米国とイスラエルのモグラ叩き戦略が生む管理された戦争の時代

福山 隆

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2026.4.11(土)

 米国とイランが合意した「2週間停戦」は、一般に想像されるような「戦争を終わらせるための停戦」ではない。

 むしろ、双方が必要最小限の再建を行い、次の局面に備えるための「戦略的呼吸」、いわば戦場における息継ぎにすぎないと筆者はみている。

 イスラエルは今回の衝突で、イランの攻勢能力を戦前の6〜7割にまで押し下げ、短期的には「枕を高くして寝られる」安全域を確保した。

 米国は、戦争が「広がらないように押さえ込むための安全弁」として停戦を利用し、イランは体制の延命と核・ミサイル関連施設の再隠蔽のための時間を確保できた。

 しかし、中東の紛争構造は、ストロンボリ*1型火山のように、小規模な爆発を間欠的に繰り返す。火口が静まって見えても、地下ではマグマが脈動し続けていると考えるのが妥当だろう。

*1=イタリアのシチリア島北方のエオリエ諸島の一つで、この島の火山は約2400年もの間、数分から数十分間隔で小規模な噴火を繰り返している。夜間には山頂付近が溶岩で赤く染まって見えることから「地中海の灯台」とも呼ばれている。

 今回の停戦は、その火種をどう管理するかという政治と戦略の技法にすぎず、火山そのものが鎮まったわけではないというのは、多くの識者の共通認識ではなかろうか。

今回の戦争の位置づけ

「閾値戦争」としての意味

 今回の米・イスラエルとイランの衝突は、領土を奪い合う古典的な戦争でも、体制転覆を狙う全面戦争でもない。

 その本質は、「相手が越えてはならないライン(閾値)をどこまで押し下げられるか」をめぐる、きわめて現代的な戦争と言っていい。

 イスラエルはイランを破壊したい野望があるにしても、現在の戦い方を見る限りそのような意図は表面に出していない。

 同じように米国もイラン体制の崩壊を望んでいないと思われる。

 イランを「石器時代に戻す」とか「一つの文明が終わる」など、耳を疑いたくなるような過激な表現が飛び出すのは、往々にして自信がない場合が多いからだ。

 しかし両国は、イランが核・ミサイル・代理勢力を通じてレッドラインを越える能力を持つことだけは容認できないはずだ。

 筆者は以前、JBpress(2026年3月1日)で「米国とイスラエルのイラン攻撃は『モグラ叩き戦略』である」と論じた。

 イランが頭を出した瞬間に叩き、引っ込めればやめ、イランによる攻勢能力の天井を低く保つ反復作戦を続けているという意味である。

 今回の停戦も、「モグラ叩き戦略」を実証しているように思える。

 イスラエルの目的は、イランの攻勢能力の上限(天井)をどこまで低く固定できるかにあった。

 米国は、戦争が「広がらないように押さえ込むための安全弁」として停戦を利用し、イランは体制の延命と威信の維持を優先したとみて間違いないであろう。

 つまり、3者がそれぞれの「天井」の高さを守り合う、きわめて現代的な閾値戦争といえる。