記事のポイント
OpenAIは広告マネージャーのテストを開始し、広告主がリアルタイムで最適化できるセルフサーブ機能を提供し始めた。
最低出稿額を大幅に引き下げたことで参入障壁が低下し、より多くの広告主がChatGPT広告を試しやすくなった。
巨額赤字とIPOを背景に広告事業を急拡大しており、アドテク基盤の内製化も進めている。
OpenAIは4月、広告マネージャーを立ち上げた。急速に拡大する同社の広告事業における最新の一手であると、Digidayは把握している。
このツールは、実際に利用している関係者によれば実用的であり、レイアウトはGoogle 広告(Google Ads)にかなり似ている。ただし現時点では、限られた広告主のみがアクセスできる「テスト中のテスト」的な位置付けである。それでも意味合いは大きい。広告主が初めて、リアルタイムでパフォーマンスを監視し、インプレッションやクリックに基づいて直接最適化できるようになったためだ。これまでのようにOpenAIや代理店を経由する必要はない。
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OpenAIの広報担当者は声明で次のように述べている。「広告マネージャープラットフォームはまだ全面展開していない。現在はパイロットの一環として、一部の広告主が初期バージョンのテストを開始している段階である。これはまだ初期フェーズであり、ツールを洗練させるためのフィードバック収集を目的としている」。
「セルフサーブ化」が意味するもの
セルフサーブ機能は重要な意味を持つ。OpenAIのより大きな野心を支える中核インフラだからである。ジ・インフォメーション(The Information)によれば、同社は広告事業が2030年までに1020億ドル(約15兆3000億円)の価値になると見込んでいる。この規模を実現するには、広告マネージャーの存在が不可欠だ。
もし今回の取り組みがテスト段階を超えて拡張されれば、明確な転換点となる。Google、メタ(Meta)、Amazonがいずれも支配的な広告プラットフォームへと成長したのは、セルフサーブ型モデルを採用してからであった。
ソナタ・インサイツ(Sonata Insights)の創業者兼チーフアナリストであるデブラ・アホ・ウィリアムソン氏は、「OpenAIが広告ビジネスにおいて正当なプレイヤーとしての地位を確立するには迅速な動きが必要であり、早期に広告マネージャーを立ち上げたことは重要なステップだ」と指摘する。「たとえばFacebookは2007年にセルフサーブ広告の購入を可能にしたが、広告販売開始からそれほど時間が経っていない段階だった」。
参入ハードルの引き下げが示す本気度
パイロットへのアクセス条件にも変化が出ている。
「OpenAIは最近、パイロット参加の最低出稿額を5万ドル(約750万円)まで引き下げた」と、すでにクライアントがパイロットに参加しているあるエグゼクティブは語る。変更は4月初週に実施された。
これは数週間前まで設定されていた20万〜25万ドル(約3000万円〜約3750万円)の基準から大幅な引き下げである。さらに、ニュース広告責任者であるデビッド・デュガン氏の参画や、クリテオ(Criteo)やスマートリー(Smartly)などのアドテク企業との連携など、複数の動きと合わせて見ると、OpenAIが年内に予定されるIPOを見据え、広告市場での足場固めを急いでいることがうかがえる。
当初3月末までとされていたテスト期間は、すでに4月末まで延長されている。今後さらに延長される可能性があると見る広告代理店のバイヤーもいる。
「安く始めて、使った分だけ支払う」モデル
いずれにせよ、参入コストの低下により、より多くの広告主がChatGPT上での広告テストに関心を示す可能性が高い。1月のパイロット開始時には、25万ドル(約3750万円)の最低出稿額がネックとなり、データの少ないプラットフォームに対して大きな投資を求められることに慎重な声が多かった。
現在の5万ドル(約750万円)であれば、障壁は大きく下がる。しかも実際に購入された在庫に対してのみ課金される仕組みである。あるエグゼクティブによれば、「パフォーマンスのボリュームはまだ限定的」であるため、このモデルは合理的とも言える。
立ち上がり段階にある広告プラットフォームとしては、「低コストで参入し、成果に応じて支払う」暗黙の提案は魅力的である。
「使った分だけ課金されるのは公平であり、強力な前例になるだろう。市場と同水準で価格設定されるはずだ」と同氏は述べる。
高めのCPM設定とその背景
現時点でのCPMは60ドル(約9000円)とされており、最低出稿額が5万ドル(約750万円)に引き下げられたのと比べるとやや高く感じる向きもある。しかしその背景には、ChatGPTのユーザーが広告を見る際に「能動的に意思決定している状態」にあるという前提がある。受動的なソーシャルメディア閲覧よりも、高い購買意図を持つ検索行動に近いと考えられているのだ。
あるエグゼクティブは「テスト期間中はCPM60ドルを維持し、データのキャリブレーションを行う必要がある。途中で変更すると分析に影響が出る」と説明する。
この急速な広告事業の構築は、長期的な収益機会に対する同社の見方にも表れている。ロイター(Reuters)によれば、テスト開始からわずか6週間で年換算1億ドル(約150億円)の収益を記録した。
Wメディア・リサーチ(W Media Research)の主席アナリストであるカルステン・ワイデ氏は、OpenAIの動きの速さについて「資金への強い必要性」が背景にあると指摘する。
「OpenAIは今年だけで140億ドル(約2兆1000億円)の損失が見込まれている。そのため売上を支えるあらゆる手段の追求を余儀なくされる」と同氏は述べる。
広告テック基盤の内製化へ
今回ひっそりと登場した広告マネージャーは、OpenAIが現在外部に依存しているアドテクスタックを内製化しようとしているもっとも明確な兆候である。
クリテオのようなアドテク企業との提携により、同社は迅速に広告主基盤へアクセスできるだけでなく、将来的には多様な広告フォーマットの導入も視野に入れている。一方で、基盤をゼロから自社構築する動きも並行して進めている。
編集部注:本記事は公開後、OpenAIからの声明を反映する形で更新された。
[原文:OpenAI has quietly launched its ads manager as it races to build out its ads business]
Krystal Scanlon and Seb Joseph(翻訳・編集:的野裕子)