見どころ | 2026ケンタッキーダービー | JRA-VAN World



デビューから3連勝中のダノンバーボン。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

有力馬の離脱が続き混戦模様、近年は波乱の傾向強く捕捉不能な伏兵の台頭も

今年のケンタッキーダービー戦線は2歳王者テッドノフィーが年明けに骨挫傷、筆頭評価に繰り上がったパラディンも骨折と、有力馬の戦線離脱が相次ぎ下馬評は混戦。日本から遠征するダノンバーボンは無敗の素質、ワンダーディーンは豊富な経験値を武器に上位進出を狙う。

優勝争いを占う上で注目したいのが「I.オルティスJr.騎手の目利き」と「枠順の妙」だ。オルティスJr.騎手といえばエクリプス賞に輝くこと5回、2017年から昨年まで勝利数トップの米国を代表するジョッキーだが、その名手が前売り人気の上位3頭をお手馬とし、最終的にレネゲイドを選択した。

レネゲイドはパラディンの離脱により長期前売りの1番人気に浮上し、枠順抽選後に発表された前売り(モーニングライン)でも1番人気を守った。2月のリステッド、続く前走のアーカンソーダービーでの通算5戦2勝とやや実績不足の印象を受けるものの、3走前にはレムゼンSでパラディンの2着がある。アーカンソーダービーでの豪快な走りから3歳馬ならではの成長力もうかがえ、その辺りが名手のお眼鏡にかなったのだろう。

ただし、オルティスJr.騎手はKYダービーで過去に9回騎乗するも3着以上が1回もなく、今回は1番枠と不安が生じている。1番枠は最初のコーナーで外から殺到する馬に不利を受けやすいとされ、1986年を最後に優勝から遠ざかっており不振傾向。自身が直接的な被害を受けることはなくても、前方で不利を受けた馬に巻き込まれる可能性もある。前走は追い込んだものの8頭立てで、2倍以上の頭数になる今回は序盤にある程度の位置を取れるかがカギとなる。

モーニングラインで2番人気に並んでいたファーザーアドゥとコマンドメントはともにB.コックス調教師の管理馬。ファーザーアドゥはオルティスJr.騎手を背に前走のブルーグラスSを11馬身差で圧勝するも本番の騎乗馬に選ばれなかった。一方、コマンドメントは前走でフロリダダービーに勝利。しかし、オルティスJr.騎手が同日のアーカンソーダービーでレネゲイドの騎乗を優先し、ひと足早く査定を済まされていた。

ファーザーアドゥはKYダービーで現役最多3勝のJ.ヴェラスケス騎手を確保。同騎手にはメディーナスピリットの薬物違反により幻となった1位入線もあり、勝ち方を最も知っている乗り役を鞍上に迎えられたのは大きい。ただ、内の1頭回避で当初の18番枠から過去に未勝利の17番枠へと移ってしまったのは不吉。直近15回のKYダービーは13番枠より外の馬が9勝しており、イメージほど不利ではないのかもしれないが。

コマンドメントはフロリダダービーでコンビを組んだF.プラ騎手が先約のエマージングマーケットに騎乗するため、さらにL.サエス騎手へと乗り替わる。サエス騎手のKYダービーは2019年にマキシマムセキュリティで1位入線も痛恨の降着、2021年にはコックス厩舎のエッセンシャルクオリティで3着の実績がある。ただし、今回の6番枠は勝率2.1%。未勝利の17番枠に次ぐ低さで、1993年を最後に未勝利と不利な傾向が出ている。



アーカンソーダービーの覇者レネゲイド。(Photo by Tommy Land/Eclipse Sportswire)

上位人気馬の枠順が不振傾向で2番手グループにも逆転の余地

このコマンドメントにフロリダダービーでハナ差2着のザプーマは5番人気。タンパベイダービーでは相手が休み明けだったとはいえファーザーアドゥを下しており、上位馬と互角の評価が必要だろう。鞍上は2017年に殿堂入りのJ.カステリャーノ騎手で、2023年にはメイジで8番枠からKYダービー制覇。今回は隣の9番枠で景色も変わらない。

