GoogleのAI「AlphaEvolve」が1年でDNA解析・電力網・量子計算・物流まで最適化、アルゴリズム発見AIの実績まとめ – GIGAZINE

2026年05月08日 15時10分
AI


Google DeepMindが、Geminiを活用したアルゴリズム発見AI「AlphaEvolve」の1年間の成果を公開しました。

AlphaEvolve: Gemini-powered coding agent scaling impact across fields — Google DeepMind
https://deepmind.google/blog/alphaevolve-impact/

AlphaEvolveは、Geminiが新しいコードや計算手法の候補を作り、自動評価システムが性能を採点し、良い候補をさらに改良していくという仕組み。単なるコード生成AIではなく、速度、精度、コスト削減などを数値で評価できる課題に対して、より優れたアルゴリズムを探し出すAIだといえます。

2025年5月に登場した際には「未知のアルゴリズムや未解決問題の新解法を発見できる」とうたわれていました。

Googleが開発した進化的AI「AlphaEvolve」は未知のアルゴリズムや未解決数学問題の新解法を発見可能、すでにGoogle内部ではAI開発やチップ設計の効率化に活用されている – GIGAZINE


登場から約1年後となる2026年5月7日、Google DeepMindはAlphaEvolveが幅広い分野で挙げた成果を公表しました。

生命科学の分野では、DNA解析モデル「DeepConsensus」の改善にAlphaEvolveが使われ、DNA配列の中にある病気に関係する変化を見落としたり、存在しない変化を誤って検出したりする「変異検出エラー」を30%削減しました。精度が上がることで、研究者は遺伝子データをより正確に解析でき、病気の原因となる変異を見つけやすくなります。


電力網の分野では、発電所や送電線の制約を満たしながら電力を効率よく流す「AC Optimal Power Flow」という難問にAlphaEvolveが使われました。Google DeepMindによると、電力網を扱うAIモデルが実行可能な解を見つける割合は14%から88%超へ上昇しました。実行可能な解が増えると、人間や別システムによる修正作業を減らせるため、電力網の運用コスト削減につながります。


自然災害予測でもAlphaEvolveは成果を出しています。山火事、洪水、竜巻など20種類の自然災害リスクを予測するAIモデルで、地球観測データを扱いやすい形に変換する手法を改善し、全体精度を5%向上させました。災害予測では数%の改善でも、防災計画やインフラ整備、保険リスク評価に大きな影響を与える可能性があります。

量子コンピューターの分野では、Googleの量子プロセッサ「Willow」で分子シミュレーションを実行するための量子回路をAlphaEvolveが提案しました。AlphaEvolveが作った量子回路は、従来の最適化手法よりエラーが10分の1少なかったとのことです。


数学分野では、UCLAの数学者テレンス・タオ氏らと協力し、エルデシュ問題と呼ばれる未解決問題群の研究を支援しました。さらに、巡回セールスマン問題やラムゼー数といった古典的な数学課題で、下限記録を改善したとされています。下限とは「ある値を下回らない」と示せる境界のことで、完全な答えに届かずとも、数学研究では重要な前進になります。


Google内部のインフラでも、AlphaEvolveは実用段階に入っています。次世代TPUの設計最適化に使われているほか、キャッシュ置換ポリシーの改善では、人間中心の作業なら数カ月かかる成果を2日で達成しました。キャッシュ置換ポリシーとは、高速な記憶領域に残すデータと追い出すデータを決めるルールで、AI計算や大規模データ処理の性能に直結します。

データベース分野では、Google Spannerの内部処理を改善し、ユーザーが書き込んだデータ量に対して、ストレージ内部で余分に発生する書き込み量を示す指標の「書き込み増幅率」を20%削減しました。書き込み増幅率が下がると、ストレージ負荷や運用コストを減らせます。さらに、コンパイラ最適化の新戦略にもつながり、ソフトウェアの保存容量を約9%削減しました。

商用分野でもAlphaEvolveの導入は進んでいます。フィンテック企業のKlarnaは大規模Transformerモデルのトレーニング速度を2倍にし、半導体スタートアップのSubstrateは半導体製造で使う計算リソグラフィを数倍高速化しました。物流企業のFM Logisticは配送ルート最適化で年間1万5000km超の移動距離を削減し、広告代理店のWPPは広告キャンペーン向けAIモデルの精度を10%向上させました。計算生命科学・材料科学企業のSchrödingerは創薬や材料開発で使う分子シミュレーション関連モデルを約4倍高速化しています。


AlphaEvolveの1年間の実績をまとめると、DNA解析、電力網、自然災害予測、量子計算、数学、Googleインフラ、物流、広告、創薬・材料科学まで、幅広い分野で最適化成果を残したことになります。Google DeepMindは、AlphaEvolveを「アルゴリズムをAIが発見し、改良していく時代」に向けた重要な一歩として位置づけました。

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