イーロン・マスクがOpenAIとサム・アルトマンを相手取り起こした訴訟が、今月27日(米国時間)、カリフォルニア州オークランドの連邦裁判所で裁判に入る。OpenAIの創設ミッションを巡り共同創業者同士が長年にわたり続けてきた対立に、陪審員9人が判断を下すことになる。
シリコンバレーを象徴する億万長者同士の衝突は、それだけでも十分に注目を集める。だが今回の裁判は、元OpenAIの従業員や非営利団体のあいだで、特に強い関心を集めている。判決の行方次第では、世界有数の人工知能(AI)開発企業が自らの技術をどう統制し、どのように社会へ提供していくのか。その枠組みにも影響が及ぶ可能性がある。
とりわけ注目されるのは、OpenAIの企業としての将来だ。今回の裁判で不利な結果となれば、年内にも計画している新規株式公開(IPO)に暗い影を落としかねない。ChatGPTを手がける同社は、Anthropicや、イーロン・マスクが率いるスペースX(xAIを擁する)とのあいだで、上場レースを繰り広げている。
マスクは競合企業の経営者だ。勝訴によって大きな利益を得る可能性もあり、この訴訟を提起する当事者としてそもそも適切なのかが疑問視されている。法廷外での和解という選択肢も残るが、法曹関係者や関係筋の見方では、その可能性は低いとみている。
ここでは、マスク対アルトマンの裁判で押さえておくべきポイントを整理する。
裁判の争点は?
マスクの訴えはシンプルだ。OpenAIが本来掲げていた非営利の理念、すなわち高度なAIシステムAGI(汎用人工知能)を人類全体の利益のために活用するという使命から逸脱した、という主張である。
被告に名を連ねるのは、OpenAI、最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン、同社の社長で共同創業者のグレッグ・ブロックマン、そして最大の出資者であるマイクロソフトだ。
OpenAIは巨額の収益を生み出しているが、いまなお非営利組織の統治下にある。マスクはこの非営利団体の立ち上げに関わった共同創業者のひとりで、初期には約3,800万ドルを拠出した。しかし2018年、アルトマンやブロックマンとの意見の対立をきっかけに、組織を離れた。現在、マスクによる訴訟は整理され、OpenAIに対する主張は大きく3つの争点に絞られている。
最初の争点は、OpenAIが公益信託上の義務に違反したかどうかだ。マスクは、創業初期のOpenAIについて、オープンソースへのコミットメント、すなわちAI技術を広く無償で公開する非営利団体に出資していると認識していたと主張する。だがアルトマンとブロックマンは、その意図どおりに資金を使っていないとマスクは訴えている。
現在のOpenAIには、年間で数十億ドル規模の収益を生み出す営利部門が存在し、最先端モデルのコードの詳細を厳しく秘匿している。(これに対しOpenAI側は、2017年の時点で営利部門が必要になることをマスクも認識しており、企業構造の整備にも関与していたと反論している)。さらにマイクロソフトは、この公益信託違反を幇助したとして責任を問われている。
第2の争点は詐欺だ。アルトマンとブロックマンが、OpenAIを営利企業へと転換する意図についてマスクを欺いた、というのがその中身である。
第3の争点は不当利得で、アルトマンやブロックマン、さらにほかのOpenAIの投資家たちが、マスクの巨額出資のもとで利益を得たと主張している。
これに対し被告側は、マスクの主張は根拠を欠くものだと反論している。xAIの立ち上げを進めるなかで、OpenAIの勢いをそぐ狙いにすぎない、という見方だ。