チーフワラビーは前走のフロリダダービー(3着)と前々走のファウンテンオブユースS(2着)でコマンドメントに連敗したが、どちらも1/2馬身圏内の小差。前売りは4番人気で、前走でわずかに先着されたザプーマよりも評価が高い。KYダービー連覇を狙うW.モット調教師とJ.アルバラード騎手のコンビが、フロリダダービーは集中力を欠いていたとして中間からブリンカーを試しており、効果があるようなら逆転しても不思議はない。

ルイジアナダービー勝ちのエマージングマーケットは2月7日にデビューしたばかり。2018年のジャスティファイが2歳時に未出走の馬はKYダービーを勝てないという“アポロの呪い”を136年ぶりに解き、2023年にメイジも続いてジンクスは過去の物になりつつあるが、キャリア2戦での優勝は1883年以来、143年ぶりという記録への挑戦となる。ただ、この間に2戦で挑んだ馬の最高着順はテーオーパスワード(2024年)の5着で、日本から遠征というハンデを背負っての結果だけに、強ち無理筋ではないのかもしれない。

前走でサンタアニタダービー勝ちのソーハッピーはエマージングマーケットと並び6番人気。前々走のサンフェリペSではスピード任せの走りでポテンテの3着に敗れたが、大ベテランのM.スミス騎手が抑えて運んだ前走は力強い差し脚でポテンテを一蹴した。カリフォルニアの競馬は賞金低迷に伴うレベルの低下がささやかれているものの、昨年はサンタアニタダービーでワンツーのジャーナリズムとバエザが本番でも好走しており侮れない。



UAEダービーを制したワンダーディーン。(Photo by Dubai Racing Club)

勢いのダノンバーボンと経験のワンダーディーン、混戦に乗じたい伏兵陣

日本勢はダノンバーボンがこれらに次ぐ8番人気タイ、ワンダーディーンはさらに下の人気薄だが、今年の相手関係ならつけ入る隙もあるか。

ダノンバーボンはワンサイドの3戦3勝で底を見せておらず、米国産で血統的な適性も担保されているのが魅力。初遠征とはいえケンタッキー生まれで輸入の際に検疫や空輸も経験している。圧勝続きで厳しいレースの経験がないうえ、母系はスプリンターに偏っており、KYダービーの激流に耐えられるかが課題。

ワンダーディーンは6戦2勝で白星こそダノンバーボンより少ないが、人馬の経験値では大きく上回っている。6戦とも競馬場と騎手が異なり、それでいながらダート1800m以上で連対を守ってきた堅実性がある。今回も坂井瑠星騎手への乗り替わりだが、フォーエバーヤングとのコンビで米国の強豪たちと渡り合ってきた実績は頼りになる。追うほどに伸びたUAEダービーの走りから、さらなる距離延長も合いそうだ。

KYダービーは現地発売で当日の1番人気が7連敗中。2022年のリッチストライクと2023年のメイジは重賞未勝利の立場で優勝しており、思わぬ伏兵の激走もめずらしくない。アルバス(ウッドメモリアルS)とゴールデンテンポ(ルコントS)、フルエフォート(ジェフルビーS)は明け3歳で重賞勝ちしながら評価が上がっていないが、ゴールデンテンポは戦ってきた相手関係から変わり身の余地も。

また、B.コックス厩舎の第3の男・フルエフォートは今回が初ダートだが、2011年のアニマルキングダムも初ダートでKYダービーを制しており、直前に同じ重賞を勝った点が共通している。前記のリッチストライク、2023年のKYダービーで2着のトゥーフィルズも同じ臨戦で、オールウェザーの重賞経由でも軽視は禁物。ちなみに、フルエフォートは19番枠だが、リッチストライクは20番枠から大波乱を呼んだ。

(渡部浩明)

※日本時間4月29日時点