オープンAIのサム・アルトマンCEO

写真提供:Photothek Media Lab/DPA/共同通信イメージズ

 加速し続けるAI開発の最前線で、常にキーパーソンであり続ける起業家サム・アルトマン氏。ChatGPTで世界を一変させた彼は、AIの可能性と脅威を見据えながら、どんな未来を描こうとしているのか。『サム・アルトマン評伝』(日経BP)から一部を抜粋し、その先見的な思考と知られざる素顔に迫る。

「加速主義」か「利他主義」か。ChatGPTの成功はオープンAI内部のイデオロギー対立を深刻化させ、アルトマン氏自身をも変えていった…。

効果的加速主義 VS 効果的利他主義

 2023年秋、ChatGPTの登場とAIが産業界で大ブレイクしたことがきっかけで、シリコンバレーでイデオロギーの分裂が急速に進み、その過程で「効果的加速主義」と「効果的利他主義」という二つの潮流が生まれた。

 加速主義者はAIの発展を自由市場の力に委ねるべきだと信じているが、利他主義者の方は、道徳と理性と数学、そして綿密に調整された機械が未来をリードすべきだと考えている。

 加速主義の「種」は20世紀初頭に起きた未来派運動のなかで蒔(ま)かれた。加速主義の信奉者はテクノロジーを高速で強力な力であると見なしてテクノロジー革命のスピードを上げるべきだと主張し、極端な話、たとえば戦争などの破壊的次元に至るテクノロジーですら「美」と賛美する。

 2010年ごろから加速主義がさらに進み、英国の哲学者であり作家、ブロガーでもあるニック・ランドが中心となって、資本の役割を強調しながら、テクノロジーと社会の主導権は独裁的な団体と少数の技術者が握るべきだと主張している。これが現代の「AIの効果的加速主義」という哲学の源流だと考えられている。