2026年05月11日 12時26分
AI

AnthropicやOpenAIの代表者を含む関係者がニューヨークで開催された円卓会議「Faith-AI Covenant(信仰とAIの誓約)」に参加し、様々な宗教指導者とともにAIへの倫理・道徳の組み込み方について議論したと報じられています。この会議は、過激主義や人身売買などの問題に取り組む「Interfaith Alliance for Safer Communities(より安全なコミュニティのための宗教間連盟)」が主催したもので、今後は北京、ナイロビ、アブダビでも同様の会議が予定されています。
Tech companies increasingly seek faith leaders’ guidance on artificial intelligence | AP News
https://apnews.com/article/ai-artificial-intelligence-ethics-religion-roundtable-053a44133c64703f83fd50c9ee6124ea
AI企業が宗教家を招いて会議を行うのは今回が初めてのことではなく、過去にはAnthropicがキリスト教の指導者や哲学者を集めて会議を行ったことが報じられています。
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今回開催されたFaith-AI Covenantの最終目標は、キリスト教からシーク教、仏教に至る多様な信仰に基づいた「共通の規範や原則」の策定であり、各テクノロジー企業がそれに従うことが期待されています。円卓会議には、ヒンドゥー寺院協会、バハイ国際コミュニティ、シーク連合、ギリシャ正教大主教区、末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)など、多岐にわたる宗教団体の代表者が出席しました。
Faith-AI Covenantの取り組みの主要パートナーであり、GoogleやFacebookでの勤務経験を持つ政治家のジョアンナ・シールズ男爵夫人は、法規制はAIの進歩に追いつけていないと指摘しつつ、世界中に数十億人の信者を抱える宗教指導者たちこそが「人々の道徳的安全を導く専門性」を持っていると主張しました。
シールズ男爵夫人はまた、AI技術者の多くが自分たちの構築しているものの力と可能性を理解しており、正しい方法でそれを行いたいと考えているとも述べています。

テクノロジー企業が接触する以前から、独自にAI利用の倫理指針を打ち出していた宗教団体もあります。たとえば、モルモン教は教典の中で「AIは神聖なインスピレーションの賜物や、それを受け取るための個人的な努力に取って代わることはできないが、学習と教育を向上させる有用なツールとなり得る」と、AIを条件付きで承認しています。
また、アメリカ最大のプロテスタント教派である南部バプテスト連盟は2023年、「AIなどの新興技術に対して受動的に対応するのではなく、積極的に関与し形成していくべきだ」という決議を採択していました。

さらに、共通原則の策定には課題もあります。ユダヤ教のラビでニューヨーク・ラビ委員会の副会長でもあるダイアナ・ガーソン氏は「世界の宗教には共通点もあるが価値観や優先事項が異なる」と指摘し、「宗教コミュニティはそれぞれ異なる優先順位を持っている」と述べました。
NPO団体「Future of Life Institute」の信仰連絡官であるブライアン・ボイド氏は、こうした企業の動きにはPR的な側面があることを認めつつも、企業側に遅まきながらも道義的責任を認識しつつある部分と、真摯な問いかけの両方があると述べました。
さらに「Distributed AI Research Institute」の主任研究エンジニアであるディラン・ベイカー氏は、こうした倫理的AI構築の議論がそもそもAIを開発すべきかどうかという根本的な問いを覆い隠してしまう危険性があると警鐘を鳴らしました。

一方、この動きに対して懐疑的な見方も存在するとのこと。バイデン政権下のAI担当科学特使を務めたルーマン・チョードリー氏は、こうした取り組みは「良くて気を散らすもの、最悪の場合は本当に重要な問題から注意をそらすもの」と批判しました。
チョードリー氏は、シリコンバレーが普遍的な倫理原則を見出せると考えていたのは「非常に短絡的な見方」だったと述べ、企業が今になって宗教に答えを求めるのは、倫理的にグレーな状況における曖昧さへの対処法を探しているためだと分析しました。
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