
AlphaEvolveはコード生成にとどまらず、定量評価が可能な課題で実性能の改善につながったことが特徴だ。写真=Shutterstock
Google DeepMindは、生成AIシステム「AlphaEvolve(アルファイボルブ)」の公開から1年で得られた成果を公表した。DNA分析では変異検出エラーを30%削減したほか、電力網、自然災害予測、量子コンピューティング、Googleの社内インフラ、物流など幅広い分野で性能やコスト指標の改善が確認された。
オンラインメディアのGIGAZINEが5月8日付で報じた。AlphaEvolveは、Geminiを基盤に新たなコードや計算手法の候補を生成し、自動評価システムが速度、精度、コスト削減効果を数値化する。高評価の候補を繰り返し改良することで、より優れたアルゴリズムを探索する仕組みだ。
単なるコード生成ツールではなく、定量評価が可能な課題でアルゴリズム探索を進める点が特徴という。Google DeepMindは2025年5月の公開時、未知のアルゴリズムや未解決問題に対する新たな解法を見いだせる可能性を示していた。
今回公表された事例のうち、生命科学分野ではDNA分析モデル「DeepConsensus」の改善が目立った。遺伝子データから疾病関連の変異を見落としたり、実在しない変異を誤検出したりする変異検出エラーを30%削減したという。
電力網では、「AC最適電力潮流」問題で成果を示した。発電所や送電線の制約を満たしながら電力を効率的に配分する課題で、AIモデルが実行可能解を導き出せる割合は14%から88%超へ上昇した。実行可能解の増加により、実運用での手修正や他システムによる補正の負担軽減につながるとしている。
自然災害予測モデルでも改善が見られた。山火事や洪水、竜巻など20種類の自然災害リスクを予測するAIモデルで、地球観測データの加工手法を見直した結果、全体の精度が5%向上した。
量子コンピューティング分野では、Googleの量子プロセッサ「Willow」で分子シミュレーションを実行するための量子回路を提案した。この回路は、従来の最適化手法と比べてエラーが10分の1に抑えられたという。
数学分野でも活用が進んでいる。AlphaEvolveは、UCLAの数学者テレンス・タオ氏との協業を通じ、いわゆるエルデシュ問題群の研究を支援した。さらに、巡回セールスマン問題やラムゼー数といった古典的な数学課題では、下限記録の改善にも活用された。
Googleの社内インフラへの適用も本格化している。AlphaEvolveは次世代TPUの設計最適化に使われ、キャッシュ置換ポリシーの改善では、人手なら数カ月を要する作業を2日で完了したという。
データベース「Google Spanner」の内部処理では書き込み増幅率を20%低減し、コンパイラ最適化戦略によってソフトウェアのストレージ容量も約9%削減した。
企業での導入事例も増えている。Klarnaは大規模Transformerモデルの学習速度を2倍に高め、半導体スタートアップのSubstrateは計算リソグラフィの処理速度を数倍改善したという。
FM Logisticは配送経路の最適化により年間移動距離を1万5000km以上削減し、WPPは広告キャンペーン向けAIモデルの精度を10%向上させた。Schrödingerは、新薬開発や材料開発に用いる分子シミュレーション関連モデルの処理速度を約4倍に高めたとしている。
Google DeepMindはAlphaEvolveを「Geminiベースのコーディングエージェント」と位置付け、適用範囲を複数産業へ広げている。公開から1年で研究用途にとどまらず、Googleのインフラや企業運営の現場にまで適用が進んだことが、今回の発表のポイントといえそうだ。