宮家邦彦が語る、チキンゲームの当事者はイランとイスラエル、アメリカはいずれ逃げ出す

 日本、オーストラリア、韓国、NATO(北大西洋条約機構)は「自分たちを助けてくれなかった」と不満を語り、イランが交渉に応じなければ、発電所や橋を破壊すると再びタイムリミットを設定していたトランプ大統領。土壇場の8日、パキスタンの仲介を受け「2週間の停戦に応じた」と報じられたが、この停戦は長続きするのか。中東情勢に詳しいキヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問の宮家邦彦氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──今回の「停戦」に向けた動きを見ながら、何を感じますか?

宮家邦彦氏(以下、宮家):「悪魔は細部に宿る」と言いますが、私は決して楽観的にはなれません。その理由は、「停戦」に合意しても、イラン側とアメリカ側のそれぞれの要求には今も埋めがたいギャップがあるからです。

 仮に、この「停戦」が2週間以上続いたとしても、イラン、イスラエル、アメリカをめぐる矛盾は変わらないでしょう。特に、ホルムズ海峡が実質的にイランの支配下にあるという「現実」は変わっておらず、イラン側がこれを放棄するとも思えません。

米・イランの即時停戦合意はどこまで長続きするのか(写真:ロイター/アフロ)

──ここ数日の言動を見て、トランプ大統領の本音はどの辺りにあると考えますか?

宮家:本音は「1日も早い停戦」を切望していたトランプ大統領が、苦し紛れに、パキスタンが提示した出来の悪い「仲介案」に飛びついた、ということでしょう。いずれにせよ、徹底抗戦を叫ぶイランを前にして、現状を正しく把握できていないように見えます。

①事実かどうか問わず自分の願望を事実として話す。

②自分の願望を他者が受け入れない場合は徹底的に攻撃する。

③世論とマーケットが自分の主張とそぐわない反応を示すとチキンアウトする。

 トランプ大統領の行動パターンは常にこの3つの段階の繰り返し。そして、この3つの段階を行ったり来たりしているのが現状です。足元の今は、「チキンアウトするならば早いほうがいい」ということだと思います。ここで地上戦に突入すれば取り返しのつかない負のスパイラルに入りますから。

──トランプ大統領はこの数日、イランの発電所を攻撃する可能性を示唆していました。一方、48時間、5日、2〜3週間と、期限がどんどん変わっています。

宮家:迷いが見えますね。そもそも、どこを攻撃するかを宣告すれば、相手は準備をして構えます。ところが、戦略を持たない彼は、衝動的に半ば願望の段階で全部公言してしまう。

 強がりでないもう一方の本心では、今すぐにでもこの戦争から抜け出したい。でも、今抜けたら中間選挙に向けて強気の指導者像を貫けなくなる。

 本気で撤退しようとするなら可能です。トランプ大統領は、自分たちは勝利していると言っており、イランの体制転換もすでに達成したかのような口ぶりです。ですから、レトリック上は抜けられます。

 でも強引に停戦しても、イランがこれに乗らず攻撃を続ける可能性もあります。そうなれば事実上の停戦すら成立しません。だから、報復できないところまで叩きのめすしかないという発想になるのです。

──イランはどのあたりを当面のゴールとして設定していると思いますか?