Metaは米国時間12月29日、中国発のスタートアップ企業であるManusの買収を発表した。Manusは2025年初頭、実用性を備えた初のAIエージェントとして注目を集めた技術を公開し、大きな話題を呼んだ企業である。The Wall Street Journalの報道によると、今回の買収額は20億ドル(約2800億円)を超えるとされており、AI開発競争の最前線に立つためのMetaによる最新の取り組みといえる。

 Metaは発表文の中で、Manusの優れた人材が自社チームに加わることで、Meta AIを含む消費者向けおよびビジネス向け製品全体に汎用(はんよう)エージェントを提供できるようになると説明している。Manusのチームを歓迎するとともに、同社の技術を活用して数十億の個人ユーザーと数百万の企業の利便性を向上させることに期待を寄せた。

 Metaは膨大な資金と計算資源を保有し、時価総額で世界第6位に位置しているものの、消費者向けAIの分野では後発に甘んじていた。しかし、今回のManus買収によって、広大なユーザーベースに対し、より実用的で有用なAIシステムを配備することが可能になる。これにより、OpenAIやAnthropic、Google DeepMindといった業界をリードするAI研究所との格差を埋める狙いがある。

 北京蝶変効応科技(Beijing Butterfly Effect Technology)の資金援助を受けて2025年3月に発足したManusは、「ChatGPT」などの従来のチャットボットと比較して、人間の監視やプロンプト(指示)を最小限に抑えつつ複雑なタスクを処理できる能力でIT業界に衝撃を与えた。なお、Manusは6月、米国政府による中国へのGPU輸出規制を回避するため、拠点を北京からシンガポールに移転している。

 これに追随する形で、米国の主要な開発企業も「Operator」(OpenAI)などのエージェント機能を次々と発表した。これらは、単にプロンプトに応答するだけでなく、ウェブサイトの閲覧やフォームへの入力、財務データの分析、レポート作成といった実務を自律的にこなす、個人や企業にとって真に有用なAIとして広く市場に投入されている。

 今回の買収により、Metaは「Instagram」「Facebook」「Messenger」「WhatsApp」といった自社サービス上で独自のエージェントを構築し、提供できる体制が整う。Metaの広報担当者は、買収を受けてAIアシスタントの「Meta AI」にエージェント機能を追加する計画があるかという質問に対し、現時点では回答していない。

 また、MetaはManusの技術を自社製品に統合するだけでなく、買収後も同社を独立したサービスとして存続させ、販売を継続する方針を明らかにしている。これにより、Metaは数百万人の追加ユーザーから独自の収益源を確保し、同社が掲げる「超知能(スーパーインテリジェンス)」の構築という野心的な目標に向けたAI投資をさらに加速させる構えだ。

 Metaは2021年10月、社名をFacebookから変更した。これは、従来のSNS中心のブランドから、最高経営責任者(CEO)のMark Zuckerberg氏が商取引や交流の未来と位置づけた「メタバース」構築への転換を象徴するものだった。しかし、仮想現実(VR)ヘッドセットの販売不振や、自社プラットフォーム「Horizon Worlds」の利用者低迷により、その構想は事実上頓挫した。

 約3年前のChatGPT公開を機に生成AIブームが巻き起こると、Zuckerberg氏は戦略を劇的に転換した。2023年を「効率化の年(Year of Efficiency)」と宣言し、AIの研究開発を最優先事項に据えたのである。

 それ以来、Metaはオープンソースの大型言語モデル(LLM)である「Llama」シリーズの開発や、自社アプリ群へのMeta AIの実装に巨額の投資を続けてきた。さらに、優秀な人材の確保と買収にも攻勢をかけている。6月には、データラベリングを手掛けるScale AIに143億ドル(約2兆円)を投じ、同社の創業者で28歳のAlexandr Wang氏を、新たに設けた最高AI責任者(CAIO)に任命した。

 その数カ月後には、画像生成AIで知られるMidjourneyとの提携を発表した。同社の生成AIツールをMetaの各種アプリに統合することを目指しており、視覚的な表現力の強化を図っている。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)