NVIDIAは、オープンウェイトの人工知能(AI)モデルの開発に向けて、今後5年間に260億ドル(約4兆円)を投じる計画だ。2025年の米証券取引委員会(SEC)提出書類で明らかになった。これまで報じられていなかったこの計画について、同社幹部が『WIRED』の取材で認めた。

この巨額投資は、NVIDIAを高度なソフトウェア基盤を持つ半導体メーカーから、OpenAIやDeepSeekと競うフロンティアAI開発の担い手へと変える可能性がある。AIモデルを同社のハードウェアに最適化することで、AIチップ分野でのNVIDIAの支配的地位をさらに強固にする戦略的な一手ともいえる。

オープンウェイトモデルとは、モデルの振る舞いを決定づける重み(ウェイト、パラメーター)を公開するAIモデルのことを指す。場合によっては、モデルのアーキテクチャーや訓練方法の詳細も公開される。これにより、誰でも自分のコンピューターやクラウド環境でモデルをダウンロードして実行できるようになる。

NVIDIAは、モデルの構築や訓練に使われた技術的な工夫も公開している。そのため、スタートアップや研究者は同社の技術を基に改良を加えたり、新たなモデル開発を進めたりしやすくなる。

新モデル「Nemotron 3 Super」を公開

同社は3月11日、NVIDIAは同社でこれまで最も高性能とするオープンウェイトAIモデル「Nemotron 3 Super」を公開した。新モデルは1,280億のパラメーターを備える(パラメーターはモデルの規模や複雑さを示す指標)。これは、OpenAIの「gpt-oss」の最大モデルとおおむね同規模だが、NVIDIAは複数のベンチマークでgpt-ossやほかのモデルを上回る性能を示したとしている。

NVIDIAによると、Nemotron 3 Superは「Artificial Intelligence Index」と呼ばれる指標で37点を記録した。この指標は10種類のベンチマークを使ってモデルを評価するものだ。OpenAIのgpt-ossは33点だったが、複数の中国製モデルはそれを上回ったという。

またNVIDIAは、Nemotron 3 Superが新しいベンチマーク「PinchBench」で秘密裏にテストされ、同テストで1位を記録したとしている。PinchBenchは、モデルが「OpenClaw」をどの程度うまく制御できるかを評価するベンチマークだ。

NVIDIAはさらに、Nemotron 3の訓練に用いた複数の技術的な手法も公開した。これには、モデルの推論能力や長文コンテキストの処理能力、強化学習への応答性を高めるためのアーキテクチャー設計や訓練手法が含まれる。

「NVIDIAはオープンモデルの開発に、これまで以上に本格的に取り組んでおり、着実に前進しています」と、NVIDIAの応用ディープラーニング研究担当バイスプレジデント、ブライアン・カタンザロは語った。

米中競争のなかで広がるオープン型AIモデル

2023年に「Llama」を公開し、オープンモデルを最初に打ち出した大手AI企業はメタ・プラットフォームズだ。しかし、最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグは最近、同社のAI戦略を見直し、今後のモデルを完全にオープンにしない可能性を示唆している。

一方、OpenAIのgpt-ossはオープンウェイトモデルだが、同社の最高性能の非公開モデルと比べると性能は劣り、改良や拡張にもあまり向いていない。

米国の最先端モデルは、OpenAIやAnthropic、グーグルが開発したものも含め、クラウド経由やチャットインターフェースを通じてしか利用できない。一方、DeepSeekやアリババ、Moonshot AI、Z.ai、MiniMaxといった中国企業の多くのモデルは、重みが無償で公開されている。その結果、世界中のスタートアップや研究者の多くが、中国のモデルを基盤に開発を進めている。