テック業界の大物の多くは、人工知能(AI)を人々に売り込みたいと考えている。だが、マーク・ザッカーバーグは、メタ・プラットフォームズの見解において世界最高のAIモデルのひとつを無償で提供しようとしている。

メタは大規模言語モデル(LLM)である「Llama」の最大かつ最も高性能なバージョンを、7月23日(米国時間)に無償で公開した。この「Llama 3.1」の開発費をメタは明らかにしていないが、このほどザッカーバーグが投資家向けに語ったところによると、メタはAIの開発に何十億ドルも投じているという。

今回の最新版のリリースを通じてメタは、AI開発の方法が多くのAI企業が好むクローズドな(閉じた)アプローチに限られないことを示している。それと同時に、制御なしにAIを公開することでもたらされる危険に関する議論の中心に、メタ自身を置こうとしているのだ。メタはLlamaのトレーニングを通じて有害な内容が出力されないように設定しているが、モデルを修正してその“安全装置”を外すことは可能である。

メタによると、Llama 3.1はOpenAI、グーグル、Anthropicなどの企業の最高の商用サービスと同程度に賢く、有用だという。AIの進歩を測定するいくつかのベンチマークに基づくと、このモデルが地球上で最も賢いAIであると、メタは主張している。

「非常にエキサイティングなことです」と、オープンソースのAIに関する動きを追っているスタンフォード大学准教授のパーシー・リャンは言う。この新しいモデルがOpenAIの「GPT-4o」などの業界の主要なモデルと同じくらい有能であると開発者が判断した場合、メタの製品への大きな移行が起きる可能性があるという。「使用状況がどのように変化するのかを確認することは、興味深いことです」と、リャンは語る。

メタの最高経営責任者(CEO)であるザッカーバーグは新モデルをリリースした際に掲載した公開メッセージで、LlamaをオープンソースOSのLinuxになぞらえている。1990年代後半から2000年代初頭にかけてLinuxが飛躍を遂げた時期、大手テック企業の多くはクローズドな代替製品に投資していた。オープンソースのソフトウェアはリスクが高く、信頼性が低いと批判していたのだ。ところが、いまではLinuxはクラウドコンピューティングで幅広く採用され、モバイルOSであるAndroidの中核になっている。

「AIも同じように発展すると考えています」と、メッセージのなかでザッカーバーグは主張している。「現在、いくつかのテック企業が有力なクローズドモデルを開発しています。しかし、オープンソースは急速に差を縮めています」

ただし、AIを無償で提供するというメタの決断に自己利益が存在しないわけではない。これまでのLlamaの公開は、メタがAI研究者、開発者、スタートアップの間で影響力のある地位を確保するうえで貢献してきたのだ。

スタンフォード大学のリャンの指摘によると、Llama 3.1は使用法についてメタの制限を受けていることから、真の意味でのオープンソースではないという。例えば、このモデルを商用製品で使用できる規模が制限されている。

AIの開発に幅広く影響を及ぼす可能性

新バージョンのLlamaには、4,050億のパラメーターや調整可能な要素がある。すでにメタは、パラメーター数が700億と80億である小さなふたつのバージョンのLlama 3を公開している。これらのモデルをアップグレードしたバージョンとして、メタはLlama 3.1を公開したのだ。

Llama 3.1は通常のPCで実行するには大きすぎる。しかし、メタによると、Databricks、Groq、アマゾン ウェブ サービス(AWS)、Google Cloudなどの多くのクラウドプロバイダーが、このモデルのカスタムバージョンを開発者が実行できるホスティングの選択肢を提供する予定だという。また、このモデルは「Meta AI」からもアクセスできる。