「アホ左翼」か「本物の技術者」か
ダリオ・アモデイをどう評価するか。それは誰に聞くかによって異なってくる。
米国のドナルド・トランプ大統領に言わせれば、アンソロピックのCEOであるアモデイと同社の共同創業者たちは、過激な「アホ左翼の集団」だ。
アモデイは米国防総省に対し、自社サービスを国民の監視活動や完全自律兵器には使わせないと言明したことで、トランプの機嫌を損ねた。
著名なITアナリストのベン・トンプソンも、アモデイはAIのリスクを大げさに叫ぶ狼少年だと指弾した。アモデイが語るAIのリスクは「マーケティングのために不安を煽る災害ポルノ」だという。
だが、そんなトンプソンでも、アンソロピックがいまAI開発レースで先頭を走っていることは認める。実際、アンソロピックが開発したコーディングツールの人気は他を圧倒している。
加えて強力な「Claude Mythos(クロード・ミュトス)」も公開された(ミュトスについては後述する)。
一方、アモデイを絶賛するのは、シリコンバレーのベテラン投資家マイケル・モリッツだ。モリッツはアモデイについてこう語る。
「あの人は傑物です。正真正銘の本物です。根っからの技術者で、これまで下してきた戦略的決定は、どれも見事でした」
これほどまで評価が分かれる人物となると、俄然、会ってみたくなる。
「AIバブルはまだまだスケールしていく」
アモデイはかつて計算生物学の研究者だったが、いまは史上最速級の成長を続ける企業のトップだ。アンソロピックは先ごろ300億ドルを調達し、そのときの評価額は3800億ドルという驚異的な数字に達した。2026年内の上場を準備していると報じられる。
アモデイはAIが秘める可能性に胸を躍らせている。いずれアンソロピックが「データセンター内に築かれる、天才が結集した国家」を運営する日が訪れ、私たちの暮らしが激変すると予想しているのだ。
世間では「AIバブルがそろそろはじけるのではないか」「AI開発はコスト高で壁にぶつかっている」などと言われている。だがアモデイの信念が揺らぐ様子はない。彼の言う「計算資源の巨大な塊」が、今後もまだまだスケールしていくと確信しているからだ。
「この虹には終わりがなくて、あるのは、どこまでも虹なんです」とアモデイは言う。
「何かがスローダウンしている様子は、まったく見当たりません。断言します。これから世界は根本から変わることになります。私たちはその意味の大きさをまだ充分につかめていないだけなんです」
John Thornhill