AIを業務に取り入れるよう会社の経営陣から求められているかもしれない。しかし、その同じ経営陣が職場のAI導入を妨げている可能性があることが、Microsoftの新しい報告書で明らかになった。
Microsoftが米国時間5月5日に公開した「Work Trend Index」は、職場におけるテクノロジー、行動、企業文化の変化を追跡する年次レポートだ。2026年版は、世界的な調査データとMicrosoftの顧客からの実データに基づき、企業がAIをどう取り入れているかに焦点を当てている。AIユーザーの多く(65%)が、迅速にAIを採用しなければ取り残されると不安を感じている一方で、45%はワークフローを作り替えるよりも、現在の目標を維持する方が安心だと感じている。たとえ目標の成果が出なくてもAI活用の工夫が評価されていると感じる人は、わずか13%だった。
この報告書は、AIが職場でどう使われ得るかをめぐる議論の新たな側面を浮かび上がらせている。ここ数年、経営幹部は、自社が最先端であると示すために、従業員へAIの導入を促してきた。だが、AIの有用性が十分に実証されていない場合や、従業員のワークライフバランスをむしろ悪化させている場合でさえ、そうした圧力がかかることもあった。企業は、AIが従業員の代替になるという理屈を掲げて人員削減を進める一方、在籍する社員にはAIリテラシーやスキルの強化を求めてもいる。
こうしたなか、Microsoftは「AI活用力を身に付けようとする現場発のうねり」を確認していると、Copilotのプロダクトマーケティング担当ゼネラルマネージャーであるMatt Firestone氏は筆者に語った。
Microsoftは、匿名化した10万件超のCopilotのチャットを分析した。その結果、ほぼ半数の49%が「認知的な仕事」、つまり情報の分析、問題解決、創造的思考といった作業の支援を求める内容だった。
利用されているAIエージェントの数は、前年同期比で15倍に増えた。AIエージェントは、タスクを自律的に処理できるカスタマイズ可能なボットだ。一般に、生成AIの次の波と見なされており、最先端のAIモデルを活用する。
AIによる混乱や変化は、老舗テクノロジー企業からエンタメ大手まで、幅広い業界で起きている。だが、NVIDIAの最高経営責任者(CEO)であるJensen Huang氏が語るような、少人数の人間が何百万ものAIエージェントを監督する世界は、まだ実現していない。その理由の1つとして、Firestone氏は古い格言を引き合いに出した。文化は戦略を朝食にしてしまう、というものだ。
Firestone氏は「従業員の可能性を引き出せるようにプロセスと文化を変えられれば、そのほうがテクノロジーは組織全体に、より速く広がっていくとわれわれは考えている」と述べた。
リーダーはAI活用の手本をもっと示す必要がある
調査対象となったAI利用者のうち、経営陣がAIについて明確かつ一貫した足並みをそろえていると答えたのは26%だけだった。ほかの回答者は、余力や裁量が限られていると感じている。必要なツールやプログラムがないためAIを実装できない場合もあれば、スキルはあっても実際には使えない場合もある。組織的な支援が不足していると、AIを使い始めるよう求められても、どこから手を付ければよいのか分からないこともある。
報告書が示した大きな提言の1つは、管理職が効果的なAI活用を自ら実践し、どのような使い方が許容され、実際に役立つのかを従業員へ示すことだ。Microsoftが2025年に実施した調査では、管理職がAI活用の手本を示した場合、エージェント型AIに対する従業員の信頼が30ポイント上昇した。
Firestone氏は「人間にはそうした本能がある。誰かがAIを使っていて、うまくいくことも、うまくいかないこともあると分かれば、その試行錯誤を見ることで自分もオープンに試してみやすくなる」と語った。
管理職や経営幹部が、もっとAIを使うよう号令をかけるのは簡単だ。だが、従業員が実際に役立つ使い方を見つけるのは、まったく別の課題である。Microsoftの報告書は、AIやエージェント型AIを仕事に本格的に取り入れたいと考える従業員がいる一方で、それを有効に進めるために必要な支援やリソースが不足していることを示している。結局のところ、これは単なる技術の問題ではなく、リーダーシップの問題だ。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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