000億円、1ドル=157円)超の損害賠償を求めている「OpenAI裁判」。その7日目と8日目には、OpenAI元取締役でマスク氏の4人の子どもの母でもあるシヴォン・ジリス(Shivon Zilis)氏をはじめ、複数の元取締役や元幹部が証言台に立った。
証人たちが挙げた批判の多くは、2023年にアルトマン氏がCEOを一時的に解任された際に噴出したものだが、今回の裁判でそれらが再び表面化することになった。
アルトマン氏の誠実さを疑問視するニューヨーカー誌(The New Yorker)の記事を受け、彼はブログを更新し「対立を避けがちな自分の性格を誇りに思っていない」とし、それがOpenAIに「大きな苦痛」をもたらし「会社を大きな混乱」に陥れたと認めた。
OpenAI在籍中にアルトマン氏と働いた経験について、3人の女性幹部が語った証言を紹介しよう。
「彼を真似する者が出て『嘘の文化』蔓延した」
2014年に撮影されたターシャ・マコーリー氏(右)。サム・アルトマン氏を解任したときのOpenAI取締役会メンバーの1人だった。Jerod Harris/Getty Images for Kairos Society
元OpenAI取締役のターシャ・マコーリー(Tasha McCauley)氏は、アルトマン氏に対する苦情を数カ月にわたって受け続けた結果、最終的にCEO解任に票を投じたと述べた。
マコーリー氏によると、アルトマン氏は「取締役会を支配しようとし」、監視・監督に抵抗していたという。陪審員に向けて上映された証言録取の中で、マコーリー氏は、OpenAIの上級幹部たちから、アルトマン氏の「常習的な嘘」が一連の「危機的事態」を招いていると告げられていたと証言した。
「社内で彼の振る舞いを真似する者が出てきて、ある種の『嘘の文化』『欺瞞の文化』のようなものが蔓延していた」とマコーリー氏は語った。「取締役会としては、これは非常に憂慮すべき事態だった」。
「有害な文化」とそれがもたらす「カオス(混乱)」は、どんな組織においても問題になるはずだと彼女は証言した。
マコーリー氏は、人類全体の利益のために安全な人工知能(AI)を開発するという、崇高な使命を担う非営利組織においては、なおさら深刻な問題だったと指摘した。
「数年後に私たちが下さなければならないであろう複雑な意思決定を、適切に監督できるかどうかを考えたとき、非常に大きな危機感を抱かざるを得なかった」とマコーリー氏は語った。
「彼は相手が聞きたいことだけを言う」
陪審員はミラ・ムラティ氏の証言をビデオで視聴した。彼女は取締役会がアルトマン氏を一時的に解任した後、暫定CEOも務めた。 Bloomberg/Getty Images
6日、陪審員たちはOpenAIの元最高技術責任者(CTO)で、その後自身のAI企業シンキング・マシンズ・ラボ(Thinking Machines Lab)を創業し、現在はそのCEOを務めるミラ・ムラティ(Mira Murati)氏のビデオ証言録取を視聴した。
ムラティ氏は、取締役会がサム・アルトマン氏を一時的に解任した後、暫定CEOも務めた人物でもある。
ムラティ氏の証言は、アルトマン氏の「困難で混乱した」マネジメント・スタイルに対する懸念に焦点が当てられた。同氏によれば、アルトマン氏は「大きな物議を醸す事案について決断を下すこと」が苦手で、相手の聞きたいことを言う癖があったという。
「私が懸念していたのは、サムがある人にはこう言い、別の人にはまったく違うことを言う、という点だった。そのせいで、一緒に仕事をすることが非常に難しく、職場内で混乱が生じていた」とムラティ氏は述べた。
アルトマン氏の問題は、安全性に対する取り組み方ではなく「サムが混乱を生み出していること」だったと、ムラティ氏は指摘した。
その一方で、同氏がアルトマン氏の復帰を支持したのは、解任当時、会社が「壊滅的に崩壊するリスクに直面していた」からだと説明。「会社が完全に吹き飛んでしまうのではないかと危惧していた」と語った。

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「取締役会に黙ってChatGPTをリリースした」
シヴォン・ジリス氏は、アルトマン氏が取締役会に何も知らせないままChatGPTをリリースしたことに不満を感じていたと述べた。 Bloomberg/Getty Images
シヴォン・ジリス氏は、アルトマン氏が取締役会を関与させないままChatGPTをリリースしたことに憤りを感じたと証言した。
「私だけではなく、取締役会全体が、何の連絡もないままあのような形でリリースされたことに懸念の声を上げていた」と同氏は語った。
ジリス氏はまた、OpenAIが核融合エネルギースタートアップのヘリオン・エナジー(Helion Energy)との提携を検討していることにも懸念を抱いていたという。アルトマン氏と現社長グレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)氏の2人とも、同社の投資家だったためだ。
2人はその投資について取締役会に開示していたものの、それでもジリス氏にはこの取引の交渉に強い違和感を覚えたという。