A keyboard with a wallet on top. The wallet has cash peeking out.企業はAIに巨額の投資を行っているが…。imageBROKER/Turgay Koca/Getty Images企業はAIに巨額の投資を行っているが、調査によれば、その多くが測定可能な投資対効果(ROI)を得るには至っていない。こうしたコストを相殺するために、企業は人員削減の実施、あるいはボーナスや株式報酬といった項目を削減することがある。一方で労働者は、自身の価値やAIスキルを強調することで、昇給を求める余地がある。

AI(人工知能)は、雇用だけでなく、それ以上のものを危険にさらしている可能性がある。

企業はAI技術や最高レベルのAI人材に多額の投資を行っている。そのコストを相殺するための選択肢はレイオフだけではない。アメリカのビジネスリーダーを対象としたある調査によると、従業員の報酬削減を計画している経営者もいることがわかった。

「AIの費用は何らかの形で賄わなければならない。それは決して安いものではない」と、バーモント大学グロスマン・スクール・オブ・ビジネスの経営学教授であるロッキ=リー・デウィット(Rocki-Lee DeWitt)は述べている。

AIはすでに仕事を奪い始めており、特に2つの職業は非常に危うい | Business Insider Japan

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調査会社IDCが行った世界的規模の分析によると、従業員1000人以上の企業は今年、AI向けのハードウェア、クラウドインフラ、ソフトウェア、サービスに平均1370万ドル(約22億円)を支出する見込みであり、これは2025年から78%の増加となる。

エヌビディア(Nvidia)のジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOは、ポッドキャスト番組「All-In Podcast」で、同社のトップエンジニアがAIトークンへの支出をあまりに抑えているとすれば、「深刻な懸念を抱く」と述べた。

一方、同番組の別の回では、ベンチャーキャピタリストのチャマス・パリハピティヤ(Chamath Palihapitiya)が、自身のスタートアップにおけるAI関連コストの急激な膨張に懸念を示していた。

しかし、こうした多額の支出にもかかわらず、2025年上半期には組織の95%がAIから測定可能な投資対効果(ROI)を得られていないと報告している。これは、企業が公開しているAI導入事例の分析や経営幹部へのインタビューに基づき、マサチューセッツ工科大学(MIT)が行った研究によるものだ。

企業がAI投資から具体的な利益が得られるまでは、他の支出を抑制する必要があると考えられる。特に関税や高インフレなどの要因が予算を圧迫している現状では、その傾向はより強まる可能性がある。

コスト削減の選択肢

ここ数カ月、ブロック(Block)やAtlassianなど、AIに関連したレイオフを発表する企業が相次いでいる。他の企業もこれに追随する可能性があると、Business Insiderが以前報じている。HP(ヒューレット・パッカード)は2025年11月の決算報告で、2028年末までに4000〜6000人の人員削減を実施し、約10億ドル(約1600億円)のコストを削減する計画であること明らかにした。

そして次に削減されるのは、従業員の報酬かもしれない。

キャリア形成と就職活動の総合支援サイト「ResumeBuilder.com」が3月初めに、経営幹部及び上級管理職866人を対象に実施した調査によると、回答者の58%が、AI投資の資金を確保するために年内に従業員報酬を削減する計画があると答えた。最も影響を受けるのはボーナスや株式報酬であり、これに昇給、福利厚生、基本給が続く。

こうした削減は士気を損なう可能性があるものの、雇用市場が厳しい状況にあるため「従業員には交渉力がない」と、カリフォルニア州サクラメントの職場コンサルティング企業Culture Partnersの最高戦略責任者、ジェシカ・クリーゲル(Jessica Kriegel)は指摘する。

「従業員は反発しにくい状況であり、現実的なリスクを避けるために、より小幅な昇給を受け入れるようになるだろう」

ResumeBuilderの調査では回答者が所属する企業の規模は明記されていないが、クリーゲルによれば、人員削減の代わりに給与や福利厚生を大幅に削減する可能性が最も高いのは中小企業だという。

「例えば、従業員が20人しかおらず、全員が多岐にわたる業務を兼務しているような組織では、単純に10%の人員を削減することはできない」とクリーゲルは述べている。

AIなどのコスト増に直面する企業にとって、もうひとつの選択肢は報酬を据え置くことだ。ビジネスリーダー向けにデータや知見を提供する非営利団体、全米産業審議会(The Conference Board)は、今年の平均賃上げ率は3.4%にとどまり、2025年と同水準になると予測している。