オープンAIのサム・アルトマンCEO

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 加速し続けるAI開発の最前線で、常にキーパーソンであり続ける起業家サム・アルトマン氏。ChatGPTで世界を一変させた彼は、AIの可能性と脅威を見据えながら、どんな未来を描こうとしているのか。『サム・アルトマン評伝』(日経BP)から一部を抜粋し、その先見的な思考と知られざる素顔に迫る。

 2022年11月、ひっそりとリリースされた「ChatGPT」は公開5日で利用者100万人を突破し、グーグルを震撼させた。アルトマン氏の“奇襲”はいかにして成功したのか。

奇襲:ChatGPT

 ホロウィッツは著書『The Hard Thing about Hard Things』のなかで、平時のCEOは強みを生かし、弱点の補強にも注力できるが、戦時のCEOは常套手段ではなく、普段なら絶対にしないような行動によって目的を達成しなければならないと説いている。

 シアトルに戻ったアルトマンは、ある決意を抱いていた。奇襲をかける決心だ。

 2022年11月がやってきた。アルトマンは突然、全体会議を開くと、数週間以内にどうしてもチャットボットをリリースしなければならないと告げた。だが、アルトマンが出そうとしていたのは最新版のGPT-4ではなく、機能が限定的で、まだまだテストと改良が必要な旧モデルの方だった。アルトマンはスタッフに、既存モデルのGPT-3.5にシンプルな会話型インターフェースを追加するよう言った。

 一部のスタッフは、こんなに大慌てで対話型モデルをリリースしなくても、と不満を露わにした。チームはすでにGPT-4の正式リリースにかかりきりで別のプロジェクトに関わっている余裕がなく、今後懸念されるリスクやAIの濫用という問題にどう対処するかについて、チーム内でまだ十分な準備も検証も行われていなかったからだ。