AIでプログラムを作るバイブコーディングやエージェントエンジニアリングの限界と活用方法とは? – GIGAZINE

2026年05月11日 21時00分
AI


開発者のサイモン・ウィリソン氏がAIコーディングツールについて振り返り、これまで別物だと考えていた「バイブコーディング」と「エージェント型エンジニアリング」が自身の作業の中で重なり始めていると述べました。これは単にAIがコードを書けるようになったという話ではなく、プロの開発者がどこまでAIに任せ、どこから責任を引き受けるべきなのかを問いかけています。

Vibe coding and agentic engineering are getting closer than I’d like
https://simonwillison.net/2026/May/6/vibe-coding-and-agentic-engineering/

ウィリソン氏は以前、バイブコーディングを「コードを見ず、品質にも深く関心を払わず、動けばよいという姿勢でAIに任せるもの」と位置づけていました。個人用の小さなツールであればバグの被害は自分に限られるため有用ですが、他人の情報や業務に関わるソフトウェアで同じ姿勢を取るのは無責任だと考えていました。

これに対して、エージェント型エンジニアリングは、経験あるソフトウェアエンジニアがセキュリティ、保守性、運用、性能を理解したうえでAIツールを使う実践です。ウィリソン氏は、AIツールによって扱える課題の範囲が大きく広がった一方で、その土台には25年のソフトウェアエンジニアとしての経験があると説明しています。


しかし、AIコーディングエージェントの信頼性が上がるにつれて、ウィリソン氏自身も本番向けのコードを1行ずつ確認しなくなっていったとのこと。ウィリソン氏はClaude CodeにSQLクエリを実行してJSON APIを作らせ、テストとドキュメントを追加させれば、単純な処理なら正しくこなすはずだと感じるようになり、その一方で「レビューしていないコードを本番で使うのは責任ある行為なのか」という罪悪感も生じていると述べています。

ウィリソン氏はこの状況を、大きな組織で別チームが作ったサービスを使う場合にたとえています。たとえば画像リサイズサービスを他チームから受け取った場合、利用側はすべての実装を読むのではなく、ドキュメントを読み、実際に使い、問題が出たときに初めて内部を調べます。


ただし、人間のチームには評判や説明責任がありますが、Claude Codeには職業上の評判も責任もありません。ウィリソン氏は、AIが何度も正しいコードを書いた経験によって信頼が積み上がる一方で、その慣れが「逸脱の正常化」になり、いつか間違った場面で過信する危険があると見ています。

この変化は、ソフトウェアの評価方法にも影響します。以前なら100件のコミット、よく整ったREADME、十分なテストがあるGitHubリポジトリは、作者が時間と注意をかけた証拠と見なせましたが、今では同じ外見のリポジトリを短時間で作れるため、それだけでは品質を判断しにくくなっています。


そのためウィリソン氏は、テストやドキュメントの充実だけでなく、実際に誰かが一定期間使った実績をより重視するようになったと述べています。バイブコーディングで作られたものであっても、2週間毎日使われているなら、生成されただけでほとんど試されていないものより価値があるという見方です。

さらに、コード生成速度の上昇は開発プロセス全体の前提を揺さぶります。1日に200行ではなく2000行のコードを生み出せるようになると、設計、レビュー、テスト、運用といった工程は、コードを書くのに時間がかかる時代の制約に合わせて作られていたことが見えてきます。

ウィリソン氏は、「AIは既存の経験を増幅する道具であり、何を作るべきかを理解し、品質やリスクを見極め、実際に使える形にする作業は依然として難しい」と語り、それでもソフトウェアエンジニアの仕事が終わらないという見方を示しました。


ウィリソン氏のブログ記事に対し、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは「AIには得意不得意のあいまいな境界があり、個人の小さなアイデアならバイブコーディングで十分だが、新しいアルゴリズムやAPIを学ぶなら手で書くべき」という意見や、「AIを使うことで開発者が怠惰になる可能性はあるが、それは高級言語によってアセンブリを書かなくなったのと同じように、仕事の重心が変わることでもある」というコメントもありました。

また、「AIで大量のコードを生成しても、根本原因を理解せずにClaudeの大規模修正で上塗りすると、別のバグを生むだけだ」という厳しい批判もある一方で、「プロトタイプと本番を分け、AI活用の成否にはエンジニアリングの熟練度、プロンプト経験、ドメイン経験が関わる」という意見もコメントされていました。

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