メタがAIスタートアップMunus(マナス)を巨額買収すると発表。買収金額は日本円換算で3000億円を超える。VCG/VCG via Getty Images
マナス(Manus)が再びスポットライトを浴びている。
中国発の人工知能(AI)スタートアップである同社は、メタ(Meta)に20億ドル(約3000億円)以上の価格で買収される見通しだ。これは米テック大手がアジアのAI企業を買収するケースとしては、過去最大級の注目案件となる。
マナスは2025年3月、履歴書のスクリーニングや株式分析といったタスクを自律的に実行するよう設計された「AIエージェント」を発表し、大きな話題を呼んだ。
同社は中国で設立されたが、2025年半ばに本社をシンガポールへと移転している。
マナスの事業内容とは?
中国のAIプロダクト・スタジオ「バタフライ・エフェクト(Butterfly Effect)」によって2025年3月に設立されたマナスは、 開発チームによって世界初の「汎用AIエージェント」、つまり自律的にタスクを実行するよう設計されたシステムとしてアピールしている。
設立以来、同社はエージェントの機能を拡張し続け、ユーザーがマナスを使用してデザイン作業やスライド作成、Webブラウザを介した直接的なタスク完了を可能にする機能を展開してきた。
メタは先月29日(月)の買収発表で、マナスは市場調査、コーディング、データ分析といった複雑なタスクを自律的に実行できる能力を備えていると述べた。
Business Insiderは3月、初期段階のツールを検証し、その野心的な試みを評価しつつも、データのハルシネーション(幻覚)が発生するなど、実行精度にバラつきがあることを指摘していた。
マナスは先月初め、年間経常収益(ARR)が1億ドル(約150億円)を突破し、従量課金やその他の収入源を含めた売上高ランレートが1億2500万ドル(約187億5000万円)を超えたと発表した。
ブルームバーグ(Bloomberg)の報道によると、同社は4月にベンチマーク(Benchmark)が主導する資金調達で7500万ドル(約112億5000万円)を確保し、評価額は約5億ドル(約750億円)に達したという。マナスは今月の発表で、現在、シンガポール、東京、サンフランシスコに約105人の従業員を抱えており、間もなくパリにもオフィスを開設する予定であることを明らかにした。
創業者たちの人物像
マナスはバタフライ・エフェクトの CEO でもある中国の起業家兼ソフトウェアエンジニアのシャオ・ホン(Xiao Hong)氏によって設立された。
中国のテック界で「レッド(Red)」の通称で知られるシャオ氏は1992年生まれで、中国中部の華中科技大学でソフトウェア工学を学んだ。
卒業後の2015年、シャオ氏はナイチンゲール・テクノロジー(Nightingale Technology)を設立し、中国で数百万人のユーザーを獲得したWeChat向けの「Yi Ban(イー・バン)アシスタント」を始めとする、企業向け生産性向上ツールを開発した。
2022年にはバタフライ・エフェクトを立ち上げ、複数の大規模言語モデル(LLM)を集約したAI搭載ブラウザ拡張機能「モニカ(Monica)」をリリース。今回の買収後、シャオ氏はメタのバイスプレジデントに就任する予定だ。
シャオ氏と共にマナス社を支えるのは、共同創業者のジー・イーチャオ(Ji Yichao)氏(通称「ピーク・ジー(Peak Ji)」)だ。彼はバタフライ・エフェクトのチーフサイエンティストを務めていた。ジー氏はマナスの技術及びインフラ開発を統括している。
現在32歳のジー氏は、2025年3月のデビュー動画でAIエージェントを紹介するなど、マナスの“顔”としての役割を果たしてきた。彼は長年にわたり消費者向けテクノロジー製品の開発に携わっており、2025年の「MITテクノロジーレビュー:35歳未満のイノベーター」のひとりに選出された。
創設チームには、マナスで製品責任者を務めるチャン・タオ(Zhang Tao)氏も名を連ねている。彼のLinkedInプロフィールによると、チャン氏は2022年から2023年までバイトダンス(ByteDance)でグローバル製品責任者を務め、テンセント(Tencent)ではプロダクトマネージャーを務めるなど、数々の要職を歴任してきた。
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メタはなぜマナスを買収したのか?
