3月16日に40歳の誕生日を迎えた高橋大輔さん。その直後の3月19日から22日まで福岡で9公演行われた氷上エンタテインメント「滑走屋~第二巻~」が、40代初のパフォーマンスとなった。2024年から3回目の公演となる「滑走屋」は高橋大輔さんフルプロデュース、振り付けは前回に続き、東京パノラマシアターを主宰するダンサーであり、振付師の鈴木ゆまさんが担当している。ライターの田中亜紀子さんがレポートする。
「滑走屋~第二巻~」は、高橋さんに加え、村元哉中さん、青木祐奈選手、村上佳菜子さん、友野一希選手、樋口新葉さんといった日本代表をつとめてきたプロスケーターとベテランスケーター、オーディションを勝ち上がってきた若手スケーターが競演し、一つの物語をスケートで魅せる。
前編では、スタッフ構成をふりかえりつつ、高橋さんが見せた圧巻の演技についてお伝えした。後編では、みなが固唾をのんで見守っていた場面からお伝えする。
代わりに出てきたのは…
急な降板の樋口新葉さんのソロ場面は、誰が務めるのか? 皆が固唾をのんで見守る中、出てきたのは、なんと座長の高橋大輔さんではないか。そのパートの音楽に、高橋さんの名プログラム「マンボ」のステップをあわせ、麒麟を演じる高橋さんが氷の上を滑りぬけ、踊る踊る。思わぬ事態に、観衆は大興奮だ。
そのパートの途中で友野選手にタッチ交代。第1巻でも急な代打をつとめた友野選手。彼は滑走屋の直前に行われた、国際大会のクープドプランタンに出場後、帰国しての合流。動きのはげしい自分のパートを演じるだけでも大変だったであろうに、高橋さんと共に、「滑走屋は俺たちが守る!」という覚悟が感じられた場面だった。
引退から10年近い村上佳菜子さんの名演技
今回、個人的にとても印象深かったのが村上佳菜子さんである。引退から10年近く過ぎ、タレント活動と並行しているにも関わらず、きっちり絞って作り上げた身体で、背筋をピンと伸ばした凛とした滑りと所作が本当に美しかった。現役選手だった頃から健康的で明るいキャラクターで、これまでずっとはつらつとした滑りをみせていた村上さん。滑走屋第一巻の「狂気の椅子」プログラムでは、狂気や高笑いを見せるなどその萌芽はあったが、今回は従来のキャラから、がらりと印象が変わったといっていい。
自身が「族長」の役をつとめる一族について「朱雀は正義と規律を重んじる」と事前に動画で語っていたが、その族長として厳しく、美しく、時に狂気をはらんだ大人の女性の滑りを見せてくれた。表情までも常に隙がなく、氷の上でその役になりきっていたように感じる。ゲネプロ終了後の会見で「私たちは仕上がっています!」と力強く語っていたが、公演終了の数日後に、あがったインスタグラムでも「滑走屋-第二巻-完走」として、「私の中で今回も滑走屋は、人生においてもっとも特別な経験に刻まれました」と気持ちをつづり、公演本番だけでなく、その稽古からの期間がとても特別だったことを語っている。長いキャリアを持つ彼女にさえ、滑走屋は新たな自分の発見や様々なギフトを与えたようだ。

そして、その村上さんの部下は、カッコよくなければ許されないという厳しい戒律があるのかわからないが、みなスタイリッシュでカッコよかった。中でも朱雀の長のサブ的役割を果たしていた山本草太選手は、殻を破ったような、ふりきった演技が心に残る。初回の滑走屋に出演した時も、爆発的なものを発露した演技が印象的だった。今回は、朱雀の一員としてのグループナンバーが特に大胆で繊細でもあり、男性的で味があった。
競技では正統派プログラムを演じる山本選手が、滑走屋では様々なものをかなぐり捨てるような演技が、とても魅力的だ。

